導かれたジャガーのル・マン優勝 トム・ウォーキンショー・レーシング(1) XJR-15にクリオ V6 50周年に集った名車たち
ジャガーをル・マン優勝へ導いたTWRが50周年
モータースポーツへの興味が薄い読者でも、トム・ウォーキンショー・レーシング(TWR)は、聞き覚えがおありだろう。ル・マン24時間レースのファンなら、1998年と1990年にジャガーを優勝へ導いた、立役者だとご存知なはず。
【画像】導かれたジャガーのル・マン優勝 TWR 50周年イベント 同社が関わったモデルたち 全128枚
1994年に話題を呼んだ、ボルボ850のツーリングカー・レーサーをご記憶という方は多いのでは。四角いステーションワゴンは、英国のサーキットで大暴れした。ル・マン・レーサー、日産R390 GT1の開発を支援してもいる。

2026年に開かれたTWR 50周年イベントの様子 ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
1976年に誕生したTWRは、2002年まで意欲的に事業を展開し、濃密な歴史を刻んだ。複数のロードカー開発へ携わり、V12エンジンのスーパーカーを自ら生み出し、F1にも挑んでいる。そのすべてを率いたのは、トム・ウォーキンショー氏だった。
「彼は公平で素晴らしい上司でした。鮮明に覚えています」と話すのは、元スタッフのポール・デイビス氏。彼は2026年初頭に、創立50周年を記念すべく、盛大なイベントを企画した。今回は、その参加車両や旧スタッフへのインタビューをご紹介しよう。
アルピナC1 2.3
オーナー:ポール・パーマー氏
1970年代後半に、TWRは英国仕様のアルピナを製造する契約を結んでいる。「BMWを購入した後、TWRへクルマを届ければ良かったんです」と振り返るのは、友人から車検切れのC1を1996年に購入した、パーマーだ。当時、1200ポンドだったという。

アルピナC1 2.3と、オーナーのポール・パーマー氏 ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
アルピナ化の内容は、自由度が高かった。ステアリングホイールからバンパー、サスペンション、大容量タンクまで、思い思いにオプションを選べたという。「パーツだけ買う人もいましたが、これは11台が作られたフルコンバージョンの1台」と続ける。
走行距離は16万kmを超えているが、レストアはまだ。「ボディは、剥げたところをタッチアップペンで塗ったくらい。燃料ポンプが故障し、最近は走っていませんでした。子育てで忙しかったんですが、手放さなくて良かったと思います」
サーブ9-3 ヴィゲン
オーナー:ハーヴェイ・マーストン氏
飛行機好きなら、サーブのヴィゲンと聞いて、超音速の戦闘機を思い浮かべるかもしれないが、クルマ好きならTWRが手掛けた9-3の姿が蘇るはず。「約4500台製造されていますが、5ドアは珍しいんです」。オーナーのマーストンが説明する。

サーブ9-3 ヴィゲンと、オーナーのハーヴェイ・マーストン氏 ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
「サスペンションをTWRが仕上げています。FFでターボエンジンなので、トルクステアが強烈なんですよ。でもサーブが好きなら、手懐けられるはずです」。当時、BMW M3のライバルともいわれた理由は、ボディの内側に潜んでいる。
トランスミッションにダンパー、ステアリングラックを改良し、エンジンは高圧縮比化で強化されていた。「走りはいかにもサーブ。4年ほど普段の足にしていましたが、驚くほど信頼性は高いんです。サーブが忘れ去られないよう、乗り続けたいと思います」
ルノー・クリオ(ルーテシア)V6
スコット・グランダー氏
ハッチバックの真ん中に、V6エンジンが押し込まれたクリオ V6。グランダーは、このモデルの専門ガレージを営んでいるが、以前はMGメトロ 6Rの整備にも携わっていたとか。彼が乗ってきたブルーの1台は顧客のクルマで、実は特別な仕様でもある。

ルノー・クリオ(ルーテシア)V6と、スコット・グランダー氏 ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
「TWRの25周年にトムさんへ贈られたクルマで、車体番号はTom00001なんですよ。内装はレザーとアルカンターラで、シートはルノー・スポール・スパイダーのもの。実は、TWRは当初この内容でルノーへ提案したんですが、予算オーバーでした」
「ボディはフランス人のアクセル・ブロインさんがデザインしましたが、シャシーはTWRが開発しているんです」と彼が続ける。このクリオV6はワンオフで、2008年までTWRのコレクションとして保管されていたそうだ。
ジャガーXJR-15 R9R
オーナー:アンドリュー・メイナード氏
ジャガースポーツ社は、ジャガーとTWRによる合弁事業として運営されていた。だが、ル・マン優勝のグループCカー、XJR-9をベースにした公道用モデルの開発をTWRが決定した際、パートナーの上層部へ伝えることを忘れていたらしい。

ジャガーXJR-15 R9Rとオーナーのアンドリュー・メイナード氏 ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
その時既に、ジャガーはXJ220の開発を進めていた。ウォーキンショーはなんとか説得し、プロジェクトは承認。1990年から1992年にかけて、XJR-15は僅か50台が生産されている。しかもメイナードが所有するのは、2台だけ作られたR9Rだ。
彼が購入したのは2013年。レストアを始めて数か月後に、R9Rだと気付いたらしい。「塗装を剥がすと、ルーフがシルクカット・カラーで塗られていると判明したんです。内装はリベット留め。クラムシェルを持ち上げると、NACAダクトの跡も残っています」
トム・ウォーキンショー・レーシング(2)では、元スタッフによる秘話をご紹介したい。
