長時間労働をする人では脳の神経構造が変化してしまう可能性がある

近年は幅広い職種で仕事と私生活のバランスを取るワークライフバランスが重視されるようになっていますが、依然として長時間労働をせざるを得ない環境や時期は存在します。韓国の研究チームが行った新たな研究では、「長時間労働をする人の脳は神経構造が変化する可能性がある」という結果が示されました。
Overwork and changes in brain structure: a pilot study | Occupational & Environmental Medicine

Too Much Work Could Be Literally Reshaping Your Brain : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/too-much-work-could-be-literally-reshaping-your-brain
韓国では先進国の中でもワークライフバランスが低い国であることが指摘されており、労働時間の長さが問題となっています。2023年には、すでに週52時間となっていた労働時間上限をさらに引き上げ、週6日労働の場合は上限を週69時間に引き上げる計画を政府が打ち出して批判を呼びました。
韓国の延世大学校や中央大学校、釜山大学校の研究チームは論文で、「過労が行動や心理に及ぼす影響についてはよく知られていますが、脳構造に及ぼす直接的な影響についてはほとんど知られていません。先行研究では、慢性的なストレスと不十分な回復が脳の形態を変化させる可能性が示唆されていますが、実証的な神経画像による証拠はまだ限られています」と述べています。
そこで研究チームは、主に医療従事者で構成された110人の被験者を対象に、脳スキャンと労働習慣の調査を行いました。被験者のうち32人は週に52時間以上の「過剰な労働時間」で働いており、残りの78人は標準的な労働時間で働いていました。

分析の結果、過剰な労働時間の被験者は標準的な労働時間の被験者と比較して、「タスクを計画・整理・実行する能力」「ワーキングメモリ」「感情の管理」に関する脳領域の灰白質がより多いことがわかりました。
具体的には、長時間労働をしていた被験者はそうでない被験者と比較して、認知機能に関与する中前頭回の容積が19%も多かったと報告されています。
一口に「灰白質が多い」と言っても、その影響はポジティブなものにもネガティブなものにもなり得ます。研究チームは論文中で確固たる結論を示しておらず、長時間労働による灰白質の増加がもたらす影響については、さらなる研究を行う必要があるとのこと。
しかし、複数の研究で過労と脳の損傷が関連付けられていることから、科学系メディアのScience Alertは今回の研究で明らかになった脳の神経構造の変化も、おそらく悪いニュースである可能性が高いだろうと指摘しています。

研究チームは論文で、「今回の研究結果は、長時間労働が神経適応的な変化を引き起こし、認知的・感情的健康に影響を及ぼす可能性があると示唆しています」「今後の研究では、このような脳の構造的変化が長期的にどのような意味を持つのか、またそれらが認知機能の低下や精神疾患につながるのかどうかを探る必要があります。今回の結果は、過剰労働を労働衛生上の懸念事項として扱うことの重要性を強調し、過剰労働を緩和する職場制作の必要性を強調するものです」と述べました。
