また、歯周病で歯茎が下がると歯が長く見え、一気に老けた印象を与えます。「口が臭く、見た目が老けている」これはビジネスにおいて、どれほど優秀なスキルを持っていても致命的なマイナスになりかねません。「口の中の問題」と軽く考えていたものが、全身の健康だけでなく、社会的信用までじわじわ蝕んでいく--それが歯周病の本当の怖さです。

◆なぜ本人は気づかないのか?

歯周病がここまで厄介なのは、進行してもほとんど痛みがないからです。出血も「よくあること」と思われがちで危機感につながりにくく、口臭もマウスウォッシュやガムでマスキングをして誤魔化してしまうことが多いです。

特に30〜40代の働き盛り世代は、「忙しい」「今は困っていない」と歯科受診を後回しにしがちです。「痛くなったら行く」というスタンスが、歯周病にとっては最も危険なのです。

◆30秒でできる!隠れ歯周病チェック

以下の項目に1つでも当てはまったら、あなたの口の中ではすでに静かに歯周病が進んでいるかもしれません。

・デンタルフロスを通すと変な臭いがする
・朝起きた時に口の中がネバネバする
・歯磨きの時に、歯ブラシや吐き出した水に血が混じっている
・歯茎がムズムズする時がある
・歯が浮いているような違和感を感じる
・家族に口臭を指摘された
・歯が伸びた気がする
・歯茎の色が健康的なピンク色ではない(赤い、紫がかっているなど)

歯周病になる人・ならない人の決定的な差

歯周病を防ぐために、特別なことをする必要はありません。高価なケア用品を使っているかどうかでもありません。

差が出るのは、

・定期的に歯科医院でチェックを受けているか
・自分の口の状態やリスクを把握しているか

この2点です。

どんなに丁寧に磨いていても、歯周ポケットなど歯ブラシや歯間清掃の届きにくい部分の汚れは残り、そこで菌が繁殖して歯周病が進行します。また、一度付いてしまった歯石は歯ブラシでは除去できません。定期的な専門的なケアを加えて行うのが大切です。

歯周病の一番の敵は、実は菌ではなく「無関心」です。自分の口の中の歯や歯茎の状態はどうなっていて、どんなリスクがあるか説明できるでしょうか。

今日、歯が痛くなくても、数年後の口元は、今日の選択で確実に変わります。

歯医者が本当に危惧しているのは、むし歯ではありません。「何も問題がないと思っていた時間」によって、静かに将来の歯が奪われていくことなのです。

<文/野尻真里>

【野尻真里】
一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari