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何かうまくいかないことが起こったとき、「私がこんな性格だから…」と悩んでいませんか。「うまくいかない原因は、その人の性格に起因しないことも多く、性格について理解すれば不要に悩まなくなります」そう語るのはパーソナリティ心理学、発達心理学を専門とする心理学者・小塩真司さんです。今回は小塩さんの著書『人生が生きやすくなる「性格」の話 ─自分を知って幸福になる方法』より一部を抜粋し、「生きやすくなるための性格との付き合い方」をご紹介します。

【書影】パーソナリティ心理学の第一人者による、生きやすくなるための性格との付き合い方!小塩真司『人生が生きやすくなる「性格」の話 ─自分を知って幸福になる方法』

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顔や外見に性格は表れる?

「性格が顔や外見に表れるのか?」ということは、多くの人が興味のあるテーマだと思います。

これについては多くの研究があります。

結論からいうと、一見しただけでわかるような明確な特徴はないといえます。ただし、「平均顔」をつくることはできます。

例えば、外向的な人の顔の写真を多く集めて平均的な顔をつくり、同じように内向的な人との平均顔で比べてみると、どこかに違いがあるようには見えます。

というのも、外向的な人には表情に何かしらの特徴が出る可能性があるからです。誰もが想像できるように、外向的な人はよく笑う傾向があり、それが普段の表情にもにじみ出ます。不思議な現象ではありますが、外向的な人々の平均顔をつくると、なんとなく「明るい」顔の雰囲気になるものなのです。

しかし、ある一人の顔を見ただけで性格を判別できるようなレベルの特徴が出ることはありません。たとえ目の前に外向的な人物がいたとしても、顔だけでその人が外向的だと判断することは難しいのです。そして、外向性以外の性格特性だと、さらに表情とは結びつきにくく、ますます判断は難しくなっていきます。

「信頼できる顔」はありえる!?

おもしろい研究としては、「信頼できそうな顔かどうか」を調べたものがあります。

スイスの5〜13歳の子どもたちを対象とした研究で、フランスの国民議会の立候補者の顔写真を使った実験が行われています。写真を2枚見せて、「きみの乗る船の船長にふさわしいのはどっちの人だろう?」と尋ねるのです。

研究の結果では、スイスの子どもたちはまったく見たことのないフランスの国民議会の当選者を、約7割という高い確率で予測したのです。この精度は、同じ実験でおとなが「どちらが有能に見えるか」と判断した結果とほとんど同じでした。

一見しただけの印象が人を選ぶ理由に影響を与えることがありえると、この研究結果は示しています。さらにいえば、重要な選挙の結果が、第一印象で左右されてしまう可能性がある、ということも示しています。

顔の印象を素早く判断する私たち

私たちは、顔の印象を自動的に素早く判断してしまいます。「この人は有能そうか」とか「この人は信頼できそうか」といった判断は、ほんの一瞬で行われるのです。

おそらく、人類が進化してくる過程で、このような判断が必要となってきたのでしょう。

しかし一方で、有能そうで信頼できそうだという判断が、実際とは異なる場面も多々あります。初対面で相手の顔だけを見て性格や能力を判断することは、正しい場合もありますが、外れてしまう場合もたくさんあるのです。

恋愛など重要な人間関係の場面では、外見だけで性格を判断できたら便利でしょうが、正しく予測できない性格特性はたくさんあります。コミュニケーションをとったり、一緒に行動したりすることなしに相手の性格を判断することは難しそうです。

性格は人生にどう影響するのか?

「性格は人生にどう影響するか」を考えるとき、「影響がある」ということについても少し考えておきたいと思います。

「自分の性格が影響して、いま自分はこういう人生を送っているのだ」という人がいますが、個人が「自分はこういう性格だからこういう人生を送るんだ」と思うのは、あくまでも解釈です。ある性格が人生のある結果に本当に影響するのかどうかは、集団を対象にした大規模な研究をしなければわからないからです。


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影響のあるなしをいうときには、「集団で見たときに法則が見いだせるかどうか」で考えなければなりません。

実際に集団を対象として、性格と人生におけるさまざまな結果との関連を調べた研究はたくさん行われています。

性格と人生の幸福度との関連を調べた研究もたくさんあり、それによると外向性が高くて、神経症傾向が低く、調和性や協調性が高く、誠実性や勤勉性も高いという組み合わせの場合に幸福度が高くなるという結果が報告されています。

集団で関連や影響が観察されたとしても…

しかし、たとえ集団で関連や影響が観察されたとしても、個人で見た場合にその通りになるかどうかはわかりません。確率的には多少高くなりますが、確実ではないのです。

感情面でも、「ポジティブな感情を抱きやすいから幸福になりやすく、ネガティブな感情を抱きやすいから不幸になりやすい」ということが単純に信じられているような向きがありますが、そんなこともありません。

なんにでもポジティブな感情を抱いていたら、うまくいかないこともすべて運や人のせいにして自分に目を向けないことになり、努力をしないかもしれません。

ネガティブになりやすいからいろいろなことに備え、勉強をして資格を取得したりして堅実に仕事をするので、周りからも信頼されて幸せということも十分ありえます。「こういう性格だから幸福になりやすい」とは単純にはいえないということだけははっきりしています。

※本稿は、『人生が生きやすくなる「性格」の話 ─自分を知って幸福になる方法』(清流出版)の一部を再編集したものです。