逮捕「アンドリュー元王子」は今後どうなる…「王位継承順位から除外せよ」の声に即応できない複雑な事情
現時点で起訴はなし、捜査は長期化か
英国時間19日朝、英ノーフォーク州の国王領地・サンドリンガム領に複数の警察車両が到着した。「アンドリュー元王子、66歳の誕生日に逮捕」の報が世界を駆け巡ったのは、それからまもなくのこと。約11時間後に釈放された際の姿は、活動家によって仏パリのルーブル美術館で”ゲリラ展示”されるなど、世界中でさらしものにされてしまった。
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バッキンガム宮殿は現地時間9日、チャールズ国王が「深い懸念を表明している」と明らかにし、「警察の要請があれば当然ながら(宮殿は警察を)支援」すると述べた。今となってはこの声明が梯子を外したようにも思えるが、複数メディアは消息筋の情報として、チャールズ国王はアンドリュー氏の逮捕を知らなかったと報じている。

アンドリュー氏の逮捕から数時間後、チャールズ国王は自身の署名で声明を発表した。今後行われる捜査に対し「心からの全面的な支持と協力」を宣言し、「明言しておきます。法は然るべき手順を踏まねばなりません」とも述べるという強い内容だ。
捜査当局はアンドリュー氏が今月初めに引き払った旧居「ロイヤル・ロッジ」を中心に、数日間の家宅捜索を行った。現時点でアンドリュー氏は起訴されておらず、捜査は長期化するとみられている。
「過失」か「故意」かが分かれ道
23日には、前駐米大使のピーター・マンデルソン氏も逮捕された。ともに容疑は「公務上の不正行為」、具体的には機密漏洩である。つまり現時点では、エプスタイン文書をきっかけとして、英国の捜査当局が情報漏洩に関する捜査を開始した状況だ。
アンドリュー氏の機密漏洩疑惑は、貿易大使(貿易・投資担当の英国特別代表)を務めていた10年の間に、香港やシンガポール訪問などの公式報告書やアフガニスタンの投資レポートなどをジェフリー・エプスタイン元被告に流していたことだ。「デイリー新潮」が本件を伝えた13日以降には、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)の機密情報の漏洩、王室の上級補佐官による公式外交電報の漏洩なども追加された。
北京での秘密の夕食会や中国美女との“交流”写真なども飛び出しているが、アンドリュー氏の逮捕容疑は下半身の話ではない。ただし、芋づる式に詳細が解明される展開もありえるという見方もある。
逮捕後、英国の専門家たちが指摘しているのは、「公職における不正行為」を立件することの難しさだ。アンドリュー氏を巡る機密漏洩では、過失ではなく故意であることを立証せねばならない。となれば、エプスタイン元被告からの“報酬”と目される“性的な事柄”についても、詳細の掘り起こしが必要となるのではという推測もあるが、捜査は始まったばかりである。
実は「剥奪」されていない貴族称号
英国では何年も前からアンドリュー氏の評判は地に落ち、ロイヤルファミリーの人気投票でもメーガン妃との最下位争いは恒例だった。今回の逮捕も「ついに」「とうとう」「やっと」の文脈で語られているが、これで一件落着というわけではない。現在の英国では「王位継承順位から除外せよ」という声が高まっている。
アンドリュー氏は2019年に公務から完全撤退した後、次々と身ぐるみはがされ、現在は「元王子」の「アンドリュー・マウントバッテン=ウィンザー氏」である。この過程からすると、王位継承権順位からも即除外できるのではと思えるが、実際はそう簡単な話ではないようだ。
軍の名誉職や王室後援団体のパトロン職、そのほかの名誉称号は、本人の使用停止宣言による「返上」でカタが付いた。王室称号の「HRH(His Royal Highness=殿下に相当)」は、故エリザベス女王の命による「使用停止」から、チャールズ国王による昨秋の「剥奪」にグレードアップしている。チャールズ国王は同時に「王子」の称号も「剥奪」した。
残るは3つの貴族称号だが、チャールズ国王が昨秋に講じた処置は、3つのうち最上位の「ヨーク公爵」を「貴族名簿から即時抹消」することだった。つまり、貴族称号は失っていないが、公式文書に掲載される”まっとうな貴族称号”としては機能しない状態にしたわけだ。
「立法化」に伴う時間と手間
この対応はアンドリュー氏の立場を守るという意図ではない。貴族称号の正式な「剥奪」には立法化が必要となるため、王室の厄介ごとで議会を浪費しないという配慮だった。しかし、王位継承順位とそれに付随する国務参事官(カウンセラー・オブ・ステート)リストからの除外は立法化が必須となる。
君主の外遊時や急病時に公務を代行する国務参事官は、君主の配偶者および王位継承順位で上位3名の成人がリストに入る。法律上はカミラ王妃とウィリアム皇太子(1位)、ヘンリー王子(5位)、アンドリュー氏(8位)、アンドリュー氏の長女・ベアトリス王女(9位)だ。
とはいえ、5位から9位の3名は「フルタイムで公務を行う現役ロイヤルファミリー」という条件に合わないため、法律上の“名ばかり国務参事官”である。そこで2022年、チャールズ国王の妹・アン王女と実弟・エドワード王子がリストに追加された。その際に立法化が行われている以上、除外も同様でなければならない。
王位継承順位からの除外にも別の法律が必要となるが、チャールズ国王が国家元首である英連邦王国14カ国の同意が必要という面倒な条件も設定されている。オーストラリアとニュージーランドは早々に「除外支持」を表明したが、英国の決定と提案を待たない“フライング支持”だ。英国民の声も無視できない英国は早期決断に踏み切るのか、成り行きが注目されている。
デイリー新潮編集部
