【バービー】バービーが「専業主婦だった76歳の母」が働き始めて知った「隠されていた能力」
フォーリンラブのバービーさんが芸人として、ひとりの女性として、モヤモヤしたことや疑問に思ったことなどと向き合い、自らの言葉で本音を綴っているFRaUweb連載「本音の置き場所」(毎月27日更新)。今回は、本連載でこれまでに何度も登場しているバービーさんのお母さんについて。「お父さんに聞いてみて」が口癖で、何事も自分で決められない自信のない母に、10代の頃は苛立つこともあったというバービーさん。そんな姿を見ていたこともあり、お母さんに対して過小評価する部分もあったそうですが、近ごろお母さんの新しい姿と大きな変化を見たといいます。
母をリーダータイプだと思ったことはなかった
リーダーと聞いて、どんな人を思い浮かべるだろうか。
先頭に立ってぐいぐい引っ張る人。
決断力があって、声が大きくて、バリバリ働く人。
少なくとも私は、自分の母親を“リーダータイプ”だと思ったことはなかった。だけど最近、その母・順子76歳に、とてつもない統率力を感じている。
母の順子は、かにめしで有名な北海道の長万部の酪農の家に生まれた76歳。得意料理はいかめし。
7人兄弟の末っ子で、生まれたとき息が浅かったので長くは持たないかもとすぐに出生届を出されなかったらしい。だが意外にも生き延びたので、1ヵ月ほどたってから出生届を提出されたという。本当の誕生日は不明だそうだ。
出生秘話とは裏腹に、かなり逞しい子に育ったようだ。小学校の自転車遅乗り競走で優勝したことのある平衡感覚の持ち主で、青春時代は下宿して通っていた裁縫学校を抜け出し、ダンスホールに繰り出していたらしい。
そんなやんちゃな母だが、親友の親戚にあたる父・孝雄のアタックと、村中の強力な後押しに絆され、故郷から離れた栗山町に嫁ぐ。
「なんでお父さんと結婚したの?」と聞いたら「潮時だったから」と答える冷静さも持ち合わせているうお座。うお座はロマンチストな星座で有名なはずなので、やはり本当の誕生日はそのひとつ前のみずがめ座かもしれない。当時10代だった私は少しがっかりしたが、今思えばあれも母らしい答えだった。
「誰かを支える側の人」
順子は、もともと強い女性だったのかもしれない。だけど、娘である私は、その強さに気づけなかった。
義両親と同居しながら4人の子どもを産み育てた母からは、自我というか、「私はこうしたい」という輪郭を感じたことがなかった。
とはいえ、母はずっと家の中だけにいた人でもない。パートにはよく出ていて、当時の言い方でいうと「外に出るお母さん」だった。働くこと自体は好きだったのだと思う。
だけど、「父さんが働きに出るのを許してくれた」と話す母を見ていると、私はどこかで、母を“鳥かごの中の鳥”のように感じていた。
父をたてて、子どもには自分のやりたいことをやりなさいと背中で言い、毎日おいしいご飯を作る。
そんな、“誰かを支える側の人”という印象だった。少なくとも私は、そこに母のリーダーシップを見たことはなかった。
「家庭」という組織を回すことが「能力」として数えられていなかった
だけど今思えば、あの頃から母はずっと、人を見て、空気を読み、家庭という小さな組織を回していたのかもしれない。
ただ、それは「キャリア」や「能力」として数えられることはなかった。
そんな母が、昨年から変わった。いや、私に見えていなかったものが見え始めたと言ったほうが正しいのかもしれない。
これまでもこの連載で何度か触れてきたが、約8年前、私は幼馴染から古民家を譲り受け、家族でDIYや改修を重ねてきた。その古民家が昨年、ようやく民泊として動き始めた。
ネット上での予約管理など、運営面は宿泊管理業の資格を取得した私の夫が担っている。一方で、現地の清掃管理を仕切っているのは母だ。
「自分で稼ぎたい」
既存の民泊プラットフォームを利用しているため、基本的に宿泊客と直接会うことはない。
母に清掃管理をお願いしたきっかけは、母の「働きたい」という一言だった。いや、きれいに言いすぎた。「自分で稼ぎたい」だった。
孫にすぐお小遣いを渡してしまうような人なので、私はどこか微笑ましく聞いていた。だけど正直、母を少しなめていたのだと思う。ほとんど社会人経験のない母が、仕事を回せるとは思っていなかったからだ。
ところが、蓋を開けてみると驚いた。母は見事に姉や孫たちを“こき使って”、いや、的確に指示を出していた。
76歳の母が完全に「現場を回す」
夫から共有されたマニュアルは母の頭にすべて入っている。次の宿泊客の人数通りのタオルや歯ブラシをセットするし、スリッパの除菌をする。その他にも、やることは細かいところまで、容赦なく夫がマニュアル化した。
足腰は弱っているのに、杖で「あれ取って」「そこ確認して」と姉や孫たちに指示を飛ばし、現場を回していく。甥っ子たちも清掃を手伝うことがあるのだが、その采配がまた絶妙なのだ。
やる気のある子には、その子がもっと頑張りたくなるような褒め方をする。逆にサボり気味の子には、責めたり比較したりしない。「じゃあ、ここまでやってみようか」と、小さな目標を渡す。そして、それぞれ得意な場所に配置する。細かな確認も怠らない。
「日によっては洗濯が間に合わない日も出てくるからタオルの枚数を増やしたほういいわぁ」と、現場からの報告も抜かりなくしてくる。
気づけば、76歳の母は、現場を完全に回していた。身体は思うように動かなくても、口と頭でチームを育て、業務を回している。
私はその姿を見ながら、“プロジェクトリーダー”という言葉を思い浮かべていた。
「義理の息子で上司」の夫との絶妙な距離感
私自身、社会人経験が豊富なわけではない。だから偉そうには言えないのだけれど、人を育てることや、やる気を引き出すことが、どれほど難しいかは今なら少しわかる。
先日、母は上長にあたる夫に向かって、「ずっとこんな感じでやってるけど、大丈夫かい?」と、さりげなく人事評価を求めていた。
この場合、指示を出す立場にいるのは夫だ。とはいえ、相手は娘の夫でもある。少しくらい甘えたり、なあなあになったりしてもおかしくない関係性だと思う。
だけど母は、そこに嫌味のないリスペクトをちゃんと滲ませる。義理の息子としてではなく、“上長”として接しているのだ。その距離感の取り方のうまさにも、私は驚かされた。
私はずっと、どこかで母を過小評価していたのだ。4人の子どもを育ててきたとはいえ、「仕事ができる人」ではないと思い込んでいたから。
でも、大間違いだった。
母は、“肩書きなしでずっと管理職をやってきた人”だったのだ。
◇後編【海外客からのクレームに…バービーが専業主婦だった76歳母の働きを見て「ただの主婦」のとんでもない可能性を知った話】では、海外からの長期宿泊者のクレームに対応したエピソードを含め、76歳の母・順子への驚きをさらに伝えます。
【後編】海外客からのクレームに…バービーが専業主婦だった76歳母の働きを見て「ただの主婦」のとんでもない可能性を知った話
