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ネットの動画サイト「FC2」のわいせつ動画配信事件で、サイト創設者の40代男性が事件に関与した疑いが強まったとして、京都府警はわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の疑いで男性の逮捕状を取った。男性はアメリカ国籍を取得し、アメリカに在住しているとみられており、警察は「国際海空港手配」の手続をしたという。

報道によると、男性の逮捕容疑は2013年6月、FC2を実質的に運営していた会社「ホームページシステム」の社長らと共謀し、会員男性(53)がFC2に投稿したわいせつ動画を、不特定多数が閲覧できる状態にした疑い。

FC2はアメリカに本社があるとされているが、警察は大阪市内の関連会社「ホームページシステム」がサイトを実質的に運営していたとみている。ホームページシステム社の社長と元社長の2人は今年4月に逮捕されており、警察は同社から押収した資料などを分析した結果、アメリカ在住の40代男性が関与した疑いが強まったとしている。

「国際海空港手配」という言葉は耳慣れないが、これはどんな手続なのだろうか。国際刑事事件に詳しい中村勉弁護士に聞いた。

●国際海空港手配とは?

「『国際海空港手配』は、対象者の国外逃亡や、国外逃亡中の対象者の帰国を、警察と入国管理局の双方が連携して、水際で食い止めるために行うものです。

海外にいる被疑者を逮捕したい警察にとって、帰国時の入国審査は絶好の機会です。だからと言って、警察官が四六時中、すべての空港や港で待機しているわけにもいきません。

そこで、行うのが『国際海空港手配』です」

手配がされると、具体的にはどういう効果があるのだろうか?

「この手配をすれば、対象者が空港や港の入国審査でパスポートを提示したら、自動的に検知できるようになります。被疑者は、入国管理局によってその場に留め置かれ、駆けつけた警察によって逮捕されます。

今回の男性はアメリカにいるということですが、もし日本に帰国した場合は、空港や港における入国審査で瞬時に判明し、駆けつけた警察官によって逮捕されるでしょう」

●アメリカが自国民を引き渡すかは「微妙」

帰国時以外にも、身柄を拘束される場面はあるのだろうか?

「可能性はあります。

もしICPOによって『国際指名手配』がなされた場合、被疑者の身柄拘束を求める『赤手配書』が発付されます。この『赤手配』がされた場合、ICPO加盟国は、それぞれの国の手続にのっとって、指名手配者の身柄を拘束し、元の国に引き渡すことになります。

今回の男性が滞在しているアメリカは、ICPO加盟国です。したがって、アメリカの警察が赤手配に基づいて対象者を逮捕し、日本に引き渡す可能性がないわけではありません。

ただし、その男性はアメリカ国籍を取得しているということです。アメリカが『自国民』を、日本に引き渡してくれるかどうかは、微妙です。

日本の警察当局もそれを危惧して、国際海空港手配の手続を行った可能性があります。

ちなみに、海外在住中は公訴時効が停止しますので、被疑者が長期間にわたって海外に居続けた場合でも、それによって日本の警察に逮捕されるリスクが消えることはありません」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
中村 勉(なかむら・つとむ)弁護士
東京弁護士会所属。元東京地検特捜部検事。中央大学法学部卒、Columbia Law School卒(フルブライト留学生)、LL.M.(法学修士号)取得。
事務所名:弁護士法人中村国際刑事法律事務所
事務所URL:http://www.t-nakamura-law.com