中国、レアアースの輸出禁止を検討

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Nathan Hodge

レアアース(希土類元素)は21世紀の技術にとっての生命線だ。これがなければ、スマートフォンもハイブリッドカーも精密誘導兵器もありえないだろう。そして世界のレアアースの大半を採掘している中国は、その戦略的な価値に気付き始めたようだ。[レアアースは17種類の元素のこと。中国(チベット)が世界の産出量の90%以上を占めている]

イギリスの『Telegraph』が報じた記事によると、中国の工業情報化部は、テルビウム、ジスプロシウム、イットリウム、ツリウム、ルテチウムの輸出の完全禁止を検討しているという。また、他のレアアースについても国外販売を制限する可能性があるようだ。

だがまだ慌てる必要はない――米国を拠点とするMolycorp Minerals社が、カリフォルニアの鉱床(写真)でレアアースの採掘を再開する準備を整えている。[このカリフォルニアの鉱床は、1990年代に中国産の低価格なレアアースが大量に入ってきた時に閉鎖されたもの]

それでも今回の件は、戦略的資源が果たす役割を改めて思い起こさせるものだ。特に米国のハイテク軍事にとっては重要だ。私が数年前に『Financial Times』でレポートしたように、米国防総省は、中国による特殊鋼とチタンの需要に対してますます懸念を強めている。特殊鋼とチタンは、車両装甲や航空機の設計などの高性能兵器には欠かせないものだ。

軍用に耐えうるチタンの手頃な供給元を新たに見つけることは、国防総省の研究機関、国防高等研究計画庁(DARPA)の最優先事項になっている。

もちろん、地政学において鉱物資源というカードが果たす役割を理解している国は中国だけではない。ここ数年ロシアは、隣国に少しずつ圧力を加える方法として、天然ガスの供給を使用している。ロシア政府が発見した天然ガスという手段は、経年劣化する核兵器の備蓄より有効な道具だ――誰かを罰したいと思ったら、実際にガスの栓を閉めることができるのだから。

[中国は2006年ころから、レアアースを含むレアメタルの輸出を制限しようとする動きを見せてきたレアアースの世界需要のうち日本の需要は約半分を占めるが、大部分を中国からの輸入品である風化花崗岩に頼っている。最近の研究で、日本国内のマンガン鉱床に花崗岩を上回る割合でレアアースが含有されている事が判明し、新たな資源として注目されている]

WIRED NEWS 原文(English)

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