「プレゼンが怖い」「大事な場面で失敗したら…」緊張に弱いのは脳のクセ…?脳科学者が語る「不安を払拭する4つの方法」
「人前で思わず怒りが爆発してしまった」「大事な場面で『失敗したらどうしよう』とパニックに陥ってしまった」といった経験はありませんか。公立諏訪東京理科大学特任教授である篠原菊紀先生は「脳は感情に乗っ取られやすく、ダマされやすい側面がある」といいます。<脳のクセ>を見抜き、うまくコントロールするには、どのように考えたらよいのでしょうか。そこで今回は篠原先生の著書『脳を乗っ取る感情(アイツ)からあなたを守る方法』より一部を抜粋し、「感情」から身を守る方法をお届けします。
【書影】コントロールできれば、脳が自己肯定的に働き出します。篠原菊紀『脳を乗っ取る感情(アイツ)からあなたを守る方法』
* * * * * * *
不安を払拭する4つの方法
脳にはさまざまなクセがあり、「緊張しやすく、緊張に弱い脳」が存在します。そこを受け入れつつ、できる対処法を考えていきましょう。
人前で話すことを心理学では「パブリック・スピーチ」といい、古くから典型的なストレス要因として研究が行われてきました。
簡単に手をつけられるのが「不安を外在化する」という方法です。まずは、それをご紹介しましょう。
対処法1 不安を書き出す
不安を書き出すのはとても効果的です。もし本番のときに緊張したら、とか、失敗したら、とぐるぐる考えても問題解決なんてできません。その思いを外に取り出す=外在化すると、脳のメモ帳が空いて、使いやすくなります。「緊張するなぁ。うまくプレゼンできなかったら他社に仕事をとられてしまうから責任重大だ」「おなかが痛くなるかもしれない」…なんでも気にせず書き出しましょう。身近な人に話すことも、立派な「外在化」です。
対処法2 キャラに乗せる
書くことはできても、弱みをそのまま人に話すなんてプライドがかえって傷つく気がする、という人がいるかもしれませんね。その場合はキャラに乗せるのがお勧めです。自分の人間性と切り離すことで、外在化がスムーズにいきます。
たとえば、漫画『鬼滅の刃』の超ヘタレキャラの我妻善逸くんになりきって「死ぬ死ぬ死ぬ、プレゼン怖い!」と大げさにビビってみてはどうでしょう。のび太になって「ドラえもーん!」と泣きついてもいいでしょう。
なんだか楽しくなりませんか。緊張や不安を押し込めようとしているときより、心が解放される感じがしてきます。
外在化に関しては、シカゴ大学で実験(*1)が行われています。「これから試験をします」とストレスをかけて、試験前の10分間に自分が抱えている試験に関する不安を書き出す、という作業をさせると、不安を書き出さなかったグループに比べて、不安を書き出したグループはテストの成績が上がった、というものです。
試験もワーキングメモリが必要とされますが、プレゼンでも十分応用できるのではないでしょうか。不安はとにかく外に出すことで脳のワーキングメモリの負担を減らせるのです。
*1 Science. 2011 Jan 14;331(6014):211-3.
対処法3 「私は興奮している!」と言い換える
「不安を興奮として再評価すると、パフォーマンスが向上する」こともわかっています。「プレゼン怖い」と不安にフォーカスしたのとはまったく反対のアプローチです。
不安な状態だと心臓がドキドキしますね。それを「私は興奮している…わくわくしている…」と言い換えるんです。それだけでネガティブな不安がポジティブな興奮に置き換わり、実際にパフォーマンスが向上したという報告があります。あるいは、命令形にアレンジして「興奮しなさい、わくわくしなさい」という方法でも有効です。

(写真提供:Photo AC)
つまり、脳ってダマされやすい側面があるのです。ドキドキする心拍を「うおー、興奮している」と受け止められれば、よっしゃ、と思えるのではないでしょうか。
こういった外在化は効果的です。対処法2で説明した「キャラに乗せて不安を言葉にする」というのは、不安や緊張を自分の人格と一体化させてしまうとコントロールしにくくなるからです。キャラに乗せてみると、それを観察する目が生まれます。観察できれば、コントロールが可能になるのです。
対処法4 「緊張くん」を観察する
たとえば、こんな考え方はどうでしょう。プレゼンに失敗するのは自分の中に複数いるキャラの一つの「緊張くん」が邪魔するからだ。緊張くんはいつも元気なわけじゃない、エサになるのは「緊張」だ。緊張すると緊張くんはやたらと強くなる。ならば緊張くんが苦手なものもあるはず、と観察するのです。
とにかくよく眠っておくと、緊張くんは元気がなくなるかもしれません。身近な人に褒めてもらう、終わった夜にとっておきのウイスキーを飲む、などのご褒美があると緊張くんは弱くなり、反対に、元気に話せる「元気くん」が育つかもしれません。
実際に、引きこもりの人などのカウンセリングの場ではこういう宿題を出すのです。「これから2週間の間に、緊張くんのエサになるもの、苦手とするものを書き出しましょう。ただ書き出すだけでいいですよ」、というふうに。すると、自らの人格からは分離できるので、感情のコントロールがしやすくなるのです。不安を「キャラ化」して観察するだけで苦しい状況を乗り越えられることもあります。
これらの「緊張対策」は、どれもすぐにでも始められるものです。ぜひ試してみてください。
※本稿は、『脳を乗っ取る感情(アイツ)からあなたを守る方法』(日経BP)の一部を再編集したものです。
