生産性を高めるには何をするといいか。日本デザイン代表の大坪拓摩さんは「『疲れたからやる』のではなく、『疲れる前にやる』と休む日を先に決めておくことで仕事のペース配分が可能になる。『休んでいる=お金を稼げない』は間違っている」という――。

※本稿は、大坪拓摩『自分で自分を育てる戦略書』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Iuliia Pilipeichenko
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Iuliia Pilipeichenko

■「疲れた」と自覚したらもう遅い

生産的な習慣を構築するとき、忘れてはならない重要な要素があります。

休息もまた、習慣化すべきものだということです。

多くの人は「疲れたら休めばいい」と考えています。ですが、この発想には構造的な欠陥があります。「疲れた」と自覚した時点で、すでにパフォーマンスは相当に低下しているものです。

そこから休息を取っても、回復には時間がかかり、失われた生産性を取り戻すことは難しい。

レーシングカーのピットインを想像してください。車が壊れてから修理するのではなく、壊れる前に計画的にメンテナンスを行う。だからこそ、長いレースを走り切ることができる。人間の身体と脳も同じです。

疲れを感じたとき、多くの人がやりがちなのが「気分転換」と称してスマホを眺めたり、YouTubeを流し見したりすること。一見、仕事や勉強から離れてリラックスしているように見えます。

しかし実際には、脳はまったく休んでいません。画面から次々と新しい情報が流れ込み、脳は休むどころかフル稼働している。作業に使っていた認知リソースを、別の情報処理に振り向けているだけです。

神経科学の研究によれば、脳には「デフォルトモードネットワーク」と呼ばれる機能があり、これは外部からの情報入力がないときに活性化します。記憶の整理、創造的思考、自己内省といった高次の機能は、このデフォルトモードで行われるのです。

ところが常に情報を入力し続けていると、この機能が働く余地がない。つまり、「休んでいるつもり」で実は脳を酷使し続けているわけです。

「疲れたからスマホを見よう」は、休息ではありません。消耗の延長線上にある行為です。

■休息をスケジュール化する

僕が実践しているのは、休息をあらかじめスケジュールに組み込んでしまうことです。たとえば、2週間に一度は意識的に「何もしない時間」を設ける。スマホを別の部屋に置いて散歩に出かけるか、ただぼんやりと窓の外を眺める。

3週間に1回は整体に通って、肉体的なメンテナンスを行う。

これらは「疲れたからやる」のではなく、「疲れる前にやる」と決めています。

この発想の転換だけで、仕事の持続可能性は大きく変わります。「疲れたら休む」では後手に回り続けますが、「休む日を決めておいて、そこに向かって走る」なら、ペース配分が可能になる。マラソンランナーが給水ポイントを把握しているように、休息のタイミングを先に決めておくのです。

応用編として、休息するときにも「これは生産性を高める休息だろうか?」という視点を持ってみると成長速度が速まるのでおすすめです。

写真=iStock.com/koumaru
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/koumaru

■「休む=稼げない」というバイアスを外す

たとえば僕の場合、一息つきたいな、リラックスしたいなと思うときには、社員と話したり会食したりします。僕にとっては仕事から離れてリラックスできる時間になりますし、社員にとっては、普段なかなか会話する機会がない社長とじっくり話ができる時間にもなる。

社員が考えていることがわかるいい機会ですし、自分の悩みを相談できたりもするので、社員からも好評だと聞いています。

組織として見ても、社長と社員のコミュニケーションが深まることで組織力が高まりますから、いいことづくめです。

僕を含めて、人は多かれ少なかれバイアスに影響されています。

休息についても、「休んでいる=お金を稼ぐことはできない」「休んでいる=生産性がなくて当たり前」といったバイアスが働いていないでしょうか。

もしそういったバイアスがあるなら、とにかくいったん休んでみてください。休んでもまた働けばお金は稼げる、休んだほうがかえって生産性が上がる、ということがわかれば、バイアスは書き換わることでしょう。

そうすれば、きっと休息時間の密度も増すはずです。

■敵になるのは「やらされ感」

「読書を習慣にしたい」「英語を毎日勉強したい」「運動を日課にしたい」――そう思っているのに、なかなか続かない。どうしてもやる気が出ない。

そんなとき、ひとつ確認してほしいことがあります。

それは、本当に自分が望んでいることですか?

