結婚に対する価値観がいま、変わりはじめています。

生涯未婚率が男女ともに過去最高になる一方で、離婚する人も増加。家族や結婚のあり方も変化し、自分に合うようにカスタマイズできるようになってきているのかもしれません。

多様化する結婚観をフラットに見つめ直す連載「結婚2.0」。今回取材したのは、「友情結婚」専門の結婚相談所を運営している、株式会社カラーズ81代表の中村光沙さん。

恋愛感情やセックスのない結婚「友情結婚」の実態とは?

実際に「友情結婚」された会員さんにもお話を伺いました。

〈聞き手=あつたゆか〉

「友情結婚」とは「セックスのない結婚


【中村光沙(なかむら・ありさ)】友情結婚に特化した結婚相談所「カラーズ」代表。2015年にカラーズを設立し、5年目の現在、148名が成婚。成婚率は37.6%となっている(9月24日現在)

あつた:
中村さんは「友情結婚」専門の結婚相談所を運営しているんですよね。そもそも、友情結婚って何ですか?

中村さん:
友情結婚は、セックスのない結婚です。それ以外は一般的な結婚と変わらないですね。

あつた:
セックスのない結婚…恋愛感情もない場合が多いんですか?

中村さん:
セックスや恋愛感情はないけど、「友情」によって婚姻を結ぶことを、私たちは友情結婚といっています

もちろん、偽装結婚(籍だけ・ビザ目的・金銭目的など)とは異なります。

出典 https://www.colorusfsb.com

あつた:
どういう方が友情結婚を望むんでしょうか?

中村さん:
どこにでもいるような会社員の方で、いたって一般的な方々です。「今まで異性にめちゃめちゃモテてたでしょ」って方もたくさん相談に来ます。

内面的には、いくつかのパターンがありますね。ひとつは、アセクシャル(無性愛)やノンセクシャル(非性愛)の方が多いです。

あつた:
アセクシャルとノンセクシャル…?



中村さん:
アセクシャルは他者に対して恋愛感情も性的欲求も抱かない傾向がある人のことを言います。

だから婚活を頑張っても、他者から恋愛感情や性的感情を向けられるとそれに応えられない…という人が多いです。

あつた:
なるほど。

中村さん:
ノンセクシャルは、他者に対しての恋愛のような感情はあるが、性的欲求を持たない傾向がある人のことを言います。

恋愛感情や性的感情について悩んでいる方がたくさんいるんですよね。

あつた:
どっちにしても、性行為を望まない人たちなんですね。

中村さん:
はい。みなさん昔から違和感はあったけれど「いつかは結婚できるだろう」と思っていて。

でも婚活をしてみて「セックスが前提の一般的な結婚は向いていないのかも」と気づくみたいです。


恋愛感情を持たないという「アセクシャル」は、最近“自分もそうかも?”と感じる人が増えているそう

中村さん:
もうひとつは、LGBTQの方。男性はゲイの方が多いですね。

その方々の多くは、積極的にゲイとして男性と交際したいわけではなく、「女性と結婚したい」「性的なこと以外は一般的な家族を持って家庭を築きたい」などの理由で友情結婚を選択されます。

あつた:
なるほど…。ほかに、相談にくる人の特徴ってありますか?

中村さん:
男女ともに医者や弁護士、公務員や大手企業の会社員など社会的地位が高い方も多いです。「普通のレールから外れたくない」「結婚して、社会的な評価を得たい」と考える人ですね。

逆に、ITやマスコミ系、美容師など、自由なイメージのある業界の人は少ないかもしれません。



あつた:
なぜそういった方々は友情結婚をしてまでも「結婚したい」と思うのでしょうか?

中村さん:
「子どもが欲しい」「一人は寂しい」「老後が不安」「親を安心させたい」「世間体」など理由はさまざまで、ストレートの人が結婚したい理由と変わらないですよ。

「ずっと自分みたいな人を探してた」実際に成婚した人に話を聞いてみた

あつた:
ここからは実際に友情結婚をされたえりかさん(仮名)にお話を伺っていきます。

えりかさん:
現在29歳で、友情結婚2年目です。よろしくお願いします。

あつた:
えりかさんはどういう経緯で友情結婚をされたんでしょうか?

