首都圏を中心に展開するイオングループのミニスーパー「まいばすけっと」が好調だ。店舗数は1200を超え、直近の売上高は2903億円と過去最高を記録している。注目すべきは、一日あたりの1店舗あたり売り上げが、大手コンビニに勝っていることだ。いったいどんな戦略をとっているのか。経営コンサルタントの岩崎剛幸さんがリポートする――。
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まいばすけっと外観 - 筆者撮影

■売り上げも店舗数も拡大する「まいばす」の正体

イオングループの小型スーパー「まいばすけっと」、通称「まいばす」が好調です。

今や売り上げは2900億円(2025年2月度)を超え、前期比112.6%と2桁成長しています。この5年で1000億円売り上げを増やしています。伸び率では145%。

店舗数は21年2月度に921店舗だったのが25年8月末には1264店舗と5年で137%です。店舗数は確かに増えていますが、それ以上に売り上げを伸ばしている「まいばす」という存在にとても興味を持ちました。

と言うのも、まいばすほど「特徴のないチェーン店はないのではないか!」と筆者は思っているからです。普通の店、個性のない店、どことなくダサい感じもあるまいばす。しかし業績は好調という企業。なにかと個性が大事と言われるこの時代。没個性でも成長するその理由とは何か。同社のポイントを現場で探ってみました。

私がまいばすに興味を持ったのは、実は業績ではなく、あるデザイナーの友人がSNSに投稿した一文でした。

「俺の家のそばにまいばすけっとがあるのだが、あのロゴのフォントがどうしても嫌だ。なぜあんなフォントにしているのか…」(友人のSNSより一部抜粋)

■ダサいロゴにはワケがある

友人は自動車のデザインなども手掛けるような人物で、デザインにはある程度の知見があります。その彼が「まいばすのロゴが気になる」と言う。特に港区あたりで見かけると違和感を覚えるとも言います。そう言われてみると、まいばすのロゴはなんとなく昔の感じと言うか、幼いイメージのするロゴです。

彼曰く、「これは創英角ポップ体というロゴで、このロゴを使うと大衆の匂いがする」ようになるのだそうです。確かに、創英角ポップ体にするとまいばすけっとと同じ文字フォントになります。

しかし、実はこのフォントが、まいばすの最大の狙いであることをさまざまな分析を通じて確信することとなりました。まいばすはあえてこのフォントを店舗サインロゴに使用することで、徹底した大衆向けミニスーパーとして、スーパーマーケットともコンビニとも差別化しようとしているのです。

それをいくつかの数値面、売り場づくり面、商品政策面から検証してみます。

■好調イオングループの中でも出色の出来

イオングループの25年2月期決算は過去最高の営業収益で10兆円を超えた一方、営業利益は前期比94.8%となり、増収減益でした。

これを事業別に見ると、営業収益の三大柱はGMS(総合量販店)事業とSM(スーパーマーケット)事業、それにヘルス&ウエルネス(ドラッグストア)事業であることが分かります。

中でもSM事業は2桁の伸びを示し、3兆円を超えました。営業利益は落としたものの、それでも320億円以上を稼ぎ、イオングループの稼ぎ頭となっています。

このSM事業の中に、同社のスーパー事業であるU.S.M.H、マックスバリュ東海などの地方スーパーと共に、まいばすが含まれています。

まいばすの業績は好調です。売り上げは右肩上がりで、今や2903億円。全国のスーパーマーケットランキングでもトップ15を狙おうかというあたりまで伸びてきています。

イオンのSM事業全体では増収減益でしたが、まいばすはその中で81億円と増収増益と伸び続け、イオングループのSM事業の4分の1の利益を稼ぐまでになっています。イオンとしても欠かせない事業の一つにまで成長しています。

■ローソンやファミマより高い日販

まいばすは特徴がないということを書きましたが、分析していくと、まいばすならではの意外性があることが分かってきました。まいばすの成長を裏付けている要素を見ていきます。

意外性?:日販がローソンやファミマより高い‼

まいばすの成長で見逃せないのが、1店舗あたりの売上高です。

21年2月期には1店舗あたり2.17億円だった売り上げが、25年2月期には2.41億円と増加しているのです。1店舗2億円以上売るのは食品関係の同規模の店舗としては繁盛店に位置付けられます。まいばすはよく売る店なのです。

