《25億円ビルの図面入手》元照ノ富士の新部屋建設巨大プロジェクト 土俵回りに78席の観覧席がある舞台のような構造 相撲協会はインバウンド向けビジネスを問題視か
5月場所の土俵が2横綱1大関の不在となるなか、角界関係者の間で注目されるのは場所前に暴力問題の処分が下された元横綱・照ノ富士の伊勢ヶ濱親方の動向だ。新部屋建設の巨大プロジェクトに新たな動きが出てきた。
建築物の用途は〈興行所、店舗、事務所、寄宿舎、住宅〉
相撲の聖地、東京・両国で"建設予定の相撲部屋"について近隣住民への説明会が開かれたのは、4月末のことだ。説明会に参加した住民のひとりはこう話す。
「地上7階建てのビルは8月に着工予定で、その直前に再度、説明会を開くという話でした。建築主は出席せず、近隣業務窓口の担当者だという人物による説明で、具体的な話はほとんどなかった。1階が相撲部屋の稽古場、2〜4階はレストラン、5〜7階が相撲部屋の寄宿舎と親方の住居ということでした。ただ、伊勢ヶ濱部屋が入るという話が出ていることについての質問には、"部屋の名前は現時点で明かせない"との説明をされました」
2月下旬に判明した弟子の伯乃富士への暴力問題で、4月に入って相撲協会から2階級降格と報酬減額の処分を受けた伊勢ヶ濱親方。その新部屋建設プロジェクトの話は昨年から持ち上がっていた。若手親方が言う。
「照ノ富士は昨年6月に継承した部屋を江東区毛利から墨田区立川に移した。貴景勝(元大関、現・湊川親方)の住む旧二十山部屋の建物の隣にあるマンションで親方や力士が生活し、稽古場は車で5分ほど離れた隅田川沿いの倉庫跡にある。ここは仮住まいとされ、新しく部屋を建てる計画が進められていた。2025年1月には両国に約440平方メートルを借地で確保し、飲食店などのテナントが入る複合ビルとして借地代や建築費が総額25億円規模になるといわれてきました」
当該の土地の賃借権を持つのは「両国四丁目プロジェクト」という法人で、2024年10月の設立時の代表は伊勢ヶ濱親方夫人だ。ただ、2025年1月の土地賃借権の設定以降、計画が表立って進むことはなく、現場は更地のままだった。
それが処分後の4月15日には現地に〈建築計画のお知らせ〉の看板が掲示され、約2週間後に冒頭の説明会が開かれたのだ。看板には建築物の用途として〈興行所、店舗、事務所、寄宿舎、住宅〉とあり、工事は2028年5月に完了予定だという。
この動きについて協会関係者はこう見る。
「暴力問題の正式な処分が出たことと無関係ではないでしょう。処分までは部屋の閉鎖や師匠の交代も噂されていたことで、建設計画をストップせざるを得なかったとみられます。しかも、新部屋は当初の計画では観光客向けに1階の稽古場をガラス張りにしたり、2階のレストランから見下ろせるような構造にする話もあったという。露骨な観光客向けビジネスの計画に協会から待ったがかかり、見直しが行なわれていたのではないか」
記者会見が開かれる?
結果として新部屋ビルはどのようなものになるのか。住民説明会で配布された1〜7階の平面図と外観図を入手した。
それを見ると、1階には土俵のある相撲部屋の稽古場があり、4台置ける駐車場と風呂場を併設する。特徴的なのは土俵周りだ。通常は土俵の正面に師匠が真ん中に座る上がり座敷があるだけの構造が多いが、図面では上がり座敷の他に、向正面と横側にも階段状の観覧席がコの字型に計78席設けられている。まるで"相撲ショー"の舞台で、インバウンド観光客などを座らせることを前提とした構造に見える。
2階と3階は飲食店で、2階中央のステージが吹き抜けの3階からも見える構造の図面だが、協会関係者の話にあった「1階の稽古場が見下ろせるような構造」にはなっていない。テナントが入居予定の4階、力士の宿舎や親方の住まいとなると見られる5〜7階は細かい構造が書き込まれていない。外観図は道路に面した南側と西側は各階の屋根が複雑に迫り出すデザインになっている。
土地の賃借権を持つ両国四丁目プロジェクトは2025年秋に代表が交代して、現在は歌舞伎町のインバウンド観光客向け飲食店のプロデュースなどをしてきた男性が代表者だ。建築主となるこの男性を直撃取材すると、伊勢ヶ濱部屋の入居についてこう答えた。
「現段階では契約もまだですし、我々のほうから一切お答えができないんです。情報として(伊勢ヶ濱部屋だと)回っているとは思いますが、交渉をしている段階です。決まれば記者会見とかをされると思います」
ただ、両国四丁目プロジェクトの設立時に伊勢ヶ濱親方夫人が代表だったことは前述の通りだ。そのことをぶつけると、「伊勢ヶ濱部屋に入っていただきたかったので、話を進めるなかで立ち上げ時にお名前を借りたいとお願いしました」とのことで、一緒に進めてきたプロジェクトであることはたしかなようだ。
観光客を集めるために上階のレストランから稽古場が見下ろせる構造にする計画について代表者の男性は「まったくのデマ」と応答した。
紆余曲折を経た計画が進行中と見られるが、この間、協会は伊勢ヶ濱部屋のインバウンド観光客向けのビジネスを問題視してきたとされる。
「朝稽古の見学ツアーなどは多くの部屋がやっていたが、伊勢ヶ濱部屋は夕方にもインバウンド向けツアーを受け入れ、神聖な土俵に観光客を上がらせる稽古体験までやっていた。それを問題視した協会が、全部屋に対して稽古見学ツアーの実態調査に乗り出す事態にもなりました」(伊勢ヶ濱一門関係者)
伊勢ヶ濱部屋の新部屋計画やインバウンド向けビジネスへの対応を協会に問うと「お答えすることはありません」(広報部)としたが、最近になって伊勢ヶ濱部屋のHPからインバウンド観光客向けツアー案内の文言が消えたことはたしかだ。
新部屋プロジェクトがどう着地するのか、まだ目が離せない。
※週刊ポスト2026年5月29日号
