『パンダより恋が苦手な私たち』©日本テレビ

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 3月7日に放送された『パンダより恋が苦手な私たち』(日本テレビ系)は、最終話直前の第9話。前回のラストで、自分が乳がんだったことを一葉(上白石萌歌)に告白したアリア(シシド・カフカ)。それがきっかけで表舞台から退いた彼女だが、一葉が必死で仕事に向き合っている姿を見て、そして一葉の書くコラムに背中を押され、あらためてモデルとして生きていく決意を固める。一葉が椎堂(生田斗真)から教えられた動物の求愛行動を参考に、アリアの名義でアリアの口調を真似て綴った言葉が、アリア自身を突き動かす。これはなかなか興味深い循環である。

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 その背中を押したコラムとは、やはり前回のエピソードで描かれたヒトコブラクダの求愛行動の話である。要約すれば、「傷付くことを恐れずに自分の弱点をさらけ出し、本当の気持ちをぶつけなければ何も変わらない」と。これはここまでのエピソードで取り上げられてきた様々な読者の恋愛相談すべてを包括する、このドラマの根本のテーマでありアンサーのようなものといえるだろう。現にアリア以外の登場人物も、和菓子職人の彼氏と結婚することを決めた紺野(宮澤エマ)だったり、料理人になることを決めた真樹(三浦獠太)だったり、何かを変える決断に踏み出している。

 対照的に肝心の主人公たちは、そのヒトコブラクダの命がけの覚悟を具体的なビジュアルイメージをもって目の当たりにしながらも、まだ踏み出せないまま。一葉は椎堂に対して本当の気持ちをぶつけられないでいるし、椎堂も自身の弱点なのか、まだ明らかにされていない過去から目を背けて逃げつづけているままだ。それでも着実に、椎堂は“一葉という存在”を通して変わりはじめていることは明白であり、あとは劇的な一押しがあれば、というところまではきているはずだ。

 さて、今回のエピソードで扱う読者からの恋愛相談は、「仲の良かった男友達を好きになってしまった」という女性からの「友だちのような関係のままで恋人になりたい」というもの。そこで一葉たちが最初に目を向けるのは、「男女の友情は成立するのか?」というテーマである。とはいえそれは男女間の“永遠のテーマ”といわれているように、明確な答えなどは存在しない。当事者の価値観や性格、それまでの関係性などに左右され、成立する人もいれば成立しない人もいて然るべきものである。

 いわば一葉のように「私は成立すると思う」と、自身の立場を表明するだけにとどめるのが妥当なところであり、案の定、一葉は椎堂にその相談内容を持ち掛ける際に、より解像度を上げて、別の着目点から助言を求める。「友達と恋人ってまったく違うもの。つまり、本気で恋愛することから逃げています」と。そこで椎堂が例示するのは、二つの声を使い分け「誰にも見せない本気の自分を見せている」コアラの求愛行動だ。これもやはり、ふだん見せないでいたものを“さらけ出す”という点において、先述のヒトコブラクダの例と通じるものがある。

 まだ“本気の自分”をさらけ出すことができないでくすぶっている椎堂。ある意味これが、“劇的な一押し”といえるかもしれない。つねに理論武装で構えている彼は、一葉から言われる「人間から逃げてる」という言葉で珍しく感情をあらわにする。怒りほど嘘のつけない感情はないのだから。それを含めた終盤の展開から察するに、最終話では椎堂の過去の真相とアリアのモデル業への復帰、一葉の仕事に対する向き合い方へのアンサーと、そしてもちろん一葉と椎堂の恋の成就が待っているに違いない。

(文=久保田和馬)