マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界第三十七回 「八王子ラーメン」のカップ麺2種類 文・写真:オサーン

カップ麺ブロガーのオサーンです。「ご当地カップ麺」をレビューする連載の第三十七回目です。今回は、東京都八王子市のご当地ラーメン「八王子ラーメン」の味を再現したカップ麺2品をレビューし、八王子ラーメンの魅力に迫っていきます。

八王子ラーメンのカップ麺

八王子ラーメンはきざみ玉ねぎの入った醤油ラーメン

八王子ラーメンは、東京・八王子のご当地ラーメンで、きざみ玉ねぎの入った醤油味のスープが特徴です。

八王子のラーメンコミュニティ「八麺会」のサイトによると、八王子ラーメンの歴史は古く、1959年に「初富士」というお店できざみ玉ねぎを使用したラーメンが提供され始め、その後、八王子市内を中心に広まったそうです。

そして2003年に八麺会が設立。八王子で広まっている同じ特徴を持つラーメンを「八王子ラーメン」と名付け、ご当地ラーメンとして町おこしに活用するようになりました。

八麺会による八王子ラーメンの定義は、「醤油ベースのタレである」、「表面を油が覆っている」、そして「『きざみ玉ねぎ』を具として用いている」の3つ。ラードの油がきざみ玉ねぎの辛味を抑え、甘みを引き立てるそうです。

八王子ラーメンのカップ麺は、2010年頃から徐々に登場。現在は、日清食品の「日清麺NIPPON 八王子たまねぎ醤油ラーメン」と、ヤマダイの「ニュータッチ 大盛八王子ラーメン」の2品が販売されています。

今回はこの2品を紹介し、八王子ラーメンの魅力に迫りたいと思います。

八麺会推薦の本格派「日清麺NIPPON 八王子たまねぎ醤油ラーメン」

日清食品「日清麺NIPPON 八王子たまねぎ醤油ラーメン」

「日清麺NIPPON」シリーズは、全国各地のご当地ラーメンを、地元の団体や自治体と協力してカップ麺化しているブランド。その中でも八王子ラーメンは2013年から続くロングセラー商品です。

八麺会推薦の商品

パッケージには、八麺会のキャラクターである「はちどん」も。八麺会の推薦を受けた商品で、「醤油だれ」「表面の油」「きざみ玉ねぎ」という八王子ラーメンの定義に沿った一杯になっているそうです。

たっぷりきざみ玉ねぎとラードの絶妙な組み合わせ

本格的な中華そば

鶏ガラベースに煮干しを効かせた醤油味のスープ。昔ながらの中華そば感があり、古くか食べられてきたラーメンであることを窺わせます。いかにも中華そばという感じの鶏ガラ醤油味で、このスープだけでもファンができてしまいそうです。

麺は中細のノンフライ麺。芯の残るややかための食感のストレート麺で、生麺に近い質感があります。今回のあっさり系の鶏ガラスープの中に入ると、麺を立てつつも小麦の甘みが感じられるバランスとなっていました。

具は、小さめのチャーシューが2枚と、メンマ、焼海苔2枚、そして八王子ラーメンの特徴であるきざみ玉ねぎがたくさん入っています。定価税別230円で少し高額な商品ですが、価格以上に具は充実しており、お得感がありました。

(左)スープ表面のラードと(右)大量のきざみ玉ねぎ

スープ表面には大量のラードが浮いています。このラードときざみ玉ねぎが、ただのあっさり醤油ラーメンとは違う、八王子ラーメンならではの特徴です。

このきざみ玉ねぎは辛いわけではありませんが、表面のラードと混ざり合うことで、確かに甘みが増しているような印象を受けました。

そもそもスープも麺も高品質でおいしい一杯ではありますが、ラードによる玉ねぎの甘みによって、さらに魅力的な味に仕上がっていました。本当においしいです。

お手軽価格と大盛のコスパが魅力「ニュータッチ 大盛八王子ラーメン」

ヤマダイ「ニュータッチ 大盛八王子ラーメン」

続いては、うまいヌードルニュータッチ♪のラジオCMでおなじみのヤマダイから発売されているカップ麺、「ニュータッチ 大盛八王子ラーメン」。日清食品が本格感漂う商品だったのに対し、こちらヤマダイは大盛を謳っています。

「スーパーカップ」や「ごつ盛り」といった大盛カップ麺と同じ形状の大盛バケツ型のカップに、麺量も同じく大盛カップ麺サイズの90グラム。そして定価税別180円と、コスパ抜群の商品と言えるでしょう。

ラードの入った調味油

安価商品ではコスト的な理由か、スープに液体より粉末を用いられることが多く、この商品でも粉末スープとなっています。ただ、別添で「調味油」が用意されており、八王子ラーメンの定義に沿ってラードが入っています。

ガツンとくる玉ねぎが特徴

大盛八王子ラーメン

スープは鶏ガラベースの醤油味で、オニオンパウダーで玉ねぎの風味を効かせています。鶏ガラはあまり強くなく、日清食品のような中華そば感はそれほど強くないですが、調味油にも玉ねぎエキスが入っていて、玉ねぎに特化したスープとなっています。

麺は縮れの強い中細の油揚げ麺で、日清食品で使われていたノンフライ麺と違い、いかにもカップ麺然として本格感はまったくありませんが、大盛麺量90グラムの物量作戦でグイグイ押してきていました。

具は、チャーシュー1枚と、ねぎ、きざみ玉ねぎ。チャーシューは180円で大盛麺量の商品と考えれば、肉感があって大きさもしっかりしています。きざみ玉ねぎは多めに入っていますが、日清食品に比べると量は少なくカットも細かかったです。

(左)スープ表面のラードと(右)きざみ玉ねぎ

スープ表面にラードが浮き、きざみ玉ねぎも入っているので、きちんと八王子ラーメンの定義に沿っています。ただ、ラードがそれほど多くないため、ラードが玉ねぎに甘みを加えているわけではなく、むしろクセの強い玉ねぎの風味が全開。口に味が残る玉ねぎです。

日清食品の八王子ラーメンのような本格感がないのは、両商品の価格差を考えれば致し方ないところで、コスト的な制約から本格的にできない分、大盛食べ応え重視で、玉ねぎの風味押しという特徴を携えていました。

おすすめはどっち?

八王子のご当地ラーメンを再現したカップ麺2品を食べ比べ、日清食品には八王子ラーメンの本格感溢れる魅力、ヤマダイには大盛コスパ抜群で、玉ねぎの風味押しという魅力がありました。

どちらもおいしいですが、定価税別230円の価格が許容できるなら、日清食品が断然おすすめ。中華そばらしい味わいと玉ねぎの甘みの組み合わせが魅力的なので、ぜひ味わってみてください。

筆者:オサーンカップ麺ブロガー。十数年前に出会った「日清麺職人」のおいしさに感激したことがきっかけでブログを開設。「カップ麺をひたすら食いまくるブログ」で毎週発売される新商品を食べて毎日レビューしています。豚骨スープとノンフライ麺の組み合わせがお気に入りですが、実はスープにごはんを入れて食べるのが最も至福の時です。Twitter(@ossern)