今年3月、月に2回ほど登山を楽しむグループが埼玉県の山へ出かけた。しばらく登ったところでリーダーが休憩を呼びかけ、取り出したのが熊撃退用のスプレー。近年、熊による被害が相次いでおり、補助金を出す自治体も増え、専門家も推奨している熊撃退用スプレー。だが誤作動防止のストッパーが付いていることが多く、実際に熊と遭遇しても咄嗟に操作できないことがある。説明書きにも「正しい使用方法を確認し、いざという時に備えシミュレーションしてください」と記載されていた。

リーダーは人のいない方向へスプレーを試射。練習は無事終了したかに見えた。しかし次の瞬間、リーダーはふらつき指が発射レバーに触れてしまい、スプレーがメンバーたちに向けて噴射されてしまった。熊スプレーの効果的な距離は3mから5mとされているが、噴射距離自体は長いもので10m以上に及ぶものもある。

誤射を受けたメンバーの中でも最もダメージを受けたのが、目の前にいた女性。目が開けられず、焼けつくような喉の痛みに襲われ、パニック状態に陥った。

熊撃退用のスプレーの主成分は唐辛子の辛み成分・カプサイシン。熊の顔にかかると目や鼻に強烈な痛みを与えて撃退するほどの威力があり、それを至近距離で浴びてしまったのだ。比較的離れた場所にいたメンバーは次第に回復したが、彼女は目が開けられないまま、仲間に付き添われながら下山することになった。

なんとか来た道を戻ると水道があった。仲間がスマートフォンで調べると、コンタクトレンズにスプレーの成分が付着して残ることで目の炎症が悪化する危険があるため外すこと、そして流水で15分以上洗い流すことが応急処置として推奨されていると分かった。女性はコンタクトを外し、必死に目を洗い流したあと、すぐに病院へ向かった。

スプレーの注意書きには、45分経過しても痛みが取れない場合は専門医に相談するよう記されていた。女性は病院で目の洗浄を受け、炎症を和らげる薬を処方された。数日後に症状は改善したが、その時の様子は実際の写真にも残されており、頬やデコルテがかなり赤くなっていた。

なお、熊撃退用のスプレーには練習用のものが市販されており、本物を使う前にそちらで練習することが推奨されている。熊以外に噴射しないよう十分に注意が必要だ。