1店舗あたり平均売り場面積が約50坪。食品スーパーと比べたら小さいですが、コンビニと比べると大きいという、ある面では、中途半端な売り場面積とも言えます。しかし年間坪効率を計算すると、482万1000円になります。意外と高い坪効率。面積を上手に使って商売していることが分かります。

これを日販(一日あたりの1店舗あたり売り上げ)で見ると66万円となります。実は日販ではローソンやファミマを抜き、コンビニNo.1のセブン‐イレブンの日販に迫る勢いなのがまいばすなのです。

これには驚きました。グループ会社のコンビニ、ミニストップよりも20万円も高い日販です。まいばすは、商品構成や売り方を工夫して、高い効率をあげる小売店であることが分かります。

■板橋区だけで51店舗も

意外性?:首都圏でのドミナント展開による高い生産性

この売り上げの高さを実現させているのが出店立地です。地方の方は、まいばすをご存じないかと思います。と言うのは、東京、神奈川に出店を集中させているからです。現在の物件募集を見ても東京、神奈川、千葉、埼玉に限定しています。

大都市圏で人が集まる市区に店を出し、しかも同一地域でのドミナント展開を志向する。「バス停のように700〜800メートル離れていれば十分に成り立つ」(同社)と言うように、板橋区のような人口密集地では51店舗を集中出店しています。

人のいるところに店を出し、さらにドミナント展開することで、商品配送も効率的になり店の品揃えを充実させることが可能となるのです。

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イオンのカンバンはデザイン性が高い - 筆者撮影

意外性?:コンビニの品揃えにスーパーの働き方

同社の品揃えアイテム数はおよそ3300アイテム。コンビニの品揃えと同等です。ただ、店に入るとどの店も入り口には生鮮食品が並び、肉や魚、野菜から冷凍食品、総菜、弁当に至るまで、スーパーのような幅広い品揃えです。

コンビニよりも品揃えの幅は広く、スーパーほど広くはないというまさに間をとったような品揃え。可もなく不可もない売り場です。店舗の地型が違うのでまったく同じレイアウトではありませんが、基本的な陣形は同じ。什器も陳列方法も統一しています。

しかし特売コーナーはなく、買い物意欲を掻き立てるようなVMD(視覚的な販売戦略)もありません。普通の品揃えです。この普通の売り場づくりこそが、まいばすの特徴のなさを表しています。

■スタッフは複数店舗で働ける

幅広い品揃えですが、店頭は基本的に2〜3人でまわしています。有人レジを1台おき、他はセルフレジにしていますので、1人以外は基本的に売り場で商品補充にまわります。

最近のコンビニのように店内厨房での調理や公共料金の支払いなど、煩雑な作業はありません。品出しと売り場の整理整頓に集中すればいいので、スタッフのやることがシンプルでわかりやすい。だから働きやすい職場にもなっていて、人も集まりやすいのです。

まいばすのスタッフが利用するアプリでは、家や学校など自分がいる場所の近くの店のシフトを確認し、空きがあればそこで働けるという独自の仕組みを作っています。

そもそも少ない人数でまわせる店舗運営で、かつ、応援に入りやすい体制を整えています。それができるのも、全店の品揃えを本部が決め、統一し、各店で手間のかかるような作業を極力発生させないという仕組みにしているからです。これからの人口減少時代に必要な店舗のあり方を示しているとも言えます。

■セブンのおにぎりと食べ比べ

意外性?:圧倒的に安い

まいばすの独自性が一つあるとすれば、それは「価格の安さ」です。多くのNB商品が周辺のコンビニと比較すると1〜2割は安い価格設定です。

ちなみに私がよく立ち寄る都内のまいばすはセブン‐イレブンがはす向かいにあるという立地なのですが、その両店でこれだけの価格差があります。

毎日会社に行く前にペットボトルのお茶を買うなら、まいばすの方が確実に安いですから、まいばすに立ち寄る人が増えるのは当然です。

物価高の今、朝もランチもまいばすにお世話になっているサラリーマンが増えているのはこの価格差にありました。

私はまいばすで評判のいい総菜とお弁当を食してみました。

セブンのツナマヨおにぎりとまいばすのそれを比べてみました。価格差は39円になりますが、見た目の大きさはほぼ同じ。セブンのほうががっちり包装されていて、まいばすは緩めの包装。

