絶対王者"マツキヨ"が3位に転落したワケ
■積極的なM&Aで成長するドラッグストア
ドラッグストア大手の主導権争いが面白い。特に2016年度は、売上高ベースの企業順位に大きな変動があった。
2016年度の連結売上高で業界トップに躍り出たのは、6231億円を計上したウエルシアホールディングス(HD)だ。同社はイオングループの中核企業の1社。「ウエルシア薬局」や「薬局ダックス」などの店舗を展開する。2位は、「ツルハドラッグ」「くすりの福太郎」「くすりのレデイ」などを運営しているツルハHD。グループ売上高は5770億円だった。
ウエルシアHDやツルハHDは、積極的なM&A(企業の買収・合併)で売上高を伸ばしてきた。ウエルシアHDは15年3月にタキヤ(兵庫県尼崎市)とシミズ薬品(京都市)を子会社化、15年9月に完全子会社にしたCFSコーポレーション(その後吸収合併)の業績が通年で寄与した。ツルハHDは15年10月にレデイ薬局を子会社化している。
“マツキヨ”の愛称で知られ、売上高ベースで20年以上にわたって業界トップの座を死守してきたマツモトキヨシHDは、5351億円で3位に転落した。不採算店の閉鎖を進めたことで、売上高は前年度比で微減している。今後も、店舗数の拡大より、収益を重視していく方針だ。
■銀座8丁目に新業態「BEAUTY U」を開業
2015年には、新松戸駅前に次世代型店舗「matsukiyo LAB(マツキヨラボ)」を出店。薬剤師だけでなく、管理栄養士やビューティースペシャリストが常駐し、「暮らしのヘルスケアショップ」を謳う。現在は4店舗だが、この路線には手応えがあるようだ。2017年6月には銀座8丁目に新業態「BEAUTY U(ビューティーユー)」を開業。やはり「美と健康」がテーマで、売り場では化粧品を全面的に押し出している。
業界順位の激しい変化は、小売業として存在感を高めているドラッグストアの勢いを象徴している。医薬品はもちろん化粧品や雑貨、食品、飲料水なども取り扱い、出勤途中の会社員をターゲットに早朝からオープンする店舗も目立つなど、ドラッグストアはコンビニと同じように街に欠かせない存在になってきた。
各社が開示している17年度売上高予想でも、1位ウエルシアHD(6750億円)、2位ツルハHD(6000億円)の順位に変動はない。ただし、ツルハHDは9月に杏林堂薬局(静岡県)を買収する。トップの入れ替えも予想される。2020年の売上目標が8000億円のマツモトキヨシHD(5600億円)は、17年度においては、ドラッグストアに加えてディスカウントストアも展開しているサンドラッグ(5645億円)に追い抜かれ、コスモス薬品(5500億円)にも迫られる水準にとどまるようだ。
■医薬品で儲けを稼ぎ出すビジネスモデル
そうしたドラッグストアのビジネスモデルは、「売上高÷仕入れ高」の数字に端的に示されているといっていいだろう。
たとえば、マツモトキヨシHDの場合、医薬品の売上高1656億円は、医薬品の仕入れ高1015億円の「1.63倍」である。同じように化粧品は1.39倍、雑貨は1.30倍、食品は1.14倍だ。もちろん、各社で倍率に微妙な差異はあるが、医薬品の倍率は高く、雑貨や食品は限りなく低く、化粧品はその中間ということでは共通する。
売上高を仕入れ高で除した数値が高ければ高いほど、粗利益率が高いと判断できる。つまり、ドラッグストアは、医薬品で確実に利益を確保する一方で、化粧品や日用品、雑貨、食品、飲料水などは仕入れ値に近い低価格で販売することで、スーパーやコンビニ客を取り込んでいるわけだ。
会社全体の収支でいえば、ディスカウントショップも展開するサンドラッグを除く3社の原価率は、71%前後とほぼ横並びである。1000円の商品でいえば、仕入れ代金は700円ちょっとで共通しているということ。経費率の高低で儲け(営業利益率)が異なっているが、各社とも確実に利益を確保していることも明らかだ。
業界トップに立ったウエルシアHDの国内店舗の平均像を確認しておこう。1店舗1日平均の売上高は、110万円を上回る。運営スタッフは、薬剤師が2人強、登録販売員が6人弱といったところだ。構造物など店舗の資産価値は5000万円台である。また、年度末の在庫と売上高から計算すると、ウエルシアHDの店舗では、ほぼ1カ月ですべての商品が入れ替わっていることになる。
(ビジネスリサーチ・ジャパン代表 鎌田 正文)

