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石原裕次郎だって乗っていた「劇中車」

text:Kouichi Kobuna(小鮒康一)

ドラマや映画といった映像作品において、かなりの割合で登場する自動車。

なかでも刑事ドラマなどで登場するパトカーは作品とは切ってもきれない名脇役と言えるかもしれない。

日産リーフパトカー仕様は、映画「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」の劇中で実際に使用された劇用車で、映画の公開を記念して、2013年1月14日〜31日に日産グローバル本社ギャラリーで展示された。また、このリーフを使用したオリジナルのテレビCMも作らた。ルーフの赤色回転灯とカラーリング以外には、特に改造された部分はない。

一昔前の刑事ドラマでは、クルマが主役といっても過言ではないほど人気となったものもあり、代表的なものが1979年に放送がスタートした「西部警察」シリーズや、86年にスタートした「あぶない刑事」シリーズなどが知られるところだろう。

この2つの番組はメインスポンサーに日産自動車が入り、メインで登場する車種は日産車ばかり。

石原裕次郎演じる小暮課長が乗るガゼールのオープンや、大門軍団のマシンRSシリーズ、あぶない刑事のF31レパードなどは、今でも影響を受けたユーザーが多数いるほどの影響力を誇っていた。

これらの車両は前述したようにスポンサーである日産自動車が用意したものがほとんどであり、西部警察の特殊車両などは、当時の日産プリンス自動車販売特販推進室(現在のオーテックジャパンの前身)が制作したものであることはよく知られている。

しかし、最近のドラマではそこまで現実離れした車両が登場するものは影を潜め、どちらかというと裏方に徹しながらもリアルな車両が多く登場するようになってきている。

果たしてこれらの車両は本物なのだろうか?

「劇用車」と呼ばれる精巧なレプリカ

結果から言ってしまえば、これらの車両は警察車両を模したレプリカ車両となる。

実はこういった撮影用に車両を手配する業者が存在し、劇用車などと呼ばれているものになるのである。

劇中車に使う、ダミーのナンバープレート。

本物の警察車両は退役した後、払い下げなどは行われず(海外では払い下げをしている地域もあるが)、全車解体処分がなされるため、劇用車はゼロから作り上げたものというわけだ。

ちなみにベースとなるのは中古車が多く、パトカーと同じくセダン系が好まれる元タクシー車両が選ばれることが多い。

これは過走行で価格が安い割には、比較的メンテナンスが行き届いているものが多いというのが主な理由である。

なお、劇用車を撮影現場まで移動させる手段については、積載車に積んで持っていく……と思われる方も多いと思うが、実は自走で向かうことが一般的なのだ。

といっても、明らかにパトカーの見た目で公道を走行するわけにはいかないので、赤色灯にはカバーを施し、車両には「劇用車回送中」というような札を掲げて走行する。

ちなみにナンバープレートは撮影時に劇用プレートと言われるダミーのものを装着すると思われがちだが、公道走行時は装着ができない(撮影用に道路使用許可を受けている場合を除く)。

そのため、本来のナンバーのままか、映画などではCGで処理することもあるとのことだ。

劇用車はだれのもの? 購入することも

パトカー(レプリカ)のような特殊な車両に関しては基本的に劇用車を提供する会社が自社で制作、保有しているのが一般的であるが、それ以外の車両に関してはさまざまなところから調達している。

前述のように大手自動車メーカーがスポンサードしている枠の番組であれば、そのメーカーから車両が貸し出される場合もあるが、主役級の車両以外はレンタカーなどでまかなわれることも少なくない。

また、古い時代設定の作品の場合は、旧車のユーザーやオーナーズクラブに声をかけて車両を借りるということもあるが、主役級の車両に関しては購入してしまうこともあるようだ。

実際、長期間にわたる撮影をするのに都度ユーザーから借りるのは現実的ではないし、撮影終了後に売却してしまえばある程度回収できてしまうという点では合理的と言えるかもしれない。

もちろんそんな芸当ができるのは、予算が潤沢にある映画などの場合に限った話であり、番組の1コーナーである再現VTRなどではそこまで予算をかけられないというのもまた事実。

そのため、マニアが見ると違和感を覚えるシーンもあるとは思うが、そこは大目に見て上げたいところ。

ちなみにスポンサーに配慮してか、車名やエンブレムを隠された車両が登場することも多いが、自動車メーカーがスポンサードしている番組でそのメーカーの車両なのに隠されている場合がある。

これは再放送や映画を地上波で放送する際にスポンサーが異なる可能性も見越しての処置なのだそうだ。

劇用車の世界は多方面に気を遣わなければならない、じつは大変な世界のようである。