2017年1月登場の完全個室型夜行高速バス「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」。東京〜大阪間2万円、ホテル並みの設備というバスの全貌が明らかになりました。新幹線グリーン車に匹敵する価格、勝算はどこにあるのでしょうか。

室内設備のキーワードは「癒し」

 関東バス(東京都中野区)と両備ホールディングス(岡山市)が共同で、夜行高速バス「DREAM SLEEPER(ドリームスリーパー) 東京・大阪号」を2017年1月18日(水)から運行します。業界で初めて、全11席を壁と扉で天井まで仕切った「完全個室」を実現。「ホテル同等の設備」(関東バス)を有するという豪華なバスです。

個室の扉を閉めた状態。扉の重みなども、車両の保安基準を考慮して決めたという(写真出典:関東バス)。

 バスの乗降口から階段を上ると、通路をはさんで左右に、壁と扉で仕切られた11の個室が並んでいます。床は全面カーペット敷き。各扉付近には「A1」「B1」など、ホテルの部屋番号のようなプレートが取り付けられています。

 各個室の広さは、幅およそ85cm、奥行きおよそ160cm(部屋により若干の差異あり)。自分好みの明るさに調整できるダウンライトやプラズマクラスターイオン発生器、アロマ発生器、さらに海や川、森、山の音などを発生させるオーディオ設備もあります。車両の開発責任者である両備ホールディングスの松田敏之副社長はこれらの設備について、「癒しの効果を重視」したものといいます。

「寝返り不要」豪華バス、座席にNASA由来の工夫

「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」の座席は、NASAの理論に着想を得たという「ゼログラビティシート」。背もたれを40度、座面を30度傾斜させ、フットレストを水平にすることで「胎児がお腹の中にいる状態」を再現、浮遊感を得て深く眠れるというものです。

「ゼログラビティシート」。お尻が沈み込むような格好で眠る(写真出典:関東バス)。

 とはいえバス車両の保安基準上、座席はフルフラットにはならず、寝返りが打ちづらいことはほかの夜行高速バスなどと同様です。しかし松田副社長は「このバスのシートならば、そもそも寝返りを打つ必要がない」といいます。

 その秘密は、枕や背面、座面、フットレストのすべてに採用されている「ムアツクッション」です。凹凸形状のクッション、その凸点で体を支えることで血行を妨げないというもの。松田副社長は、「寝返りを打つのは血行のため。しかしこのムアツクッションは、寝返りを打たなくても血行を妨げず、フルフラットよりも深く眠れます」と太鼓判を押します。

車内の設備は? 高速バスでは珍しいものも

「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」では、快適に過ごすためのアメニティとしてブランケット、ヘッドホン、ミネラルウォーター、スリッパ、ウェットタオル、歯ブラシ、耳栓、アイマスクなどが提供されます。また車内Wi-Fiが利用できるほか、各個室にコンセント、充電用USBが用意されており、座席前面のテーブルを出して仕事することも可能です。

座席は背面、座面、フットレストもすべて電動。下はコンセント、充電用USB、オーディオ設備(2017年1月11日、中島洋平撮影)。

 車両中央部の階段を下りたところにあるトイレは「高速バスでは珍しい」(松田副社長)という温水洗浄機能付き。それとは別に、車両後方にはカーテンで仕切られたパウダールームもあり、女性のメイクに配慮した、LED照明の3面鏡が備えられています。

トイレには、温水洗浄機能と水浄化機能が備わっている(写真出典:関東バス)。

 荷物棚は各個室の座席上にあります。また個室の天井とパウダールームには「緊急SOS」スイッチがあり、急に体調が悪くなった場合などに押して乗務員に知らせることが可能です。

新幹線グリーン車に匹敵する料金、勝算は?

 こうしたさまざまな設備によって「ホテルに泊まる必要がなくなる」(松田副社長)という「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」。片道の価格は、東京〜新大阪間を新幹線「のぞみ」グリーン車で移動するときの代金に匹敵する大人2万円(2017年2月28日までは運行記念割引として大人1万8000円)です。9000円の運賃に、1万1000円の座席料金という内訳になります。

LED照明が鏡を照らすパウダールーム(写真出典:関東バス)。

 2万円という価格について松田副社長は、「新幹線に宿泊料金を含めた場合などと比較して、十分需要があると見込んでいます。移動と宿泊を兼ねられるだけなく、深夜発、早朝着で前後の時間を有効活用できることもメリット。いちど乗ってもらえれば、『移動は高速バス』と思ってもらえるのでは」と自信を見せます。

「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」は2両あり、前が関東バス保有車で、後ろが両備バス保有車(2017年1月11日、中島洋平撮影)。

「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」は、両備グループの中国バス(広島県福山市)が2012年から横浜〜広島間で運行している夜行高速バス「DREAM SLEEPER」のグレードアップ版という位置づけもあります。

「横浜〜広島間の『DREAM SLEEPER』を開発した当時、値段の高い個室は売れないという意見があり、4席が個室(通路側はカーテンで仕切り)、10席が1人掛けの座席という形になりました。しかしいざ運行を開始してみると、個室のほうから売れていき、いまや『乗りたいバスNo.1』とまで言われています」(両備ホールディングス 松田副社長)

 その状況を受けて誕生した全席個室の「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」こそ、「私が当初に思い描いた車両」という松田副社長。豪華設備に、その思いが具現化されています。

【写真】車内にある予約できない「個室」

「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」では車両中央部の階段を下りたトイレの横に、個室の乗務員室がある(2017年1月11日、中島洋平撮影)。