『独りで死ぬのはイヤだ!』(著/中川 学・刊/集英社)
 48歳・年収200万円という条件で婚活市場に身を投じた漫画家・中川学さん。著書『独りで死ぬのはイヤだ』(集英社)では、マッチングアプリや婚活パーティー、街コンなどに挑んだ本気の婚活が赤裸々に描かれ、累計5000万PVを突破する大きな反響を呼んでいます。

 29歳でくも膜下出血を発症した体験を綴ったデビュー作『くも漫。』(リイド社)など、一貫して「シリアスな現実」をユーモアで包んできた中川さん。今回は、婚活を漫画にしようと思った経緯や、実在する人物を描くうえでの工夫、作中に登場するユニークなキャラクター「中おば」について、中川さんに話を聞きました。

※本記事は全3回のうちの1本目です

◆女性読者の9割から「キモい」「こいつはない」

――婚活を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

中川学さん(以下、中川):29歳の時に「くも膜下出血」を発症したことなど、自分の経験を漫画に描いてきたのですが、それを読んでくれた編集者さんから「次は婚活はどうですか」と言われたんです。

 僕も結婚を諦めていたわけではなかったのですが、元々コミュニケーションが苦手だったからなんとなく踏み出せませんでした。でも、提案してもらったことで、「ちょうどいい機会だな」と思ってやってみることにしました。

――婚活の場では、ご自身が「漫画家」であることを明かしていましたか?

中川:はい。意外にも反応は好印象というか、喜んでもらえるんだなと僕は捉えてました。「婚活を漫画にしている」と伝えても、それほど引かれた記憶はありません。

 婚活をネタにしている以上、「この人とは関わりたくない」と女性に引かれるリスクは覚悟していました。ただ、そうしたマイナス面だけでなく、僕の赤裸々な記録を読んで「これなら自分も婚活を頑張れるかも」と勇気を持ってくれる人がいるかもしれない、とも思っていたんです。

――実際の読者の反応はいかがでしたか?

中川:男性からは応援の声も多く、僕と同じ年くらいの人が「婚活を頑張ろうと思いました」と言ってくれたり。「自分よりもヤバいやつがいてホッとした」という声もありましたが、僕としては嬉しかったですね。

 一方で、女性からは……辛すぎて記憶が曖昧なのですが、、「キモい」「こいつはないわ」と辛辣な声が9割でした。序盤、コロナウイルスの後遺症により一時的に性欲を失い、回復後に「このまま独りなのは怖い」と怯える姿を描いたのですが、そこが気持ち悪すぎたんだと思います。だから、今日のインタビューも、女性から「あの内容はなんだ!」と糾弾されるんじゃないかとビクビクしていました……。

◆これを描いたら芥川賞を獲ってしまう

――婚活漫画では、あえて描かなかった部分もあるのでしょうか。

中川:セックスに関することは、一切描かないと決めていました。本当はそこまで踏み込みたかったんです。構想を練っていると「これ、セックスのことまで描いたら、もはや文学になっちゃうかも」と思いました(笑)。史上初めて、漫画が芥川賞を受賞してしまうかもしれないと(笑)。

 でも、そういう関係になったお相手に、漫画に描いてもいいか尋ねたところ、「お前は何を考えているんだ」と当然断られたのでやめました。

――実在の人物を描く際、どのような配慮をされましたか?

中川:出来事は忠実に描きますが、お相手のプロフィールや容姿は、誰だかわからないように絶妙に変えています。お笑い芸人なら劇団員に置き換えたり、タレ目が特徴の人なら、そのニュアンスだけを残して他を変えたりといった感じです。

――本作では、中川さんが「容姿が好みではなかった」と感じたとき、お相手の姿を描かないようにしていたのが印象的でした。