写真:アフロ


 プロ野球もシーズン後半戦が始まった。

 セ・リーグはジャイアンツが2位以下を大きく引き離し首位で折り返し、一強の様相を呈しているが・・・果たしてジャイアンツがこのまま独走するのか――。

「セ・リーグのポイントはやっぱり広島カープだったと思います。開幕直後の不調、4月後半から5月にかけての躍進、そして交流戦以降の大型連敗。そのなかで、開幕から安定してちょっとずつ貯金を増やしたジャイアンツが走り始めている」

 そう分析するのは野球解説者の井端弘和氏だ。

 中日ドラゴンズで攻守に活躍し、チームの勝利に欠かせない「勝ち方」を知り尽くすプレイヤーでもあった井端氏に、強いチームの秘訣と後半戦への展望を聞いた。

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ジャイアンツは走り続けるのか?

 目下、セ・リーグペナントレース争いへの興味は、ジャイアンツがこのまま走るのか、それとも対抗馬が現れるのか、に収れんされるだろう。

 開幕前、ジャイアンツと並んで優勝候補に挙げられていたカープの今シーズンはまさにジェットコースター。

 開幕後、15試合で全5球団に負け越すという4勝11敗のスタートも、5月には20勝4敗1分けと、大きく盛り返し首位に躍り出た。しかし、交流戦以降、再び調子に陰りが見え、7月には11連敗(1引き分けをはさむ)。結局、借金を抱えたまま前半戦を終えた。

 井端氏は言う。

「丸選手が抜けた穴、などともいわれますが軒並み選手が不調であることがすべてだと思います。逆に個人成績を見れば、途中まで首位争いができていたことがすごい。その中で月間20勝する爆発力もある。やっぱり3連覇を経験した力、なにより“勝ち方”を知っているのでしょう」

勝ち方、点の取り方を知っているチームとは

 井端氏はドラゴンズ時代、圧倒的な「勝利」を経験している。一軍に定着して以降(2000〜13シーズン)、Bクラスは2回(01、13年)のみ。一方で優勝4回、2位6回、3位2回、そして日本一1回に貢献してきた。

 象徴的だったのが落合博満監督時代の不気味なほどの強さだ。

 打撃3部門でタイトルを獲るような突出した数字を残す選手がいなくとも(00〜13年で打撃タイトルを獲ったのは02、06年の福留孝介の首位打者、07年ウッズ、09年ブランコの本塁打王のみ)、井端氏を中心とした守備力、投手力そして効果的な得点で、勝利をもぎ取る――「勝ち方」を知ったチームであった。

「個々の選手が打っているから強い、と一概に言えないのがチームであり、ペナントレースですね。凡打でも得点につなげられる、要所で得点を取る、そういう部分を押さえられているチームは勝ち方を知っていると言えます。当時のドラゴンズもプレーをしていて、そういう部分で他のチームより勝っている感覚がありました。それがないと、ヒットを打っている割に点が入らない、本塁打が出ているのに勝っていない、という現象になっていきます」

 例えば今シーズン、首位ジャイアンツと、2位ベイスターズ(7月19日現在)は、ともにチーム本塁打が100本を超える強力打線を誇るが、その差はゲーム差にして10、ジャイアンツは貯金18、ベイスターズは借金生活(2)である。

「ベイスターズの場合はもともと本塁打で点を取るチーム。得点パターンは連打で繋いでいくというよりも、本塁打が出たときにランナーがいれば良し、という傾向があります。本塁打、打率といった数字上の見栄えが良くても、それが必ずしも勝利につながらないのは、打線が打線といわれるゆえんの『線』になっていないからでしょう」

 井端氏が2004年にセ・リーグを制した際のドラゴンズは、チーム打率、得点数が5位、本塁打数は最下位だった。それでも、ここぞというときに細かく繋ぎ、ダメ押しの本塁打で相手を突き放す「打線」だった。

「本塁打が効果的な『打線』となっているのは、とどめの得点が本塁打という場合ですね。相手からすれば、連打で得点を奪われて、仕上げに本塁打。これは堪えます。でも、単発で打たれているときというのは、そこまでダメージがないんです」

鈴木誠也の圧倒的なジャイアンツキラーぶり

 その点をふまえて今後のセ・リーグはどうなっていくのか。

「『打線』という意味で点の取り方を知っているのはやはりカープでしょう。直接対決が14試合残っていて、ジャイアンツに唯一勝ち越している。先の爆発力を考えても、カープの踏ん張りがセ・リーグの鍵になるでしょうね」

 昨シーズンまでのカープ打線は、鈴木誠也や丸佳浩といった打率も本塁打も残せる選手が中心、といったイメージが強いが、実は細かい進塁打や、内野ゴロでも1点という「点の取り方」が徹底されていた。

 3年連続で圧倒的な得点力を誇った裏にはまさに「打線」として機能したチーム力あったわけだ。事実、3連覇中、打撃主要3タイトルを獲ったカープの選手はいない。

「あくまでイメージではありますが、個人の打撃数字というのは、下位チームに対して強く、ホームランやヒットを重ねていくことで数字が上がる選手もいるので、チームの勝利とイコールでは測れないですよね」

 その点、カープは今シーズンもジャイアンツに対して唯一勝ち越し(6勝4敗)、そして打っているチームだ。ポイントゲッターとなる選手の対ジャイアンツの成績は軒並み、自身のアベレージを上回る。

・鈴木誠也 35打数18安打.514 5本塁打 9打点 
(対スワローズ.340、対ベイスターズ.308、対ドラゴンズ.268、対タイガース.273)

・バティスタ 39打数14安打.359 4本塁打 6打点 
(対スワローズ.268、対ベイスターズ.240、対ドラゴンズ.225、対タイガース.409)

・西川龍馬 32打数11安打.344 1本塁打 7打点 
(対スワローズ.277、対ベイスターズ.224、対ドラゴンズ.333、対タイガース.235)

 逆に言えば、ジャイアンツと引けを取らない打力を持つベイスターズがジャイアンツを脅かすために必要な「打線」化へのポイントは、同じくポイントゲッターたちがジャイアンツ戦でその力を発揮することにある。

・ソト 51打数11安打.216 5本塁打 12打点 
(対カープ.240、対スワローズ.309、対ドラゴンズ.290、対タイガース.276)

・筒香嘉智 47打数11安打.234 3本塁打 7打点 
(対カープ.367、対スワローズ.353、対ドラゴンズ.355、対タイガース.275)

・ロペス 50打数15安打.300 5本塁打 9打点
(対カープ.217、対スワローズ.237、対ドラゴンズ.225、対タイガース.290)

 ジャイアンツが走るのか、カープが「勝ち方」の本領を発揮するのか、それともほかの球団が「勝ち方」を見つけ始めるのか。ジャイアンツをしのぐ「打線」を作れるチームが、その最右翼となる。

(編集部注:井端氏に話を聞いたのは7月初旬時点であることをお断りいたします。データはすべて7月19日時点のものです)

筆者:黒田 俊