“まじめで責任感が強い男性”ほど結婚に踏み切れない…令和の「婚活パラドックス」が生んだ日本人男性の“3人に1人が生涯独身”という現実
第1回【「東京に行けば結婚できる」は本当か? 出逢いを求めて上京した女性が“婚活難民”になってしまう切実な理由】からの続き──。婚活難民女子とは婚活のため地方から大都市に出る女性を指す。地方では「若い女性」が少なく、「若い男性」は余っている。ただし数が少ない。一方、東京は地方に比べると「若い男性」の絶対数が多い。そのため地方で生まれ育った「若い女性」は進学や仕事のキャリアアップと婚活を考え、東京に移住するケースが急速に増えている。【藤原良/作家・ノンフィクションライター】(全2回の第2回)
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東北地方で次女として生まれ育った麻衣さん(仮名)は、地元の美容専門学校を卒業後、地元の中心駅近くの美容室に美容師として勤務しながら実家暮らしをしていた。

美容室で働いていると、若い男性との“出会い”も少なくない。しかし彼女は客との距離感を重視するタイプで、男性客と必要以上に親しくなることは避けていた。周囲にめぼしい出会いも少なかったことから、マッチングアプリも利用したが思うような結果は得られなかった。
婚活難民女子となった麻衣さんは初めて「都会という可能性」に目が向いた。都会に行けば男性との出会いも増えるだろう。さらに美容師としても一層の経験を積めるはずだ。
上京した結果、東京の勤務先で出会った先輩の男性美容師と交際したが、彼がプロポーズすることはなかった。そのまま関係は自然消滅した。麻衣さんのように婚活を考えて東京に移住しても、“結婚相手”との出会いと別れを繰り返している女性は多い。
「東京は男性がたくさんいるので、いい出会いがあるまで頑張ります」──諦めるわけでもなく、意地を張るわけでもなく、麻衣さんは今日も真面目に婚活に励んでいる。
彼女のような女性は東京に多い。婚活難民女子の道のりは決して平坦なものではないのだ。
「高学歴・高収入・高身長」は過去
婚活難民女子の傾向として、結婚相手に要求する理想があまりにも高いため四苦八苦している女性も目立つ。男性に過度の承認欲求をぶつけたり、婚活自体に依存してしまったり、いつの間にか相手の欠点ばかりを探してしまう……という女性もいる。
一方で芯が強く、社会経験も豊富で、しっかりと自立したタイプの女性が探し求めている男性像は大まかに言って次の通りだ。
◆たとえ高給ではなく薄給でも、堅実で食いっぱぐれないという安定
◆外見よりも品行方正な人柄
◆共働きを前提とし、対等な男女観と家事力の持ち主
◆なるべく近い価値観
◆トレンド・流行を追うより、“自分たちらしさ”を大切にして楽しむ感性
バブル期なら「3K」──俗に「高学歴・高収入・高身長」を指す──以外は認めないと豪語する女性も多かった。そのためエリートの女性ともなると、理想の結婚相手に自分よりもさらに学歴と収入が高い男性を希望するため、“天文学的数値レベルのエリート男性”になってしまうと話題になることも多かった。
しかし今の婚活難民女子が理想とする男性像を知ると、あの頃とこんなに変わったのかと時代の流れを痛感する。時代が変われば男女の姿も変化するのは当然と言えばそうなのかもしれない。
真面目すぎた男性美容師
慎ましいと言うべきか、穏やかと言うべきか。それとも「これこそが日本人がたどり着いた真実の愛だ!」と賛美すべきなのだろうか?
麻衣さんは常識的な視線で結婚相手を選び、決して高望みなぞしなかったにもかかわらず、なぜ4歳年上の男性美容師は結婚に踏み切らず、自然消滅を選んだのだろうか。
彼は真面目に麻衣さんと交際していた。若い女性の数が増えた東京という都市を利用し、遊び心で女性と付きあっていたわけではない。
どうやら「真面目で責任感が強い人ほど物事を楽観視できない」という傾向が背景にあったようだ。
確かに物事を正確に進めようとする人は巧遅や拙速を嫌う。男性美容師は自分の収入が低いことを最後まで懸念していた。麻衣さんは共働きを提案した。だが、それでも解決しなかった。麻衣さんが「彼は『社会に対して憤りがある』とは言っていました」と打ち明けてくれた。
彼は平成生まれ、関東地方で育ち、父親はサラリーマンという次男坊だった。決して裕福ではなかったが、だからといって不自由することもなく、それなりに一家団欒もできるという当時のごく一般的な家庭で育った。
だが、今の令和の時代で、自分が生まれ育ったような、それなりの一家団欒を送れる家庭がどれくらいあるのか──?
“プレッシャーに弱い男性”ではない
男性美容師は食費だけでなく電気代や水道代さえ節約して日々を過ごしている。2022年以降はインフレに苦しみ、たとえ勤務先の美容室が賃上げを実施してくれても、物価の上昇には追いつかない。いわゆる「悪い物価高」に生活が圧迫されている。
そのため「結婚はコスパが悪い」と公言する若者も増えた。もし結婚すれば、男性美容師はやがて父親になるはずだ。その時、自分が育ったような家庭を作ることができるのだろうか……。今のところ、その見通しはかなり暗いと言わざるを得ない。
誰であっても、ある程度は自分の人生を踏まえながら将来のビジョンを組み立てる。「自分が経験した一家団欒の光景は必要不可欠だ」と判断するのは理解できるし、それが経済的事情で不可能だと分かると頭の中が真っ白になって途方に暮れても不思議はないだろう。
確かに男性美容師は麻衣さんのことを愛していた。しかし結婚について考えると時代の重みに潰され、どうしたらいいのか分からなくなった。彼を「単にプレッシャーに弱いだけの男」と言い捨てるのは酷だ。
その一方で、婚活難民女子と呼ばれる女性たちは時代の変化とうまく歩調を合わせ、粘り尽く“新しい理想の男性像”を作りあげたのは事実だ。
男性にも問題?
ところが男性は時代の流れにうまく乗れていない者が目立つ。日々のストレスに疲弊し、今の時代に合った結婚観や家庭観を見つけ出せていないのだ。
とあるアンケート調査によると、昨今は日本男性の生涯完全未婚率が約30%に迫っているという。男性のうち3人に1人が未婚のまま生涯を終えるのだ。これは軽視できない問題だろう。しかも未婚率は今後も増える見通しなのだ。
彼らは未婚の理由として「独身でいたいから」ではなく「いつかは結婚したいが、なかなか結婚できない」と回答している。つまり今の日本社会には多くの“婚活難民男子”が彷徨しているわけだ。
第1回【「東京に行けば結婚できる」は本当か? 出逢いを求めて上京した女性が“婚活難民”になってしまう切実な理由】では、たとえ政府が子育て支援を加速させても、婚姻率の上昇にはつながっていない現実や、婚活難民女子の「上京する」という選択は果たして正しいのか、といった問題について詳細にお伝えする──。
藤原良(ふじわら・りょう)
作家・ノンフィクションライター。週刊誌や月刊誌等で、マンガ原作やアウトロー記事を多数執筆。万物斉同の精神で取材や執筆にあたり、主にアウトロー分野のライターとして定評がある。著書に『山口組対山口組』、『M資金 欲望の地下資産』、『山口組東京進出第一号 「西」からひとりで来た男』、『闇バイトの歴史 「名前のない犯罪」の系譜』(以上、太田出版)など。
デイリー新潮編集部
