マイホームが「価値ゼロ」に転落?金利上昇がもたらす”容赦なき格差社会”

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人口減少、空き家の増加、老朽化マンションの問題。

前編『タワマンすら“スラム化”…団塊世代の相続ラッシュで始まる「2030年問題」』では、2030年に向けて不動産市場で起きつつある変化を見てきた。

かつてのように、家や土地を持っていれば自然に資産価値が上がる時代ではなくなっている。これからは、持っている不動産の場所や管理状態によって、資産価値に大きな差が出てくる。

では、すでに住宅ローンを抱えるマイホーム層や、副収入を目的にアパートローンを組んだサラリーマン大家は、どう備えればよいのか。

後編では、引き続き“不動産アニキ”こと小林大祐氏の知見をもとに、金利上昇と物価高の時代に資産を守るための考え方を見ていく。

「駅近なら安心」はもう古い

国土交通省が公表した「不動産業ビジョン2030」では、少子高齢化、人口減少、空き家・空き地の増加、既存ストックの老朽化、働き方の変化など、不動産市場を取り巻く変化が示されている。

テレワークの定着により、住む場所の選び方は以前より多様になった。観光地では外国人需要が伸びる一方、人口流出が続く地域では住宅需要が細っている。

つまり、不動産市場は一枚岩ではなくなっている。「駅に近いから安心」「利回りが高いから有利」といった見方だけでは、判断を誤る場面が増えている。

これからの不動産は、「価値が上がる場所」「下がる場所」「買い手がつきにくくなる場所」に分かれていく。とくに高度経済成長期に開発された郊外のベッドタウンや、産業の空洞化が進む地方都市では、厳しい選別が進む可能性がある。

「これからの不動産市場で強いのは、住む、働く、余暇を過ごすという要素がそろった場所です。都心の再開発エリアや、外国人富裕層の需要を取り込める一部の観光地は、今後も強さを保つ可能性があります。

一方で、需要より供給が大きく上回るエリアの物件は、値段を下げても売りにくくなる。『安くすれば売れる』という考えが通用しない場所も出てきます。なんとなく家を買う、業者に勧められるまま利回りだけを見て地方アパートに投資する。そうした判断は、これまで以上にリスクが高くなります」(小林氏、以下「」も)

返済額が増えなくても、借金は増えるカラクリ

不動産の価値が分かれていくなかで、個人の家計に直接影響するのが金利上昇だ。

長く続いた低金利のもと、多くの人が変動金利で住宅ローンを組んできた。返済額を抑えやすかった一方、金利が上がれば負担が増えるリスクを抱えている。

日本の住宅ローンには、金利が上がっても5年間は返済額が変わらない「5年ルール」や、返済額の上昇幅を1.25倍までに抑える「125%ルール」がある。

ただし、これらは負担を消してくれる仕組みではない。返済額が抑えられている間も、未払い利息が発生する場合があるのだ。加えて金利上昇が長引けば、さらなる負担が家計にのしかかる。

物価高で生活費が増えているなか、住宅ローンやアパートローンの返済負担まで重くなれば、家計の余力は一気に削られる。まず必要なのは、自分の資産と負債を一度、冷静に棚卸しすることだ。

「金利上昇が見えている今、まず考えたいのは、変動金利から固定金利への切り替えや、手元資金を使った繰り上げ返済です。もちろん、全員に同じ答えがあるわけではありません。大事なのは、金利が上がった場合に家計がどこまで耐えられるかを数字で確認することです。

これまでのように、低金利を前提に借入れを増やして規模を広げるやり方は慎重に見直す必要があります。借金を減らし、現金を厚めに持つ。地味に見えますが、これからの不動産投資においては、かなり重要な守り方と言えます」

「売れるうちに手放す」という選択を持て

財務の見直しとあわせて考えたいのが、収益を生まない不動産の扱いだ。

将来的に買い手がつきにくくなるエリアの物件や、維持費ばかりかかる空き家を抱え続ければ、家計への負担はじわじわ重くなる。

固定資産税や都市計画税、火災保険料、管理費、修繕積立金は、所有している限り毎月・毎年かかってくる。たとえ誰も住んでいない家であっても、コストが止まることはない。

都心の老朽化マンションやタワマンも例外ではない。大規模修繕の資金不足が見えてくれば、各住戸にまとまった負担が求められる可能性がある。資産価値が思うように伸びない一方で、維持費だけが増えていけば、家計を圧迫する要因になっていく。

「これからの不動産市場では、『値段を下げれば売れる』とは限りません。需要が弱いエリアでは、価格を下げても買い手が見つからないことがあります。管理組合がうまく機能していない区分マンションや、将来的に人口が減る地方の高利回り物件は、少しでも選択肢があるうちに売却を検討したほうがよいケースもあります。

建物の老朽化と住民の高齢化が進み、管理や修繕の問題が表に出てからでは、売却はさらに難しくなります。先延ばしにするほど、選べる手段は減っていきます」

不安をあおる情報に振り回される必要はない。大切なのは、自分が持っている不動産の状態を正しく把握し、必要なら早めに手を打つことだ。

「いつか市況が戻るかもしれない」と考えたくなる気持ちはわかる。

だが、人口減少が進む地域や、管理状態に不安のある物件では、時間が味方にならないこともある。金利上昇、物価高、人口減少が重なるなかで、不動産を持つ意味は変わり始めている。

国や会社、業者の言葉をそのまま受け止めるのではなく、ローン残高、修繕計画、管理状態、将来の売却可能性を自分で確認する。

資産を守る第一歩は、いま持っている不動産を「本当に持ち続けてよいのか」と見直すことから始まるのだ。

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