中東危機が大きな転換点を迎える中で、日本銀行は政策金利の引き上げに踏み切った。

 長く経験していない金利水準に入るだけに、影響を丹念に分析し、次の一手を検討する必要がある。

 政策金利は0・25%引き上げられて1・0%程度となる。病気の治療で欠席した植田和男総裁を除く8人の政策委員のうち、7人が賛成した。昨年12月以来の利上げで、1995年以来、約31年ぶりの高い水準へと引き上げる。

 日銀は利上げを継続する金融正常化路線を堅持している。追加利上げの判断にあたり、中東情勢の悪化による原油価格の高騰やナフサ(粗製ガソリン)の供給不安を踏まえ、物価上昇と景気減速の二つのリスクを点検してきた。

 現在、企業業績は堅調で高い賃上げも続いている。緩やかな景気回復の基調も崩れていない。米国とイランが戦闘の終結で合意し、ホルムズ海峡の封鎖が解除される見通しとなる朗報も加わった。

 一方で、デフレ心理が強かった時代と比べて物価は上がりやすくなり、価格転嫁も進んでいる。日銀はインフレの抑制を重視して、利上げを決断したのだろう。

 日銀の決定は、為替相場にも目配りしたとみられている。

 欧米の主要中央銀行に比べて低い金利が1ドル=160円前後の円安を招いている面があるからだ。市場では利上げペースが後手に回っているとの見方が根強い。過度な円安を放置し、物価高を助長すれば国民の不満は収まるまい。

 また財政悪化への懸念で、5月には長期金利が2・8%に上昇する局面があった。高市首相は早期利上げに慎重と受け止められてきたが、為替や債券の市場動向を警戒し、受け入れたのだろう。

 ただし、利上げに伴う住宅ローン金利の上昇などは家計の重しになり、中小企業の資金繰り負担も増す。長く未経験の領域だけに、追加利上げに向けては、影響の分析を深めることが欠かせない。

 中東情勢の先行きの不確実性もなお高い。景気の減速につながらないか、注意も要る。

 一方、日銀は政策正常化の一環である国債買い入れの減額を停止することを決めた。2024年7月の月5・7兆円程度から段階的に減らしてきたが、27年4月以降は2兆円程度に据え置く。金利の過度な上昇への配慮も大切だ。

 今後は政府と日銀の連携が一段と問われよう。市場の混乱を招かぬように政府が財政規律に配慮した政策を行うことも不可欠だ。