「部屋で2人きりになったら“ダメだよ”」では子どもの体を守れない。性教育で伝え続けたい“本当に大切な言葉”は
山田:だからこそ、小さい頃から「あなたが嫌なときは嫌だって言っていいし、言えなかったとしても、あなたは悪くない」と伝え続ける。子どもたちに「何かあったら言ってね。あなたがもし間違ってしまっても、被害に遭ったとしても、守ってくれる大人はいるからね。大丈夫だよ」って伝えておかないと、何かあったときに相談はしてくれないかもしれません。
私が包括的性教育を日々みなさんにお話しているのは、大切な人をちゃんと守ってほしいという気持ちがあるからなんです。
山田:私自身も包括的性教育を学ぶと、過去を振り返って悲しくなることがあるんです。「あのとき大人に助けてほしかったけど、真っ先に思ったのは『私が悪かった』だったなぁ」とか。「お母さんにこれを言いたいけど、怒られると思った」とか。たった一言「助けて」って言えたら、こんなに生きづらくなかったなっていうことが山ほどあって。
だからこそ、子どもたちには「嫌だった」とか「助けてほしい」を言っていいし、「できない」みたいな弱音も吐いていいんだよと伝えたいです。そんなメッセージを伝えるのも包括的性教育の一つ。だから、包括的性教育って性行為教育ではなく、日常のコミュニケーションの話でもあるんですよね。
◆理想を語られると、できていない自分が苦しくなる
――性教育は性の話だけでないと知った一方で、人権やコミュニケーションについても教えなければいけない、難しさも感じます。
山田:そうですよね。子どもが相談しやすい関係でいようとか、子どもの話を日頃から丁寧に聞こうとか、私自身も講演会でたくさんのことを伝えています。でも、一方で、そう言われると、できていない自分が晒された気がして悲しくなる方もたくさんいらっしゃるのではないかとも感じるんです。というのも、私自身、育児に悩んでいた時に、こういう理想の話を聞くのがすごくつらいと思うことがたくさんあって。
――「私、全然できていない」と落ち込む気持ちはわかります。
山田:包括的性教育って、その子自身をすごく大事にするものなんですけど、結局は大人である自分が自分自身を大事に思えていなかったら、子どもに心からの言葉で「あなたは大事だよ」なんて言えないですよね。言っていて苦しくなってくるのではないでしょうか。
「あなたの体はあなただけの大事な宝物よ」とか言いながら、自分がすごく不健康な生活をしている。寝る暇もないくらい毎日頑張って、必死で子どもや家族を守っている。そんな状況で、「あなたの体は、あなただけの大切なものよ」なんて言っても……どこか現実とかみ合わないと感じてしまう人もいるでしょう。
――たしかにそうですね。
山田:毎日必死に生活して、できないことも当然たくさんあります。親世代の方を見ていると、みなさん本当に頑張っていて、とにかく疲れていると思うんです。だから包括的性教育をしようと思っても、そんな余裕がない場合は、まずはセルフケアを優先でいきましょう!
できていないことがあっても完璧じゃなくてももちろん大丈夫です。焦らなくてもOK。まずは自分の心と体を大切にしてあげてください。自分の心と体が整ってから、マイペースに性教育を始めてみてくださいね。
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禁止教育だけでは、本当の意味で子どもを守ることはできない。子どもが自分の体を守るために必要なのは、「あなたは悪くない」「嫌と言っていい」というメッセージを伝え続けること。そして、そのためには、まず親自身が自分を大切にすること。山田さんの言葉からは、性教育とは結局のところ「自分も相手も大切にする」という、人として生きていく上で最も基本的なことを学ぶものなのだと改めて実感しました。
<取材・文/大夏えい>
【大夏えい】
ライター、編集者。大手教育会社に入社後、子ども向け教材・雑誌の編集に携わる。独立後は子ども向け雑誌から大人向けコンテンツまで、幅広く制作。

