火種 / キタニタツヤ from CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2026

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 ボカロPやバンドマンとしてだけでなく、幅広いカルチャー由来のルーツを強みとするアーティスト・キタニタツヤ。直近でも、今シーズン放送のTVアニメ『日本三國』(TOKYO MXほか)オープニングテーマ「火種」やTVアニメ『NEEDY GIRL OVERDOSE』(TOKYO MXほか)エンディングテーマ「れびてーしょん」、『大ゴッホ展 夜のカフェテラス』東京展イメージソング「肺魚」ほか、多彩なタイアップを手がけているのは周知の通りである。

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 また、キタニは自身の曲を歌うシンガーとしてのみならず、外部アーティストへの楽曲提供やラジオパーソナリティを務めるなど、カルチャーとジャンルの壁を超えた活躍でも多くの話題を集めてきた。現在担当している『キタニタツヤのオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)は自身の精神、体力面での負荷を理由に6月末での終了が発表されたが、終了を惜しむ声と同等か、もしくはそれ以上に彼の体調を気遣う声も多く寄せられていた点が印象深い。

■界隈を超えたゲスト陣、ジャンルを越境する知識とカルチャーへの愛

 彼のアーティストとしての側面は、これまでも本人の口からも語られてきたが、ラジオパーソナリティとしての活動は、より“キタニタツヤ”という人物そのものを構成するバックボーンにも触れられる貴重な機会となっていたように感じる。そんな彼独自の色が特に顕著に表れたのは、驚くほどに幅広いジャンルから招かれてきた歴代の番組ゲストラインナップからも垣間見ることができる。

 業界を同じくするミュージシャンのみならず、番組初ゲストの又吉直樹に始まり、お笑い芸人·春とヒコーキ、QuizKnock・伊沢拓司や東海オンエア・としみつにWEBメディア「オモコロ」元編集長·原宿などのYouTube活動に重きを置く面々、そして声優・青山吉能やラジオプロデューサー・佐久間宣行ほか、ジャンルを超えた著名人が大勢出演。さらに、番組の恒例のコーナーでもあるベイブレード対決にちなんで、ベイブレード開発担当・マスターブレーダー堀川や、フリーBGM素材作曲家・しゃろう、漫画原作者・クワハリにライター・にゃるらなど、本来ならばややスポットの当たりにくいポジションで活躍するクリエイティブなゲストも多く、ラジオでのトークをきっかけに新たな世界への知見を深めたリスナーも多くいたに違いない。

 招いたゲストの多彩さは、いわば彼が持つ知識の幅広さ、そして多方面のカルチャーへの興味やリスペクトにも直結している。多様な物事、多様な人々の存在を知るがゆえの受容性の高さ。それこそが彼個人の、ひいては“アーティスト・キタニタツヤ”が生み出す楽曲群の魅力の根源であり、多彩な分野への楽曲提供・タイアップに繋がっていることも想像に難くないだろう。

■中島健人との絆、マイノリティな趣味嗜好を貫く飾らないスタイル

 また同時に、ラジオの魅力のひとつが、彼の持つ“毒”だったというリスナーも少なくないはずだ。番組では定期的にさまざまな物事への“アンチポップス”を提唱し、自身の立ち位置やバックボーン、ないしは価値観、趣味嗜好がマイノリティ寄りであることを客観的に認めながら、時にはマジョリティに対する妬みや僻み、悔しさを正直に口にする一幕も多かった。だが、その毒を不快に思うどころか、むしろ心地よさを感じつつ耳を傾けられたのは、彼の“素直さ”が大きなファクターなのかもしれない。トレンドに準じた表現をするならば、“ひねくれ者”。だが、そこで冷笑しないのがキタニという人である。自虐をベースとしたファニーさやアイロニーで、自らの持つマイナスな感情も、近しい境遇に立つ人々の共感を誘う表現へと変換して発信する。そんな発言の端々に、彼の自頭の良さを感じ取ったリスナーもきっといたと思う。同時に、マイノリティであるがゆえの葛藤や悩みも、月日が経てばいつか必ず昇華されると現在進行形で体現している。彼の一貫した飾らないあっけらかんとしたスタイルに、背中を押されたり支えられ、元気をもらったという人々も大勢いると思う。

 先日、6月1日深夜の放送回は、特にそんな彼のラジオにおける魅力的な側面が存分に示されていた。本番組最後のゲストとして登場した中島健人は、ユニット・GEMNの相方として、これまで計3回にわたって番組に招かれており、リスナーにとってもはやお馴染みの存在だ。結成当初は、さまざまな場面で活躍するアイドルとネットカルチャー出身のクリエイターという真反対の属性にも思えるコンビだが、活動を経てすっかり打ち解けた仲に。この日は終始気の置けない彼らの関係性が電波越しに感じられ、中島に勧められたジムにキタニがそのまま入会した話や、大きな話題となったレディー・ガガ来日公演へともに足を運んだ日の裏話、そして「二人でやり残したことをやりきる」べくカラオケでのデュエットを行い「青春アミーゴ」を歌うなど、いつも以上に屈託のないキタニの言動が印象的な回となっていた。

 月曜日、深夜3時。1週間の始まりに欝々とする人、あるいは曜日/時間を問わずタスクに勤しまねばならない人。世間において多くの人間が寝静まる時間のラジオパーソナリティとして、改めてキタニタツヤというアーティストは実に適任な人選だったように思う。今夏には自主企画対バン、そして秋にはニューアルバム『DEKAI』『PURE』の2枚同時リリースも控える。今後も“アンチポップス”を掲げながら毒を携え歩む、彼の行く先を期待を持って追い続けたい。

(文=曽我美なつめ)