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「上司にパワハラを受けていますが、通報することによるデメリットが心配です」。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられている。

相談者はこれまで3年間、上司からパワハラを受け続けてきた。

具体的には、50人ほどの社員が見ている前で大声で叱責されたり、「こんな出来だったら犬以下だ」と罵倒されたりすることがあったという。また、休日にも仕事のことを叱責する電話がかかってきたこともあるそうだ。

相談者は、会社内にあるコンプライアンス窓口に通報することを考えるようになった。

しかし、通報することで、パワハラを受けていた事実がまわりに知られてしまうことに不安を抱いているという。また、「自業自得」「パワハラされる人は仕事ができない」と思われてしまい、不利益があるのではないかという不安もあるそうだ。

コンプライアンス窓口に通報することで、相談者に不利益が生じることはあるのだろうか。波多野進弁護士に聞いた。

●窓口に相談する場合は「証拠の確保」を、複数人での申告も効果的

ーーコンプライアンス窓口にパワハラの通報をおこなった場合、相談者が心配するようにパワハラの事実が周囲に知られてしまったり、周囲からの評価が下がってしまったりするなど、不利益が生じる可能性はあるのでしょうか。

窓口は当然通報者に配慮すべきですが、「窓口に相談したらバレて報復された」といった法律相談は珍しくありません。

ハラスメントの申告があった場合、加害者や関係者への聞き取りなどがおこなわれます。その際に、通報者の安全、保護の意識が弱い場合もあり、通報者(被害者)が特定されてしまい、報復を受けるという可能性は否めません。

また、そもそも窓口に相談するにしても、確固たる証拠(音声や動画など)がないと、加害者が否定した場合、結局どちらが正しいか分からず、うやむやになることもしばしばあります。そのため、証拠の確保がまず重要です。

もし被害者が複数名いるならば、単独で被害を訴えるより、被害者が複数名で結束して申告することも効果的だと思います。

●労働組合や弁護士など、第三者を通じて交渉する方法も

ーー上司のパワハラをやめさせるために、コンプライアンス窓口に相談する以外にできることはあるでしょうか。

日本の企業においては、労働者のためにきちんと活動している労働組合が企業内に存在することは少ないようにも思われます。ただ、もし企業内にこのような労働組合があるならば、労働組合を通じた交渉も1つの方法として考えられるでしょう。

労働組合に依頼することが難しければ、弁護士を通じて交渉するという方法もあります。

在職しながら弁護士に依頼し、交渉するのは難しいことも多いかもしれません。しかし、弁護士を通じて加害者のハラスメントを止めるように会社に促したり、加害者に対する警告をおこなったりすることも選択肢として考えられると思います。

【取材協力弁護士】
波多野 進(はたの・すすむ)弁護士
弁護士登録以来、10年以上の間、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇、残業代にまつわる労働事件に数多く取り組んでいる。
事務所名:同心法律事務所
事務所URL:http://doshin-law.com