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二つのおにぎり - 筆者撮影

食べてみるとセブンのおにぎりはさすがに白米の炊き方も上手ですし、海苔もパリッとしていて、具材のツナとマヨネーズもいい感じで合わさっています。おいしいおにぎりです。

まいばすの具材は味が薄めでしたが、こちらの白米も美味しいし、海苔はやわらかめでしたが、それでもおいしくいただけました。おいしさだけでしたらセブンのおにぎりですが、39円差を考えるとまいばすのおにぎりでいいかもと感じました。

■サラダ、カレーの味は

女性の間では「まいばすのお惣菜がおいしい」との評判があるのでサラダとカレーも食べました。両方とも満足できる味わいです。

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蓮根とひじきのおかかサラダ 214円(左)、特製牛すじカレー 494円(右)いずれも税込み - 筆者撮影

サラダは200円前後にしては味がしっかりしているし、カレーもきちんと煮込まれていて満足度が高い一品でした。劇的に安くて超絶おいしいというわけではありませんが、これだけのコスパがあれば、ランチでリピートするのは分かります。まいばすは安くていい商品を品揃えしているのです。

最近はまとめ買いを促進する「○点で○円」という売り方で販売点数を伸ばす取り組みもしています。まいばすは低価格を売りにして地域の価格リーダーになっているのです。

■コンビニ店主「まいばすが横に来るのイヤ」

上記のような、まいばすのコスパを生み出しているのが、同社のローコストオペレーション経営です。

同社はドミナント展開をし、集中出店することで、広告費や物流費を抑え、オペレーションを単純化して店頭にかかる人員を少数にして人件費も抑えています。

居抜き物件を活用したり、都心でもちょっとはずれた立地を選ぶなどして家賃も抑えています。結果的に同社の販管費率は23.7%と、食品スーパーの勝ち組であるベルクやヤオコーよりも低い販管費率を実現しています。

低価格にしている分、粗利は低くなりますが、それでも経常利益率2.8%と標準的なスーパー以上の利益率をたたきだしています。まさに、ローコストオペレーションによってまいばすは異色の成長を遂げる企業になっていると言えるのです。

現在のところまいばすは「コンビニに対して競合優位性」を持っていますので、ある意味、最強の業態です。セブン‐イレブンのオーナーが「まいばすが隣に来るのが一番いやだ」と言うのが分かります。

コンビニを低価格にした業態が隣に来たら売り上げに影響するのは必至だからです。その点で、コンビニの隣接地に出店することを続けられれば、まいばすの成長は続くでしょう。

■九州からやってくる最大のライバル

しかし、居抜き物件を中心に出店することが多いと、そのような好物件が出てくるのには時間がかかります。戦略的に出店できず、出店スピードが落ちるという課題もでてきます。

この5年間を見ても年間50〜80店舗ほどの出店で、年間100店舗以上の出店はありません。「26年2月期に150店以上を出店し、27年以降は年200店以上を出店する」(同社)としていますが、それができるかどうかが一つのポイントです。

また、商品ではトップバリュ商品の比率を高めた実験店舗を出店するなど、新しい商品構成にもチャレンジしています。特売や目玉商品がないまいばすが客の支持を得続けるためには価格の安さだけでは限界があります。「一番商品」がないと継続来店が難しくなるからです。今後はまいばすならではの商品企画が必要となるでしょう。

そして、今後は競合も増えてくることが予想されます。九州のディスカウントストア「トライアルホールディングス」が25年10月から東京都内で小型スーパー「トライアルGO」の出店を始めると発表しています。完全子会社化した西友の店舗の周辺に出店し、西友で作った総菜を陳列し、新業態として拡大させていきます。まさにまいばすのような業態が新たに参入してきます。

食品を強化しているドラッグストアも都心出店を強化していますので、今後の競合状況はより激しくなります。その中で特徴をださないようにしているまいばすがどれだけ戦えるのかが気になるところです。

世の中では物価高、水道光熱費も上がり、家計を圧迫しています。

このような世の中になると、日々の生活費を抑えようという節約意識がさらに強まります。世の中のタイパ意識、コスパ意識はより強く働くでしょう。まいばすの一番の特徴である「特徴のなさ」をどのように維持していけるか、注目してみたいと思います。

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岩崎 剛幸(いわさき・たけゆき)
経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、ムガマエ株式会社を創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングを得意とする。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。
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(経営コンサルタント 岩崎 剛幸)