京都府で小学6年生の児童が行方不明となり、その後遺体が発見された痛ましい事件は、犯人が逮捕された後も驚きをもって報じられています。子どもの安全を脅かす事件をきっかけに防犯意識が高まり「GPS機器」の重要性を指摘する人が増えるいっぽう、批判の声もあって──。防犯アドバイザー京師美佳さんにお話を伺います。

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GPS機器を学校に持たせるのはあり?なし?

お話を伺った防犯アドバイザーの京師美佳さん

── 先日遺体が見つかった京都府の事件で行方不明となっていた男の子の学校ではGPS機器の持ち込みが原則禁止とされていたようですね。GPS機器の携帯について文科省は2020年に「原則禁止だが条件付きで容認」という指針を示していますが、同様の対応をとる小・中学校は少なくありません。

京師さん:教育関係者にお話を伺うなかで感じたのは、「まだまだ閉鎖的な学校が多い」ということでした。GPS機器には、録音機能やトーク機能がついているものもあり「記録されること」をよく思っていない関係者らは、防犯目的であれ、それらの所持には消極的でした。

ですが、持っていること自体が誰かに迷惑かけるものでもありません。子どもたちの安全を守るためにGPS機器の使用については議論、見直しが必要だと感じています。

── 保護者の約7割が小学校の入学までにGPS機器を含めた防犯グッズを持たせるか検討する、と聞きます。

京師さん:小学校に入学すると一人で登下校したり、単独行動が増えたりするため、GPS機器やキッズ携帯を持たせる家庭が増えます。さらに、塾に通い始め、暗い時間に帰宅するようになる小学4年時になると急増するようです。

小学生のうちは、たとえば迷子になった際も見知らぬ場所だと自分の位置を正確に伝えることができない子もいます。GPS機能などで居場所が把握できると安心ですよね。

── 子どもの安全を考えて購入を検討する方もいると思いますが、注意点などはありますか?

京師さん:「どういう目的で持たせたいのか」が、選ぶ際のポイントになります。GPS機能としては、スマホに付属されているものは場所によっては反応が鈍くなりがちです。子どもの見守り専用のGPSとして売られているデバイスのほうが、より正確な場所を知ることができます。

アクティブに動き回るお子さんや、遠方の塾に通われている場合は単体のGPSを持たせたほうが賢明ですし、いく場所が決まっている子ならば、特定の場所(自宅・学校・公園・習い事)を登録し、到着時にお知らせが来るようなGPS機器でもよいかもしれません。

緊急時にトークができるもの、いじめ防止に録音機能つきにするものを選ぶ親御さんもいます。今は時速測定機能で、バスや電車に乗ったことで速度が上がると知らせてくれるものもあります。

AppleのAir Tagを持たせる方もいますが、あれは鍵や無くしやすい「もの」に付けることを前提に作られています。周囲にiPhoneがない場所では位置情報が更新されなかったり、20~30メートルくらいまで近づかないと位置が把握できなかったりするため、子どもに所持させるには適していないと思います。

子どもにもプライバシーはある

子どもの安全を守るいっぽうで、プライバシーの問題も

── 学校側がどこまで許容しているのか?事前確認も必要そうですね。

京師さん:そうなんです。GPS機能の併用も期待してキッズ携帯を購入したのに、学校から「携帯電話の持ち込みは禁止です」と言われ「GPS単体の機器を買い直しました」という話も聞いたことがあります。

GPSであっても「位置情報特定機能のみ可」「録音機能つきは許可証必須」など細かく定めている学校もあるので、事前に先生に確認、相談したほうがよさそうです。

── お子さん自身の気持ちもありますよね。

京師さん:何より大切なのは、子ども自身の気持ちですよね。子どもにもプライバジーがあるので、無理やり持たせるのはもってのほかです。最初に、「なぜGPSが必要であるか」を伝え、理解してもらい、ルールを決めてから持たせる重要性は、私も親御さんに説いています。

「こういうときにあなたを守るもの」と伝え、安心感を与えてくれるものだという意識が根づけば、自発的に所持してくれるようになります。京都府の事件のように、行方不明に関する報道があったときにはGPS機器について親子で意見交換するのもよいと思います。

── 携帯させる際は、どこに入れておくのがよいでしょうか。

京師さん:SOS機能の付いたものはポケットなど、すぐに取り出せる場所がよいです。ただ、基本的に頻繁に取り出すものではないので、カバンの底など見えづらい場所に入れておきましょう。

誘拐犯は、子ども携帯を即取り上げますし、GPSも見つけると奪われてしまいます。所持していることや、入れている場所を伝えるのは必要最低限の大人(両親、親族、先生)に留め、所持を不特定多数の人に知られないようにしてほしいです。「取った」「取られた」などお友達とのトラブル回避にもつながります。

「監視はやりすぎ」と否定的な声も

── いっぽうで、祖父母世代から「GPSの監視はやりすぎ」と否定的な声を掛けられたという声も聞きます。

京師さん:時代は変わりました。核家族・共働きが増え、地域の見守りの目は減っています。校内の教育関係者に対しても、疑いの目を向けないといけないことがあります。ひとりでお留守番をする小学生も増えています。

子どもを狙った事案が増えている今、小・中学生の4人に1人はGPS機能を持ったデバイスはすでに持っているそうです。子どもの命を守る重要な防犯対策のひとつと捉え、祖父母世代には寛大な目で見守ってもらいたいです。

──「命を守る」という意味では、ストーカー犯や性犯罪者へのGPS装着義務化を望む声もあり、韓国やイギリスで義務化された前例もあります。

京師さん:日本でも、先月に池袋の商業施設内で元交際相手の女性へのストーカー殺人事件が報じられたばかりですね。事件前、容疑者の男性へ接近禁止命令が出ていたものの、異常な執着心がある人に対して効果はありません。

韓国では、裁判所が「再犯率が高そう」と判断した性犯罪者に対し、2008年からGPSの装着を義務化したことで、再犯率は9分の1まで減りました。

日本でも、犯罪者へのGPS装着義務化に向けて、まずは議論を進めるべきではないでしょうか。被害者が適切に守られる社会であってほしいです。

取材・文:山田千穂 写真:京師美佳