「本を読んだほうがいい、と上司に言われたから」 「英語ができないと将来困る、と親に言われたから」 「健康診断で、医者に運動をすすめられたから」

こうした「外から与えられた動機」ではじめた習慣は、統計的に見て継続率が著しく低いそうです。心理学ではこれを「外発的動機」と呼び、自分の内側から湧き上がる「内発的動機」と明確に区別しています。

なぜ外発的動機では続かないかというと、心理的に「時間を奪われている」という感覚が生じるからです。やらされ感がある。だから無意識のうちに、サボる理由を探してします。「今日は忙しかったから」「明日は絶対やるから」と、自分を正当化するストーリーを紡ぎ始めるのです。

写真=iStock.com/pain au chocolat
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pain au chocolat

・上司や先輩、社長などの目上の人から「仕事に必要だからやれ」と言われること →外発的動機
・自分の内側から「これをしたい!」と思えること →内発的動機

■「外発的動機」は「内発的動機」に翻訳できる

誰かの「やりたい」だけで生み出されたものには、価値がほとんどありません。誰かのニーズが置き去りになった独りよがりなものが生まれやすいからです。

資本主義経済では、他者や社会にとって価値のあるものを生み出す。つまり他人や社会に貢献することによって自分の価値が高まり、結果として経済的にも精神的にも豊かさを受け取ることができる仕組みになっています。

つまり、内発的動機と外発的動機をうまく掛け合わせることによって、独りよがりではなく本当に価値のある生き方ができるようになるわけです。

ただ、外発的動機だけでは僕たちはなかなか行動を変えることができません。

では、外発的動機しかない場合、どうすればいいのか。

答えは、それを内発的動機に「翻訳」することです。

翻訳のカギは、感情です。

「やれ」と言われただけでは動かない。でも「それをやった先に、自分が手に入れたい感情がある」と気づいた瞬間、人は勝手に動き出します。

僕の話をしましょう。実は僕、子どもの頃からディズニーランドに興味がありませんでした。「お金を払ってまで行きたくない」と本気で思っていた。

ところがある時期、気になっていた女性がディズニー好きだったんです。新しくオープンするエリアや限定グッズの話題で盛り上がれたら距離が縮まる。

「今度一緒に行こうよ」と自然に誘える口実にもなる。そう気づいた瞬間、翌週にはチケットを買っていました。「行くな」と言われても行ったと思います。

■一瞬の思考の切り替えが、人生を分ける

では、何が変わったのか。ディズニーランドという場所は何も変わっていません。

大坪拓摩『自分で自分を育てる戦略書』(かんき出版)

変わったのは、僕の頭の中だけです。「行かされるもの」が「行きたいもの」に変換された。外発的動機が、感情を経由して内発的動機に翻訳されたわけです。

仕事でもまったく同じことが起きます。

「本を読んだほうがいい」と上司に言われただけでは動かない。でも「今抱えているこの問題、あの本にヒントがあるかもしれない」と思えた瞬間、本屋に足が向く。

「運動しろ」と医者に言われただけでは動かない。でも「3カ月後、自信を持って海に行ける体になれる」と想像できた瞬間、ジムに通い出す。

外発的な課題を渡されたとき、「めんどくさい」と反射的に思うか、それとも「これができたら何が手に入る?」と自分に聞くか。

この一瞬の思考の切り替えが、その後の人生を分けるのです。

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大坪 拓摩(おおつぼ・たくま)
日本デザイン代表
美大を中退後、大成建設に入り数々のプロジェクトで現場監督として成果を上げるも退職。その後、独学でデザインを学びデザイナーとして起業。クライアントファーストの姿勢が評判を呼び、起業から半年で月収150万円を達成。2013年、日本デザインを設立。「日本の教育を変える」をミッションに掲げ、オンライン完結型のデザインスクールを開講。受講生は累計5万人を超える。
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(日本デザイン代表 大坪 拓摩)