大企業に続々"国立グローバル高専"の実力
■「大卒」よりはるかに学費が安くあがる
中学卒業後、高校の普通科から大学を目指すのではなく、5年制の高等専門学校(高専)という選択肢が注目されているが、「なりたい自分になれる高専」というキャッチフレーズを掲げる明石工業高等専門学校では、進学でも就職でも、生涯設計に即した進路を選択できるのが大きな特徴だ。
75%の卒業生が専攻科、および大学の3年生に進学しており、東大、京大、阪大、神大、九大、北大、筑波大、東工大などへの編入実績がある。
一方、就職希望者の就職率は、ほぼ100%。ここ数年NHK、ANA、JR西日本、トヨタ、川崎重工、関西電力、電源開発など、安定した就職ルートを保ち続けている。高専から三菱・三井など財閥系や大企業グループへの就職は少なくない。
高専の受験偏差値には、立地などの環境が大きく作用するが、おおむね50台後半から60台。本校は68ある。ただOBに聞く限り、就職先で便利屋扱いされたり、大卒より給与が低いとされることが難点といえば難点だ。
一般的に学費が安いのも、高専の特徴だ。学士取得までを比べると、理系の国立・私立大学の4年間の学費に比べ、高専本科+理系国立大、さらに高専本科+専攻科のほうがずっと安い。
■生徒を成長させる「アクティブ・ラーニング」の中身
高専で効果を発揮しているのはアクティブ・ラーニング。答えのないものにチャレンジするなど、自ら問題を設定し、解決する力をつけることを目的としたカリキュラムで、受験中心の中高教育に最も欠落した部分だ。
社会に出れば自ら問題を探してその解決法を見つけ出さねばならないし、最先端の技術を常に素早くキャッチアップしなければならないが、高専では主体性が要求されるアクティブ・ラーニングによって、課題を発見・解決したり、最先端の技術にすぐさま対応できる基礎的な素養を身につけられる。
教育の世界においても、グローバル化は非常に重要なテーマだ。これからは自分の意見や考えを主張し、イエス・ノーを明確にし、ディベートができる人材でないと生き残っていけないだろう。日本的な「言わなくてもわかる」コミュニケーションは、海を越えれば通用しない。
■毎年100人以上が海外留学へ
2014年、茨城高専と本校が全国51高専の中でグローバル高専モデル校に選定された。毎年100人以上が、オーストラリアやベトナム、シンガポールなどへ語学研修や海外インターンシップなどで留学している。帰国した学生の成長ぶりが同級生を刺激し、いい波及効果も生んでいる。大学受験や就職活動の負担が少ない分、高専生には余裕があるのかもしれない。
アクティブ・ラーニングとグローバル事業は、新しい技術や知識、未知の世界へ飛び込んだときの対応力や気概を育てており、企業ニーズとも繋がりが深い。基本的に日本人は勤勉なので、うまく育てればすごく伸びる。頭が柔らかく吸収できる時期にさまざまな経験を積むのは非常に重要だ。教育に重きを置き、高専のようなシステムをもっと大きく広げ、将来を見据えて発展していくべきだとも思う。
本校は、高専ロボコンの2016全国大会で2年連続ベスト4進出を果たした。また多くの高専では小・中学生向けのイベントを開催している。ロボコンやイベントは、子どもたちを高専に振り向かせるいいきっかけにもなるだろう。ぜひ足を運んで高専を体験させてほしい。
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明石工業高等専門学校長
1952年、大阪府生まれ。大阪大学工学部卒業。81年工学博士。99年大阪大学大学院工学研究科教授。応用物理学専攻。2015年より現職および大阪大学名誉教授。
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(明石工業高等専門学校長 笠井 秀明 構成=篠原克周 撮影=浮田輝雄)
