世界中で愛されているネコは見た目や動きだけでなく「声」もチャームポイントのひとつですが、この鳴き声はネコ同士のコミュニケーションにはあまり使われていません。ネコが人間のためだけに特別な鳴き声をあげる理由について、動物の行動に関する専門家であるマーサー大学のジョン・ライト氏が解説しています。

Why do cats meow? | Live Science

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子ネコは母親の注意を引くために鳴き声をあげますが、大人のネコ同士はコミュニケーションをとるために鳴き声を使うことは少ないそうです。ネコが人間相手にだけニャーと鳴く理由について、専門家であるライト氏は「人間の家畜となったことが原因」と説明しています。

過去9000年間に存在した200匹以上のネコのDNA調査を行った2017年の研究では、「人間と共に暮らすネコ」が初めて誕生したのは紀元前8000年頃の古代アナトリアの肥沃な三日月地帯だとされています。肥沃な三日月地帯は人類が初めて農耕を行った地域であるため、この研究では農耕によって得られた穀物を食べるネズミを駆除したい人間とネズミを食べるネコの互恵関係が結ばれた結果、自然と「ネコの家畜化」が進んだと結論付けています。

ネコは自ら家畜化した、遺伝子ほぼ不変、最新研究 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/062100235/

このように家畜化される以前のネコは、野生の中で単独で暮らす生き物で、同種とめったに出会うことはなかったと考えられています。そのため、当時のネコはお互いに出会った状態でしか使えない「鳴き声」よりも、お互いに出会うことなく使える「マーキング」というコミュニケーション手段を主に使っていたとのこと。ライト氏は、現代のネコのコミュニケーションにおいても、体をこすりつけたり排尿したりして匂いを残すマーキングが主要な地位を占めていると説明して、「嗅覚を使ったほうが効率的なので、声を使う理由が存在しません」と指摘しました。

ネコがマーキングによってコミュニケーションをとる一方で、人間はネコほど嗅覚が発達した生き物ではありません。こうしたことから、ネコは人間相手には鳴き声を使ったほうがエサなどの望むモノが得られる可能性が高いと家畜化の過程で学習したとライト氏は語っています。

さらに、人間のペットとして飼われるネコは、人間と暮らすうちに「人間に対して鳴き声をあげる」という行為を覚えるという研究結果も2011年に発表されています。この研究は野良ネコと飼いネコの鳴き声について調査することで、野良ネコは「人間や人形、犬などに対して無差別にうなり声をあげる」一方、飼いネコは「人間相手の場合でしか鳴き声をあげず、人間相手の場合はうなり声ではなくニャーと鳴く上、鳴く頻度も高い」ことを確認し、「人間と暮らすことで、鳴き声で人間の注意を引くことを学習している可能性がある」と結論付けています。

こうしたネコの鳴き声について、ライト氏は「あなたの返答がネコが聞き取れるほど十分に肯定的かつ予測可能だった場合、ネコはあなたとコミュニケーションしようと頑張ってくれる場合もあります」と語り、ネコと会話のようなやり取りをすることも可能だと述べました。