バトラーにパンチを打ち込む井上(写真:AP/アフロ)

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プロボクシングの世界バンタム級4団体王座統一戦が2022年12月13日に東京・有明アリーナで行われ、世界バンタム級3団体(WBA・WBC・IBF)統一王者・井上尚弥(大橋、29)がWBO世界バンタム級王者ポール・バトラー(英国、34)を11回KOで下し、日本人選手初、アジア初の世界4団体統一王者となった。

採点は3ジャッジ全てが井上支持

試合は初回からプレッシャーをかけた井上が主導権を握り、ディフェンシブなバトラーを追う展開が続いた。井上はガードを固めるバトラーに対してパンチを上下に打ち分けフェイントを駆使して崩しにかかるもダウンを奪えず。終盤に入っても攻撃の手を緩めず、11回にボディーで動きを止めると怒涛の連打で仕留めた。

下馬評通りの強さを見せた井上。一方のバトラーは最後まで勝利の糸口を見出すことができずに完敗した。試合を採点した3人のジャッジ全てが、1回から10回まで10−9で井上を支持。判定にもつれ込んでもバトラーの勝利の可能性はほとんどなかった。

井上の強打の前に消極的なボクシングに終始したバトラーに対し、同国の現役王者であるIBF世界フライ級王者サニー・エドワーズ(英国、26)がSNSで苦言を呈した。

エドワーズは試合中にツイッターにコメントを連投し試合を「実況」。序盤は「バトラーは井上の攻撃の大部分をうまく読みとっている。得点は取っていないが相手を苛立たせていることは確かだ」などとバトラーの健闘を讃えていた。

「写真を撮るために急いで笑顔に..」

ところが中盤、終盤に入っても一方的な展開が続いて完敗。エドワーズは試合直後、「この試合のバトラーのボディーランゲージに気分が悪くなった。勝ちたかったのではなく、ただ生き延びた。世界4団体制覇のチャンスを逃して対戦相手の後ろで拍手を送る。写真を撮るために急いで笑顔に..」と苛立ちを隠さなかった。

井上の勝利を伝えた米国メディアもバトラーの消極性を指摘した。

米スポーツ専門局「ESPN」(WEB版)は、バトラーは試合を通して積極的に関与することを望まなかったが井上は敵を倒す方法を見つけたと伝えた。

同メディアは、井上はパンチを665発放ち151発をヒットさせたが、バトラーは301発のうち38発しかヒットしなかったと指摘。そしてバトラーはパンチの雪崩に直面しても防御することに満足していたと解説した。

米メディア「CBSスポーツ」(WEB版)は、バトラーが消極的だったため井上は11ラウンドまでフィニッシュを待たなければならなかったとし、バトラーは1発ずつしかパンチを打たず「生き残ろうとすることに満足しているように見えた」と伝えた。