隔週連載〈中山秀征の語り合いたい人〉。今回のお相手は、世界で待たれるスタジオジブリ最新作『思い出のマーニー』の監督を務めた米林宏昌さん(41)。ジブリの入社試験で試されたのは?

中山「どんなお子さんでしたか。絵は好きでした?」

米林「物心ついたときから絵は好きで、自作の漫画を描いて家族やクラスの人に見せたりしていました。あとは今も読んでいますけど、当時から少女漫画を読んでいました」

中山「少女漫画を?だから女の子の絵が上手なんですかねえ」

米林「少女漫画には、繊細でかわいい女の子の絵がいっぱいあるんですよ。そういうタッチの絵を子どものころからまねしてよく描いていました」

中山「多くの男の子とは違ってたんですね」

米林「アハハ。『北斗の拳』を読まずに『ときめきトゥナイト』とか読んでいました」

中山「面白いですねえ、監督のルーツ。そのころからこうした業界を志して?」

米林「いえ、大学生のとき、アルバイトで地方CMのアニメーション製作に携わったことがあって。自分の絵が初めて動くのを見てこれは面白いな、と」

中山「アニメーションをやるにしても、いろんな会社がある中で、どうしてジブリに?」

米林「募集要項をいろんな会社に求めたんですけど、返ってきたのがジブリともう1社くらいで(笑)。たいていは、公に募集するというよりも、持ち込んでその作品がよければ働けるというものみたいですね」

中山「アハハ。それで、試験を受けて」

米林「たしか第1次選考は絵を2枚提出しました。第2次選考はジブリに行って簡単な試験を受けて。最後の面接には宮崎(駿)監督や鈴木(敏夫)プロデューサーもいました。何を聞かれたかは覚えてないんですが、ただ試験では鉛筆を削らされて、鉛筆と削りカスを回収されたことは覚えています。それが『常識的なことがちゃんとできるか』というテストだったみたいですね」

中山「なるほど。今でも“ジブリといえば鉛筆削り”みたいなことがあるんですか?」

米林「いや、そのつど変わるみたいです。たとえば『すいかを切ってください』とか。人によっては輪切りにしちゃう人もいるんですよ」

中山「ああ、それは困っちゃうね」