「修繕積立金の値上げは私が死んでからにしてくれる?」…シニアと現役世代の対立が激化《人気の中古マンションの深刻な現状》
新築マンションの価格高騰が止まらない中、中古マンションへの注目が高まっている。
購入を検討する際、多くの人が気にするのは価格や立地、築年数といった条件だろう。だが、中古マンションの価値を長期的に左右するのは、実はそうした条件と同じくらい、所有者同士の合意形成がうまく機能するかどうかにかかっている。
しかしながら、修繕積立金の値上げを一つ決めるだけで、総会が膠着し、何年も話が進まないマンションがある。折からのインフレと工事費の高騰で値上げの必要性は高まる一方なのに、合意にたどり着けないケースが増えているのだ。
なぜここまで揉めるのか。そしてなぜ今、所有者同士の対立が深刻さを増しているのか。
激変するマンションの住民構成
マンション価格の高騰や投資機運が高まったことによって、マンションの住民構成が変化しつつあることは、ご存じの方も多いのではないだろうか。
かつてはほぼ全員が「自分で住む」ことを目的にしていたマンションに、投資目的の所有者が増え、郊外の中古マンションには都心住まいを諦めた若い世帯が流入してきている。住む人が変われば、当然意見の相違も生まれてしまう。結果として、所有者同士の意見がまとまりにくくなってしまっているのだ。場合によっては、意見の相違が大きなトラブルに発展することも少なくない。
一般的には、築年数が経つほど入居時期も購入価格もバラバラな所有者が混在していくため、意見の相違は増えやすい、と予想できる。ただ現場で見ていて強く感じるのは、トラブルに発展するかどうかは「誰が、何の目的でそのマンションに住んでいるか」という側面も大きく関わってくる、ということだ。
例えば「自分で住む人」は、まずは住環境を良くしたいと考えるだろう。一方、投資目的で持っている人は、できるだけランニングコストを抑えたいという思惑を持つ。さらに年金で暮らすシニア世帯は、これ以上の出費を避けたいと願うはずだ。
つまりは生活スタイルも収入も異なる人たちが、一つの管理組合で方針を決めなければならなくなるわけで、合意形成が難しくなるのはある意味で当然の帰結とも言える。
そして合意形成が難しくなるのは築古マンションだけの話ではない。築浅物件でも同様のことが起きている。こうした対立が、今最も切実な形で表れているのが、郊外の中古マンションだ。
“新旧”所有者の衝突
都心のマンション価格が高騰しすぎた影響で、郊外の中古マンションに若い世帯が増え始めている。子育て世代が多く、「子どもを乗せられる大型の電動自転車に対応した駐輪ラックを設置してほしい」といった、暮らしに直結した要望が管理組合に寄せられることも多い。
ただ、改修には当然ながら費用がかかる。これが管理組合の財政を圧迫し、巡り巡って修繕積立金の値上げという形で住民に跳ね返ってくることにもなりかねない。
以前から住んでいるシニア世帯にとっては、自分が使う予定のない設備のために負担が増える話になるわけで、年金で生活している所有者にとっての月々数千円の重みは、決して小さくない。
とあるマンションの総会では、「値上げは、私が死んでからにしてほしい」というシニア住民の声があった、とも伝え聞く。それほどまでに、負担増への不安は切実なのだ。
そしてどちらの言い分にも理がある点も、問題を複雑にしている。
若い世代にとって住みやすい環境を整えれば、マンション全体の魅力が上がり、流動性も高まる。本来、シニア世帯にとっても資産価値を守るという意味ではプラスに働く話でもある。しかしながら、そのために今の暮らしが立ち行かなくなる、というのではまさに本末転倒だ。
警察沙汰になることも…
こういったトラブルをさらに深くしているのが、「感情」の問題である。日頃から廊下で顔を合わせ、挨拶を交わしている住民であれば、意見の相違があっても「あの人の事情もわかる」と受け入れやすい。
だが、最近引っ越してきたばかりの、顔もよく知らない住民から出た要望となると「なぜ後から来た人のために自分たちの負担が増えるのか」という気持ちが先に立ってしまう。こうした小さなボタンの掛け違いが、対立をより深刻なものに変えてしまうことは珍しくない。
感情の行き違いがやがて大きな揉め事へと発展してしまったケースも少なからずある。
総会の場で感情が高ぶり、議長が議案を読み上げようとした瞬間に手が挙がる。内容を聞く前から反対意見が噴出し、一つの議題で時間を使い果たして他の議案は審議すらできない。中には警察が介入するような事態に至ったケースさえあるという。
実際、マンション管理の現場でもこうした相談が寄せられる機会が増えており、不動産市況の急変が新たな課題を突きつけているというのが実態だ。
しかし、このような所有者間の摩擦は、郊外に限った話ではない。都心の大規模タワーマンションでも、異なる構図の対立が生まれている。
つづく記事〈都心タワマンで「修繕積立金の値上げ」を阻む投資勢… “マンションで稼ぎたい人”の大量流入がもたらす「資産価値の下落」〉で、詳しく解説する。
【つづきを読む】都心タワマンで「修繕積立金の値上げ」を阻む投資勢… ”マンションで稼ぎたい人”の大量流入がもたらす「資産価値の下落」
