サッカー選手に引退はない。そうした言い回しを素直に受け入れることもできた。1部で通用しなくなれば、2部がある。2部がダメなら3部がある。3部に落ちても、実力が回復すれば2部に昇格できる。そこで活躍すれば1部に舞い戻れるかもしれない。下りの階段と昇りの階段を、実力に合わせて移行できる仕組みがある。

 セパ各6球団で2部がない日本のプロ野球は、その上位と下位とでチーム力に大差が存在しないことを意味する。選手はそのレベルを維持していない限り、その集団から溢れることになる。レベルに応じて下りの階段を降りることはできない。その瞬間こそが引退の時期になる。プロ野球選手として、かなりのレベルにあるにもかかわらず、だ。

 プロ野球から中村憲剛は生まれても、遠藤保仁は生まれにくい。チーム数の多い少ないは、働く場所の多い少ないに比例するのだ。

 2、3年前だったと記憶するが、日曜日の朝、お馴染みとなっている討論番組のスポーツコーナーで、張本サンが、当時J2だった横浜FCで現役を続けるカズこと三浦知良について「そろそろ引退した方がいい」と評論したことがあった。その話の中で「J2はプロ野球で言えば2軍でしょ」と述べていた。2軍暮らしを続けるなら辞めた方がいいとばかり、プロ野球のコンセプトでサッカーを語っていたのだが、この捉え方をしている限り、プロ野球、サッカー、それぞれの特殊性は浮き彫りにならない。

 チームがカテゴリー別にたくさん用意されているサッカーのデメリットとは、なんだろうか。トップレベルのプロチームが12球団しかないプロ野球より、門戸は広く開放されている。プロ野球の選手より平均年俸は低いかもしれないが、サッカー選手はそれより出場機会に断然、恵まれている。レベルに応じた落ち着き先が用意されている。引退を納得した形で迎えることができるのはサッカーの方だと思う。

 今季限りでの引退を宣言した中村憲剛は、そう言った意味でプロ野球的だったように思う。スポーツ選手として格好のよい幕の引き方だったように見えるが、サッカーの魅力、文化を宣伝する役を果たしたのは遠藤であるような気がする。以前にも述べたが、同じ理屈で、三浦カズにはJ1の横浜FCで何試合に1度、ピッチに立ち、J1出場最年長記録をその度に更新するより、もう少し下のレベルで、より多く、ピッチに立ってほしいと考える。その方が断然サッカー的だと思う。「サッカー選手に引退はない」とするサッカー文化、あるいはサッカーの魅力は、広く浸透すると思う。

 現在J1からJ3までチーム数は併せて56を数えるが、その数は世界的に見てまだまだ少ない。それをもし、プロ野球のように12に減らしたら、日本のサッカー界はどうなるかと言えば、衰退することは明白だ。サッカーよりプロスポーツとしてはるかに伝統のあるプロ野球に、こんなことを言うのもなんだが、Jリーグ的にした方がもっと繁栄する。12球団では少なすぎる。つくづくもったいないと思うのだ。