えりかさん:
ずっと、友達の恋バナを聞くのは好きだったんですが、みんなが言う「好きになる」という感覚がわからなくて

まわりにいた男性はみんないい人で、みんな人として好きだから、「誰か一人を異性として好きになる」という感覚がわかりませんでした。

それで大学生のときに、「自分はアセクシャルなんじゃないか…」と気づきました。

あつた:
そうか…アセクシャルの方だと「みんないい人じゃん」ってなるんですね。

そんななかえりかさんはなぜ結婚をしたいと思ったんですか?

えりかさん:
会社の雰囲気ですね。会社の風土的に「結婚して一人前」という雰囲気があって

なので「結婚はしたほうがいいんだろうな」と思っていました。

あつた:
大企業だと、そういう雰囲気があるのかもしれないですね…

えりかさん:
私、自分のような人がどこかにいないかな…?と思って、大学生のころから何年もずっとネットで検索してたんですよ。「自分みたいなひとが、世界のどこかに必ずいるはずだ」って。

そしたら「友情結婚」という言葉を知って、この結婚相談所にたどり着きました。

話し合いが不可欠の「友情結婚」は離婚率が低い

あつた:
実際に友情結婚を希望する場合、カラーズでは具体的にどのような手続きを進めていくんでしょうか?

中村さん:
通常の結婚相談所とあまり変わらないと思います。

まずは入会を希望する方を私が面談してヒアリングをします。入会したら「条件や雰囲気が合いそうだな」という方をご紹介させていただきます。

その後、おふたりでお見合いをしていただき、次もお互い会いたいようであれば交際に進みます。

あつた:
めっちゃ普通ですね(笑)。



中村さん:
特徴的なものがあるとすれば、この話し合い冊子ですかね。

交際中は、この話し合い冊子をもとに話し合ってから成婚を決めることをおすすめしています。


「同居/別居」「冷蔵庫やキッチンの使い方」「洗濯(一緒・各々・当番制・分担制)」などの細かい項目が…!

あつた:
おお…! 希望の居住スタイルや生活習慣まで、細かいところまですり合わせができるようになっているんですね。

中村さん:
はい。妊活の期間や予算、授かる方法なども詳しくすり合わせができるようになっています。これは、「性行為なしの結婚相談所」ならではですね。


「妊活 できなかった場合」「親族は子育てに関与するのか、またその頻度」などデリケートな内容も

あつた:
これだけ細かいところまですりあわせができれば、離婚率も低そうですね。

中村さん:
そうですね。むしろカラーズの友情結婚の場合、恋愛結婚に比べて離婚率はかなり低いんじゃないかなと思います。

あつた:
え、なぜですか?



中村さん:
恋愛感情があるときって盲目になっちゃいませんか?

貯金や育児、親の介護の話など、真面目なことを話し合いづらい。「好きなんだからいいじゃん、こんなこと話さなくても。一緒にいたらどうにかなるよ」となりがちです。

あつた:
たしかに。

中村さん:
友情結婚だと、一般的な「恋愛感情」がないから、共同生活を成り立たせるには「話し合い」が不可欠なんです。

そういったことも冷静に話し合えるのが良いところだと思います。

友情結婚生活の実態は「ルームメイトっぽい」。まわりの人は知ってるの?

あつた:
えりかさんの「友情結婚生活」はどんな感じなんでしょうか?

えりかさん:
ルームメイトっぽい感じですね。平日は帰る時間がお互いバラバラなので食事は別にすることが多いですし、寝室も部屋も別々です。

お金も折半にしていて、毎月いくらずつ共通口座にいれるというのを決めています。

あつた:
やはりドライな感じなんですね。一緒に遊びに行ったりはするんですか?

えりかさん:
たまにしますね。今日も一緒に映画を見にいきます。『おっさんずラブ』を…(笑)。


『おっさんずラブ』人気ですよね

あつた:
仲良いルームメイトって感覚なんですかね…?

