旧姓・伊藤柚姫さん

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 人生いろいろ、家族もいろいろ、幸福の形もいろいろ。近年、「結婚がゴールではない」という声も大きくなりつつあるとはいえ、ゴールインした二人には幸せになってほしいと思うのが人情というものだろう。

 そして、そのゴールに到達するまでには、十人十色のドラマがあるのは言うまでもない。目下、幸せに包まれているカップルにエールを送りつつ、出会いから現在までを根掘り葉掘り聞いてみる「令和の結婚事情レポート」。

 今回登場していただくのは、今年1月に入籍して3月に公表した、共に競輪選手の土井慎二さん(29)と旧姓・伊藤柚姫(ゆずき)さん(23)だ。

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少しキュンとして

 プロポーズに際して慎二さんは、柚姫さんの実家の家訓を見事に体現し伊藤家を驚かせたというが……。

旧姓・伊藤柚姫さん

 2024年5月、日本競輪選手養成所(静岡県伊豆市)に入った二人。同期は女子約20人を含む約90人。高校時代に2度甲子園に出場し、大学野球でも活躍した慎二さんを彼女は「大きくてちょっと怖そう」と感じたのが最初の印象。

 彼は「小っちゃいなぁ」と彼女を見て思ったが、それ以上に「眉上パッツンの前髪がインパクト大」だった。柚姫さんは2歳から始めた格闘技を脳の病気により高校1年で断念したが、前向きな気概をもって競輪に身を投じた。髪形はそんな思いの表れだった。

 秋。練習で腰を痛め、医務室に向かう彼女は慎二さんから「柚姫、大丈夫?」と声をかけられる。初めての会話なのに下の名前で呼ばれ、ドキッとしつつ「大丈夫です。ありがとうございます」と答えた彼女は少しキュンとしていた。その後、食堂脇の広場で少しずつ喋るようになり、互いに「波長が合う」と感じた。

 卒業間近の25年2月、彼が「卒業したらご飯行こうか」と誘った。彼女は「いつ空いてますか」とスケジュール帳を持ってきて「この日空いてます」と即答。3月の卒業後に大阪で初デートと相成った。

 慎二さんはデート前にきちんと交際を申し込もうと、卒業翌日に柚姫さんに電話。「付き合おうか」と問うと、彼女は「ホンマですか? いいんですか? お願いします」と喜び、気合いを入れて普段履かないヒールで初デートへ。天王寺動物園、通天閣、大阪城、道頓堀……。歩き回って靴擦れに苦しむも、楽しさが勝った。

「普通じゃあかん」

 プロとなり、それぞれ地元の岡山、兵庫に所属。二人の誕生月である11月に初めての旅行で淡路島へ。いつも遠征で忙しいだけに、旅館でゆったり楽しんだ。

 慎二さんからの誕生日プレゼントは普通の紙袋に入っていたが、ブランドものの高級財布が出てきて彼女はびっくり。「気分を一度落としておいて上げる」という彼の作戦が大成功した。

 今年1月からの同居を前に、昨年12月21日に両家の顔合わせが行われた。柚姫さんの弟でプロボクサーの千飛(せんと)さんのTシャツにも刻まれる〈普通じゃあかん〉が伊藤家の家訓。それを実践しようと決めていた慎二さんは、乾杯の前に「すみません、ちょっといいですか」と、おもむろに立ち上がった。

 そして、結婚指輪を手に「結婚してください」。「え〜!?」と先に叫び声を上げたのは柚姫さんの父だが、彼女も驚いた。「何て言ったらいいん?」と動揺を隠せない。彼の「ええんやったら“お願いします”って言うて」との言葉に従った。

 柚姫さんの父は「俺やったらできひんわ〜」と、普通じゃない彼の行動を喜んだ。野球経験があり、甲子園出場のすごさを知るだけに「(娘を)お願いします」と、何度も言いながら上機嫌だったという。

にぎやかで笑いの絶えない家庭

 1位を目指す競輪選手として1月11日の入籍を考えるも、先負だった。そこで「伊藤」の1月10日に。彼女が申請した岡山支部への移動と「土井柚姫」への登録名変更が認可されたのを機に結婚を公表した。

 彼は野球だけでなく、スイーツ作りや折り紙なども得意で、最初に彼女に振るまった料理はローストビーフだ。いずれ子どもができても運動部の厳しさを知るだけに「自由にのびのびと」という思い。一方で柚姫さんは「スポーツの道を勧めてあげたい」。そこは今後話し合っていただくとして、いつもにぎやかな伊藤家に憧れる慎二さんが言う「にぎやかで笑いの絶えない家庭を」との点に彼女も異存なし。楽しさもまた〈普通じゃあかん〉かも。

「週刊新潮」2026年5月28日号 掲載