当て字やキャラクターなど、漢字本来の読み方や意味から外れた名前「キラキラネーム」。2025年5月に施行される改正戸籍法では、戸籍の氏名に読みがなの記載を義務づけ、「一般に認められる」読み方にすべきと定められている。これにより、キラキラネームに一定の制限が設けられる一方、親が名付けた名前を適切に説明できれば良いともされており、生きづらさを抱える人が増えるのではと、不安視する声もある。

【映像】「信じてもらえないので…」免許証を見せる“寺内はっぴぃ”さん

 寺内はっぴぃさん(27)は長年、自らの名前に苦しんでいた。小学校低学年の頃に「学級名簿で、ひとりだけひらがなで『はっぴぃ』と書いてあり、違和感を覚えた」といい、中学校ではイジメに発展した。短大の入学式でも「名前を呼ばれて一気に視線が向いて、絶望や諦め、『またあの日々が始まる』と感じた」そうだ。就職活動では、履歴書を送ってもイタズラだと思われ、面接に進んでも「ふざけている」と誤解されることもあった。

 9歳になる娘に「笑顔(にこ)」と名付けた笹子あけみさん(30代)は、「自分たちはキラキラネームだと思って付けていない」という。今は少し名前をからかわれる程度で、親子ともに深刻には考えていないが、将来を見据えて後悔もある。

 奇抜な名前を付ける親に対して、ネットでは「自己満で名前を付けないで」「親がヤバイ」「かぶらない名前をつけたかった?ただのエゴ」といった批判もある。年間4000人以上が改名している現代の日本で、親の思いをどこまで名前に込めるべきなのか。『ABEMA Prime』では、名付けられた寺内さん、名付けた笹子さんの双方と考えた。

■「キラキラネーム」で感じた生きづらさ

 寺内はっぴぃさんの名前は、母親が「出産後の幸せな気持ち」を表現して命名された。学生時代は入学式など常に注目を浴びウンザリするほか、「イジメられても“はっぴぃ”なんだろ?」「お前“はっぴぃ”なのに“ハッピー”そうじゃない」のように、名前をバカにされるなどのイジメも経験した。中学3年の頃には「高校でも同じ思いをしたくない」と、改名について考えたこともあったそうだ。

 小中学生時代には「“ハッピーバースデー”や“ハッピーバレンタイン”など、ハッピーが付くイベント全ていじられた」。とはいえ、母親には「名前の由来は聞いたことがあるが、とくに恨みはない」という。

 仕事にはプラスになっている部分もある。「営業先で『いい名前の子が来たから、うちにもいいことありそうだ』と、名刺を飾ってくれる会社もあった。社会に出て『やっと認められてきた』という実感がわいた」。

 しかしながら、名前が原因で結婚を断念した経験もある。「お付き合いしていた相手の実家に行くと、『そんな名前のヤツは、ちょっと……』となり、結婚を諦めることになった。キラキラネームが、まだ受け入れられていなかった世代の人にあいさつすると、そういう目で見られることがよくある」。

■なぜ奇抜な名前に? 名付け親の思い

 笹子あけみさんは、20代前半で結婚・出産した。子どもには「露葉(つゆは)」と名付ける予定だったが、それに反対した母が「笑顔(にこ)」と命名した。理由は「“にこにこ”していてほしい」からで、笹子さんも特別で被らないのが良いなと気に入った。しかし、子の将来を考えずに名前をつけたことに後悔し、進学や就活、結婚での印象に不安を抱いている。

 現時点では「自分的にはかわいい名前だと思うが、娘にも、友達にも『読めない』と言われるため、そこは気になっている」と話す。命名にあたっての候補は、「“つゆは”と“いろは”で悩んでいた。日本人っぽい古風な名前を付けたかったが、母が嫌がった。初孫だったため、家族みんなで決めればいいと考えた」と振り返る。

 寺内さんの体験談を聞いて、「今はまだ小さく、受験や就職活動もないが、もしかしたら娘も将来、困ることがあるかもしれない」と語った。

■「知らない間に名前のように生きてる自分もいる」

 これまで12万人以上の名付け相談を受けてきた命名研究家・牧野恭仁雄氏は、キラキラネームを付けようとする親について、「豊かな時代に育っている」ことを共通点として挙げる。「高度経済成長やバブル期に学生時代を過ごした世代が、結婚・出産を迎えたときに、はやりだした。経済的に豊かな時代では、『勉強をして、有名な学校へ行き、一流企業に入りなさい』と、画一的な価値観を教えられた。個性的な生き方ができなかった人々が、どうしても個性を表現したいということだ」。

 改名希望者については、「親も後悔を全くしていない人と、深刻に悩んでいる人がいる。ママ友から『呼べない』と嫌みのように言われたと悩み、ひどい場合には『外に出るのが嫌だ』『うちにこもっている』『食事ものどを通らない』と言う人もいる」と明かす。

 タレントのあおちゃんぺは、名前について、「周りの人の過度なプレッシャー、意見があるから悩んでしまう。だから、親が全開で気持ちを込めるのは良しとして、周りがそこに乗っかるのは無しにしたらいい」との考えを述べた。

 寺内さんは、自身の経験から「周りがいじることで、子供がその人生を歩まなければならない。今まで見えてなかったレールを、周りから敷かれてしまうという可能性を考えると、ある程度“縛りになる名前”は、考えた方がいいと思う」と語る。

 本名が“翼”であるタレント、モデルの益若つばさは「『キャプテン翼だからサッカー教えてよ』って小学校のとき言われてて、わざと見ないようにしてた。けど、大人になってから見たら、すごく楽しかった」と振り返る。

 そして、笹子さんの娘、“笑顔(にこ)”ちゃんに対して、「もしかしたら一時期笑わない子っていう、反抗期みたいなものはあるかもしれないけど、知らない間に名前のように生きてる自分もいるなって思うんじゃないか」との見方を示した。

(『ABEMA Prime』より)