【6月は国内最大級の配当支払い月】再投資マネーの恩恵が期待される高配当・バリュー株5選とは
6月は国内最大級の配当支払い月だ。3月期決算企業が集中するため、6月下旬には10兆円超の配当が投資家の手元に届くとされる。年初からの約21週間で海外投資家が買い越した日本株(現物)が約10.5兆円、週あたり約5000億円に相当することを踏まえると、数兆円規模の再投資マネーが日本株市場に与えるインパクトの大きさを実感できる。
この恩恵を最も受けるのが、ファンドの再投資対象となりやすい高配当株やバリュー株(割安株)だ。受け取る配当額が大きいぶん、再投資資金も膨らむ。構造的に同タイプの銘柄群への物色が強まりやすい局面が、今まさに訪れようとしている。
川田テクノロジーズ<3443>
6月5日終値1199円 配当利回り(予)3.50%
「橋をつくる会社」というイメージは、もはや過去のものだ。鋼製橋梁・鉄骨を手がける鉄構・土木セグメントを主軸としながら、建設現場の省力化やロボティクス技術の導入を業界に先駆けて進め、製造現場のデジタル化(DX)需要を取り込む複合企業へと変貌を遂げつつある。会社側は2027年3月期の業績を売上高1250億円(前期比8.7%増)と増収を見込む一方、利益面では減益が続くと見込んでいるが、受注単価の上昇を収益へと結びつける体制を整えているだけに保守的な見通しである印象が強い。
株価はPBR(株価純資産倍率)の低い評価が続いている。たしかに資材価格の高騰が一時的な利益圧迫要因として意識されるリスクはあるが、同社は契約価格のスライド制(物価変動に応じて工事代金を改定する仕組み)の適用を進めており、コスト上昇分を順次転嫁することで中期的な採算性を向上させる余地があろう。
産業用ロボット製造販売を含む「ソリューション」事業を傘下に持ち、建設現場の業況に左右されづらい事業の成長が進んでいる。ストック収益基盤の拡充が進んでいる点は心強いかぎりだ。2030年以降に竣工予定の案件も積み上がり始めており、中期的な業績の安定感も配当利回り銘柄としては魅力となるだろう。
大崎電気工業<6644>
6月5日終値1402円 配当利回り(予)3.50%
スマートメーター(電力使用状況をリアルタイムで計測・通信できる次世代型電力計)で国内首位を走る同社は、エネルギー効率化という世界的トレンドをインフラ面で支える縁の下の力持ちだ。電力ネットワークの高度化や、次世代のスマートグリッド(次世代通信電力網)の構築において、同社の計測・制御技術は代替不可能なコアコンポーネントとなる。
電力各社による次世代スマートメーターへのリプレイス(新機種への買い替え)需要は、今後さらに本格化する見通しだ。第2世代スマートメーターは従来品より通信機能が高度化され、スマートグリッド(次世代電力網)構築の要として電力会社への販売が本格化する。こうした構造的な需要増に加え、海外ではオセアニアで次世代型「NEOS」の本格販売も始まり、英国でも出荷増が確認されている。国内外の両輪が回り始めたことで、大型の成長ステージに突入しつつある。
直近の株価下落により、PBRは再び1倍割れ水準が視野に迫っている。国内事業におけるDX投資や人的経費、海外事業における米国進出検討などがコスト増加要因として警戒されているようだ。一方、2027年3月期以降は10期ぶりの営業最高益更新(前回:2017年3月期の76.9億円)が有望視されており、株主還元の拡充姿勢も鑑みた株価の見直し余地は大きいと考える。
日本セラミック<6929>
6月5日終値3750円 配当利回り(予)4.40%
超音波センサーや赤外線センサーを主力とする日本セラミックは、自動車の安全システム(ADAS:先進運転支援システム)や家電・照明向けに高シェアを持つニッチトップ企業だ。主力のADAS向け車載センサーの売上高は足元では伸び悩んでいるが、AI自動運転の普及もあって構造的な拡大局面を迎えていることに変わりはない。自動車産業の生産調整が長期化する懸念はあるが、特定の地域や顧客に依存しない世界分散型の供給網を持つ優位性が盾となるだろう。
