アイドリングストップって何? メリットとデメリット エンジン寿命に影響はあるのか
アイドリングストップの仕組み
近年の新車ではほぼ当たり前の機能となった「アイドリングストップ」。燃費の改善と排出ガスの低減を目的としたもので、国産車、輸入車問わず多くのエンジン車で採用されている。しかし、長期的にはエンジンの耐久性に影響はないのだろうか?
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今回はアイドリングストップ機能について振り返りながら、そのメリットとデメリットを紹介したい。
アイドリングストップとは?

アイドリングストップ機能は、任意でオン・オフの切り替えができる。
アイドリングストップとは、エンジンのアイドリング(空回り)を不要な際に自動で停止させる機能のこと。停車時にエンジンを止め、ブレーキを離したりギアを入れたりして発進・加速するときに再始動させる。
ハイブリッド車では、低速で巡航しているときや坂道を下っているとき、また減速中にもエンジンを停止させることがある。
停止・始動の仕組みは?
仕組みとしては、停車時やギアをニュートラル(N)に入れたとき、またはエネルギーをほとんど必要としないときに、車載コンピューターが判断してエンジンへの燃料供給と点火を停止する。ハイブリッド車の場合は、エンジン停止中も電気モーターにより一定の距離と速度で走行可能だ。
車両が動き出したり、ギアをドライブ(D)に入れたりするとイグニッションがかかる。基本的にはすべて自動で行われるが、ドライバーの任意でオン・オフを切り替えることもできる。
従来のスターターモーターは、エンジンのフライホイールの外側に取り付けられた大きな「リング」ギアと小さなピニオンギアを噛み合わせることで機能している。最新のアイドリングストップ技術は、見た目こそほとんど変わらないものの、モーターはより強力になり、反応速度も向上している。大型バッテリーと高電圧システムを使用するのが一般的だ。
アイドリングストップのデメリットエンジンを摩耗させる?
耐久性と寿命の観点では、アイドリングストップ機能の作動回数が多いほどエンジンの消耗が激しくなる。あらかじめ対策はなされているはずだが、それでもエンジンの停止・始動の繰り返しによる影響はゼロにはならないだろう。
自動車部品メーカーのフェデラル・モーグル社でベアリング設計を担当するゲルハルト・アーノルド氏は、次のように語っている。

アイドリングストップ機能付きのエンジンには、高い耐久性が求められる。
「アイドリングストップ機能のない従来のクルマは、最大5万回のエンジン停止・始動を繰り返すと予想されています。しかし、アイドリングストップ搭載車の場合は飛躍的に増加し、50万回もの停止・始動を繰り返すことになります」
この差は大きく、エンジンのベアリングの耐久性に大きな課題をもたらしている。
エンジンの基本部品であり、最も重い部品の1つがクランクシャフトだ。クランクシャフトは、ジャーナルと呼ばれる複数の部品とメインベアリングにより支えられている。
エンジンが回転しているとき、クランクシャフトとメインベアリングの表面は薄いオイルの膜によって分離され、接触していない。オイルは回転するクランクシャフトの作用によってベアリング表面に送り込まれ、潤滑剤となる。これは「流体潤滑」と呼ばれるプロセルだが、エンジンが停止すると、クランクはベアリングの上に沈み込み、金属表面が接触する。
エンジンが始動し、2つの部品の表面がオイルによって分離する前に、「境界潤滑状態」と呼ばれるポイントがある。回転するクランクシャフトとベアリング表面の間に金属同士の接触がある状態だ。
これが摩耗の原因となる。つまり、アイドリングストップ搭載車では、廃車までに累計50万回の境界潤滑条件(金属同士の接触)が存在する可能性があるのだ。通常のベアリングでは、すぐに摩耗してしまう。
エンジンを摩耗から守る方法とは
こうした摩耗を防ぐ方法は大きく分けて2つある。まず、自己潤滑性の高いベアリング材を開発するという方法。フェデラル・モーグル社は、酸化鉄の粒子(錆)をポリマーでコーティングした「アイロックス(Irox)」という新素材を開発したが、その滑らかさは驚くべきものだ。アイロックスの摩擦係数は従来のアルミ製ベアリングよりも50%低く、エンジンの寿命を延ばすことができるのである。
2つ目は、潤滑油の改良である。近年のエンジンオイルには、化学物質からなる添加剤が含まれている。英国のミラーズ・オイル社の技術責任者であるマーティン・マン氏は、このケミカルの配合が非常に重要と述べている。

エンジンの停止・始動が多い都市部では負担も大きくなる。
ミラーズ・オイル社は2006年に低摩擦オイルの研究を開始した。「摩擦装置でテストしたところ、ピストンとライナーなどの一般的な部品間の摺動摩擦を50%低減できることがわかりました」とマン氏。
低摩擦オイルは一般的に、熱、パワーロス、燃料消費量、摩耗を低減させる。同社の開発した「ナノドライブ」技術は先進的なもので、微細なボールベアリングのような小さなナノ粒子が高圧下で剥離し、ポリマーの「フレーク」がエンジン表面に付着するのだ。
現時点では、同社の高級レーシングオイルにのみ使用されているが、アイドリングストップにおいても再始動時の摩耗を減らすことができる。
低摩擦ベアリングと高度な潤滑技術が普及すれば、理論的にはアイドリングストップによるエンジン消耗を克服できるはずだ。しかし、これらの技術はまだ比較的新しく、大量導入や低コスト化をいつ、どれほど実現できるかはわからない。
また、エンジンとは別に、バッテリーへの負担も大きくなる。バッテリーは、エンジン停止中も車載コンピューターやオーディオ、ライトなどに電力を消費し、エンジン始動時にはセルを回さなければならない。充電速度と耐久性が求められるため、アイドリングストップ搭載車向けの専用バッテリーが用意されているが、非常に厳しい環境に置かれることは否めない。
本当に燃料の節約につながる?
アイドリングストップの目的の1つに、燃費の改善がある。結論から言うと、その効果は確かにある。渋滞や信号待ちなど、エンジンを止めて停車している状況では燃料を消費しない。
ただ、具体的にどれくらい改善できるかはしばしば議論の的となる。大方、運転スタイル(走り方)によって左右されてしまう。エンジンが停止している時間が長いほど多くの燃料を節約できるが、例えばエンジンが冷えている場合など、完全に暖まる(暖機)までアイドリングストップが作動しないこともある。

燃費改善や排出ガス低減など確かなメリットはあるものの、その効果は運転スタイル次第である。
バッテリーの残量が一定レベルを下回ったり、シートベルトを外したり、エアコンをつけたりすると、エンジンが停止しないこともある。さらに、停止時間が短いと、節約できる燃料よりもエンジン始動に使う燃料の方が多くなってしまう可能性もある。
車種や車両コンディションによっても作動条件が異なるので、一概にどれくらいの燃料節約につながるかは明言できない。数秒程度しか停車する見込みがないなら、アイドリングストップ機能はオフにしておくほうが賢明だろう。
アイドリングストップ機能は、賢く使えば節約につながるが、デメリットも少なくない。
身も蓋もない話だが、ドライバーよりも自動車メーカー側のメリットの方が大きいかもしれない。昨今、自動車メーカーにはCO2(二酸化炭素)など排気ガスの排出量と燃費について厳しい規制が課せられている。これに違反すると多額の罰金が生じる可能性があるため、少なくとも “カタログ上は” 数値を改善できるアイドリングストップ機能が欠かせなくなっている。