えりかさん:
うーん、表現するのが難しいんですよね。

恋愛感情はないし、ルームメイトのようなドライな関係だけど、大切な存在です。

口に出して言われることはないけど、会社でも「結婚した人」としてきちんと扱われるようになった気がするので、独身のときよりも心強さは増しましたね。

あつた:
ちなみに、親や周囲の人には「友情結婚」だということは言っているんですか…?

えりかさん:
いえ、私たちの場合は、「友情結婚だということは誰にも言わないようにしよう」という取り決めにしているので、誰にも言ってません

親にも言えない秘密を共有してる相手なので、そう考えるとやっぱり特別な存在と言えるのかもしれませんね(笑)。

妊活もしている…! 「好きではない相手の子ども」をどうとらえているのか

あつた:
友情結婚をされる方って、子作りに関してはどのように考えている方が多いんでしょうか?



中村さん:
友情結婚をする理由で「子どもが欲しい」という理由は圧倒的に多くて、「性行為は求めてないが子どもを作りたい」という人が多いです。

あつた:
なるほど。えりかさんはお子さんを希望していたんですか?

えりかさん:
私は特にこだわりがなくてどちらでもいいと思っていたんですが、夫が子どもを望んでいるので、今は妊活を頑張っています

あつた:
おお、そうなんですね! ちょっと失礼ですが「好きではない相手の子ども」を産むってどんな感じなんですか…?

えりかさん:
そもそも「好きな人の子どもを産みたい」という気持ちがわからないので(笑)、恋愛感情がない相手との間に子どもを持つことに違和感はないです。

子どもに関してはこだわりがなくて、相手が欲しいなら産むか…! という感じです。

あつた:
私の周囲の女性でも「結婚はしたくないけど子どもはほしい」っていう人は多いですが…。そうか「好きな人の子供を産みたい」という感覚もないのか…

なるほど…!


読者のみなさんは共感できますか…?

日本は「普通」から外れると生きづらい。「偏見と戦わず穏やかに生きる」権利もある

あつた:
今って「自分らしく生きよう!」という風潮が強いし、結婚しない人や、同性で暮らす
カップルも多いじゃないですか。

友情結婚はその逆を行っている気もするんですが…

中村さん:
いや、そうは言っても、日本って「普通」から外れると生きづらい社会なんですよ



中村さん:
えりかさんも話していましたが、結婚しない人への偏見や、同性カップルへの偏見はある。たとえ同性婚がOKになったとしても、友情結婚のニーズはあると思います。

「恋愛結婚に興味がない」「異性に興味がない」というセクシャリティをオープンにして生きづらくないのであれば、みんなもっとカミングアウトしてますよ。

あつた:
「オープンにしようよ!」「自分らしく生きようよ!」という風潮が強いですが、実際問題として偏見はありますもんね…

中村さん:
そうなんです。日本って制度が整っても、偏見がなくなるのには結構時間がかかるんですよね。

たとえば男性の育休だって制度はあるけれど、取得しようと思ったらいまだに白い目で見られるじゃないですか。

あつた:
たしかに…

中村さん:
理想論でいえば、自分の信条やセクシャリティをオープンに言える社会のほうがいい。でも制度が整ったからといって、実際に全員の偏見がなくなることはありません。

なので「セクシャリティを隠して普通に生きたい」「偏見と戦わないで穏やかに生きたい」というのもまた一つの権利だと思います。

あつた:
深いですね…

中村さん:
「目立たないで普通に生きたい」と思うのもまた一つの多様性なんです。友情結婚は、その一助になると思っています。

あつた:
なるほど…今日はありがとうございました!



少し特殊なもののように聞こえていた「友情結婚」。

でも、

「異性や恋愛にそこまで興味がなくても、社会からの偏見にさらされない」

「恋愛感情に左右されないからこそ、話し合いによって穏やかな生活を送れる」

と聞いて、ある意味現代にとても合った結婚の形態なのではないか…とも思ってきました。

えりかさんのように、「自分もこういう形の結婚が向いているのでは」と思った方は、ぜひ連絡してみてください!

〈取材・文=あつたゆか(@yuka_atsuta)/編集=天野俊吉(@amanop)〉

恋愛じゃない結婚なら友情結婚相談所カラーズ
https://www.colorusfsb.com/