近年では、ノイズや画質劣化への対策を施した防犯用途でセンサー新製品の採用が進んでいる。いずれの分野も売上高成長率こそ低いものの、着実な伸びは期待できる。赤外線センサーで世界シェア約6割を握る同社の価格交渉力は強く、中長期的に安定感のあるキャッシュフロー創出が続く公算は大きいとみる。
自己資本比率は85%超という異例の高水準を誇り、有利子負債はほぼゼロ。セラミック技術をベースにした差別化製品により高利益率を維持しており、財務面のリスクは極めて限定的だ。中期経営計画では、持続的なROE(株主資本利益率)成長を重点項目として掲げ、2028年12月期の目標を12%以上と定めている。配当や自社株買いを含めた総還元利回りの拡充が期待できそうだ。
山九<9065>
6月5日終値8573円 配当利回り(予)3.08%
プラントの設計・建設から、操業のメンテナンス、さらには物流までを一気通貫で手がける唯一無二のビジネスモデルが高収益性の源泉だ。鉄鋼や化学といった日本の基幹産業の工場インフラと深く結びついており、企業の設備投資の再活発化や、工場のDX(デジタルトランスフォーメーション)化に伴うリニューアル案件の恩恵をダイレクトに享受できる立ち位置にある。
物流事業と機工(工業設備の設置・保守)事業を2本柱に持ち、特定の製品市況や景気循環の影響を受けにくい収益構造を持っている。産業インフラのメンテナンス需要は景気後退時でも一定の底堅さがあるからだ。安定したフリーキャッシュフロー(使途が制限されない純現金の増減)を生み出す構造は、激動する世界情勢下でも抜群の安定感を誇る。
2027年3月期は売上高6,385億円(前期比1.1%増)、営業利益470億円(同8.8%増)と増収増益への転換を見込み、年間264円(株式分割前換算)への増配予想も発表している。機工事業における春秋の定期修繕(SDM)工事量が想定を上回る局面が生まれれば、業績の上振れ要因となり、さらなる配当増加の余地へつながろう。
ADEKA<4401>
6月5日終値3960円 配当利回り(予)3.03%
食品、化学品、ライフサイエンスという3つの事業を持つ複合企業だが、そのなかで急速に存在感を高めているのが半導体向け特殊化学材料(エッチング材料や絶縁膜形成材料など)だ。生成AIの爆発的な普及に伴い、最先端DRAM(一時的にデータを記憶する半導体)向けの高誘電材料やフォトリソグラフィー材料(半導体回路を焼き付けるための薬液)の数量増が続いている。
会社側は2025年4月に「電子材料」事業を「半導体材料」と改称しており、成長ドライバーとしての位置づけを社内外に明確に打ち出している。まさにAIブームのなせる業だ。2027年3月期は売上高4,530億円(前期比8.7%増)、営業利益468億円(同12.5%増)と増益基調に弾みをつける見通し。配当も年間120円(同8円増)を見込み、配当性向40%以上を目標とする中期経営計画に沿った着実な増配トレンドが続いている。
中東情勢の緊迫化に伴うナフサなど原燃料価格の上昇リスクは存在するが、食品事業のストック収益と半導体材料の高成長が組み合わさった収益構造は、ポートフォリオ全体としての安定性を支えよう。一方、営業利益率、ROEはいずれも二桁乗せが視野に入る。強力なバリュー株の皮を被ったグロース株としても注目したい。
時間軸を7月上旬に移せば、一転して上場投資信託(ETF)の分配金を捻出するための売り需要が強まる季節性も見受けられる。ただ、こうした需給悪の影響が相対的に乏しい中小型にとっては、再投資マネーのシャワーが降り注ぐ季節の到来を存分に感じられる期待は大きい。高配当・バリュー株に吹く追い風に注目したい局面だ。
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