大学生ドラフト候補に“関西旋風” 「ドラ1」も狙える3投手にスカウトが熱視線
今年の大学生投手のドラフト戦線で、関西勢の存在感が増している。
有馬伽玖(立命館大)、宮原廉(近畿大)、米沢友翔(関西大)。関西学生リーグでしのぎを削る3人は、いずれも1位指名を狙える存在だ。10月のドラフト会議へ向けて、今後の評価を大きく左右する可能性がある。【西尾典文/野球ライター】
最大の武器は変化球
有馬は、3人の中で最も早くから高い評価を得てきた左腕である。愛工大名電時代には2年夏、3年夏に甲子園へ出場。3年時はエースとしてチームの準々決勝進出に大きく貢献した。立命館大進学後も早くから登板機会をつかみ、3年春には最優秀投手を受賞。大学日本代表として日米大学野球選手権にも出場している。

評価をさらに高めた舞台は、昨年秋の明治神宮大会だった。初戦の東農大北海道オホーツク戦で6回からマウンドに上がると、大会記録となる10者連続三振を奪い、4イニングをパーフェクトに抑える圧巻の投球を見せた。続く明治大戦は6回2/3のロングリリーフで無失点。全国の舞台で、ドラフト候補としての評価を一段引き上げた。
そんな有馬の最大の武器は変化球だ。担当スカウトはこう話す。
「ストレートでも変化球でも腕の振りが変わらないのが長所です。下級生の頃はスライダーが中心でしたが、昨年は落ちるボール、ツーシームが特に良くなりました。打者から見ると、ストレートだと思って振りにいったボールが鋭く落ちるのでなかなかバットを止めるのが難しい。ワンバウンドのボールで空振りを奪えるだけでなく、相手が見極めようとしてきたらストライクゾーンにも落とすことができる。この春は少し制球を乱していましたが、徐々に調子を上げてきました。良い時のピッチングは今年の大学生の中でも1,2でしょう」(パ・リーグ球団スカウト)
力感なく投げているのにボールが強い
今年最初の登板となった4月12日の近畿大戦では、指にできたマメの影響もあり、1回を投げて被安打3、4四球、4失点で降板。まさかの乱調となった。その後は先発として試合を作っており、高い評価は不動と言えそうだ。
右投手では、宮原に関西ナンバーワンの呼び声が高い。崇徳高校時代は甲子園出場こそなかったものの、中国地区ではスカウトの間で評判になっていたという。近畿大では2年秋までわずかな登板にとどまっていたが、昨年先発に定着。春は3勝0敗、秋は5勝0敗と見事な成績を残した。
昨年12月に行われた大学日本代表候補合宿では、多くのスカウトの前で強烈なインパクトを残した。実戦形式のシート打撃で打者4人を相手にパーフェクト、3奪三振と圧倒。寒い時期にもかかわらず、ストレートは最速151キロを計測している。
宮原が高く評価される理由は、現在の実力だけではない。将来性への期待も大きい。
「去年から今年にかけて一気に良くなりました。力感なく投げているのにボールが強い。ここ一番で力を入れた時のボールの勢いは大学生でもトップクラスでしょう。体つきもしっかりしてきましたが、持っている力はまだまだこんなものではないと思います。プロに入ってしっかり鍛えたらもっと良くなるでしょう。1年目からそれなりに投げるかもしれませんが、本当に楽しみなのは2年後、3年後ですね」(セ・リーグ球団スカウト)
今春はリーグ戦初黒星を喫し、チームは惜しくも優勝を逃したが、個人としては4勝2敗、防御率1.51と結果を残し、2季連続のベストナインに輝いている。スケールの大きさを重視する球団なら、最上位で評価する可能性もありそうだ。
ストレートの質が素晴らしい
有馬、宮原の2人に、この春一気に肩を並べる存在へ急浮上したのが米沢だ。石川県珠洲市の出身で、金沢高校時代は全国的に無名の存在だった。関西大進学後は1年秋にリーグ戦デビュー。ただ、その後は怪我もあり、昨年秋まで通算0勝に終わっている。
ところが、今春は初先発となった4月4日の近畿大戦で7回1失点と好投。同11日の関西学院大戦では被安打1、13奪三振で無四球完封という圧巻の投球を見せ、リーグ戦初勝利をマークした。その後も先発として安定した投球を続け、チームを優勝に導き、MVPに輝いている。
「ストレートの質が素晴らしいです。手元で強く、空振りを奪える。大学の先輩である金丸夢斗(中日)とまでは言いませんがコントロールも安定しています。しっかり両サイドに投げられて、ストライク先行でテンポよく投げられます。変化球はプロではもう少し改善する必要がありそうですが、これだけストレートが良くてコントロールも安定している左投手はなかなかいない。1位の可能性も高いでしょう」(セ・リーグ球団スカウト)
初の全国大会となった全日本大学野球選手権では、初戦で北海学園大を相手に8回を投げ、被安打3、1四球、10奪三振で無失点。大勢のスカウトの前で強烈にアピールした。
有馬、宮原、米沢の3人は、それぞれ歩んできた道が違う。一方で、関西学生リーグから1位候補として浮上してきた点は共通している。10月のドラフト会議で、この3人がどのような評価を受けるのか。大学生投手の勢力図を占ううえで、大きな注目ポイントとなりそうだ。
西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
デイリー新潮編集部
