大の里も安青錦もいない、豊昇龍まで壊れていった…”主役不在”の大相撲「ブラック巡業」の実態
「29日間で27会場」過密日程に力士の身体が悲鳴
「看板力士がこれほど相次いで休場するのは、過密スケジュールになっている『ブラック巡業』の弊害です」
こう指摘するのは、ある角界関係者だ。
5月10日に初日を迎えた大相撲夏場所。連日「満員御礼」を記録する盛況ぶりだが、その土俵に「令和の相撲ブーム」を牽引する「主役」たちの姿はない。
横綱・大の里(25歳)、大関・安青錦(22歳)は怪我を理由に揃って初日から休場。さらに、一人横綱として土俵を守るはずだった豊昇龍(26歳)も初日の高安戦で右太腿裏を負傷し、2日目から早々に姿を消した。2横綱3大関のうち、ファンが最も熱視線を送る3人が不在という異常事態だ。前出の関係者が続ける。
「春巡業は狂気とも言える強行軍でした。3月22日に大阪場所の千秋楽を終え、わずか1週間後の3月29日から巡業がスタート。番付発表前日の4月26日まで、29日間で27ヵ所を回るスケジュールでした。休養日はわずか2日だけ。番付が発表されれば本場所へ向けての稽古が始まる。これでは身体を休める暇などありません」
実際、怪我で巡業を途中離脱する力士が相次いだ。
「初日時点ですでに休場者は9人もいましたが、その後、安青錦が離脱。大の里も左肩痛の影響により、中盤で離脱しました。そんな中、豊昇龍は皆勤し、『無事に終わることができてよかった』と安堵していましたが、実際には肉離れを起こす寸前まで疲労が蓄積していたのでしょう」(同前)
「興行ビジネス」と化した巡業
年6回の本場所とは別に、巡業は年4回行われる。相撲人気が高まるにつれ、開催件数は右肩上がりだ。春場所だけを見ても、2023年は15ヵ所だったが、2024年は20ヵ所、2025年は25ヵ所、今年は27ヵ所と年々増えている。
「公益法人である日本相撲協会が地方巡業を開催する最大の目的は普及です。本場所が開催されるのは東京、大阪、名古屋、福岡だけであり、『本場所を観戦できない地方のファンのために』という意味合いで始まりました。『勧進元』となるのは地方の有力企業や自治体が多く、地域貢献の側面もありました。
しかし近年、『相撲は儲かる』と踏んだイベント会社が続々と参入しています。3000人規模の体育館を埋めれば、黒字になると言われています。入場料に加え、キッチンカーの出店、グッズや名産品の販売などで利益を上げる仕組みができており、興行ビジネス色が強まっています」(同前)
集客の見込める都市圏での開催が目立つのもその影響だ。
「今回の春巡業は伊勢神宮を皮切りに、関西、北陸、甲信越、東海、関東を回りましたが、後半は足立区→大田区→府中市→さいたま市→船橋市→入間市と東京近郊でした。都市圏のほうが集客を見込めるとはいえ、これでは巡業の意味が問い直されかねません」(同前)
相撲協会は「13億円超」の黒字
移動は基本的にバス。狭い車内に押し込められての移動は巨漢の力士にとっては多大な負担になり、力士からは「移動がしんどい」「とにかく疲れる」との悲鳴が止まない。
若手親方からも「無理をさせすぎだ。本場所に影響が出ている」との批判が出ているが、協会が是正に動く気配はない。
「巡業は、協会が『勧進元』に興行権を売る『売り興行』で開催され、当日の客入りに関わらず、協会には契約金が支払われます。その額は一説によるといまや約2000万円とも言われており、基本的にはスケジュールを詰めれば詰めるほど協会の収入は増えるわけです」(同前)
日本相撲協会が3月に発表した2025年度決算によると、事業収益は約149億円で過去最高を記録。約13億2900万円の黒字だった。だが、収益増加の陰で、力士たちは文字通り身を削っている。
「力士からは『休養が必要。このままでは力士生命が縮まる。巡業スケジュールを見直してほしい』との切実な声が出ています」(同前)
看板力士が不在のままでは、せっかくのブームも一過性で終わってしまう。本末転倒な事態にならなければいいが。
【こちらも読む】元横綱・照ノ富士の《新部屋計画》に両国の住民が猛反発…歌舞伎町「ロボットレストラン」仕掛け人が手がける「異例すぎる施設」
【こちらも読む】元横綱・照ノ富士の《新部屋計画》に両国の住民が猛反発…歌舞伎町「ロボットレストラン」仕掛け人が手がける「異例すぎる施設」
