番組講師に聞く 2026年度「基礎英語」の注目ポイント&使い方!
2025年度から継続して『基礎英語 レベル2』を担当する工藤洋路先生と、2026年度より新しく『基礎英語 レベル1』を担当する中島真紀子先生に、新年度の「基礎英語」のポイントや使い方のコツなどをうかがいました!
小学校から“踏み外しにくい流れ”を――『基礎英語 レベル1』のポイント
中島先生は『基礎英語 レベル1(以下、『基礎1』)』のカリキュラムを作成する際、どのようなことを意識されましたか?
中島 小学校から中学校に上がるタイミングで“踏み外しにくい流れ”を意識しました。「聞く・話す」を中心に培われた小学校英語の土台をもとに学習を進め、はじめて触れる文法にも、「あ、これってこういうことだったんだ」と思える番組構成を目指しています。
文法項目についても、教科書との連携を意識して進度があまり変わらないようにしました。未来の表現は夏休み前に、過去形は夏休み後に取り上げる予定です。これは、「夏休みに何をする?」と「夏休みに何をした?」と、日本とアメリカの中学生の生活の違いを楽しみながらストーリーを読み進めていくことができるようにするためです。
工藤 小学校での英語学習の経験はさまざまです。同じ中学生でも多様なスタート地点があることを前提に設計する必要がありますよね。特に中学1年生が年度前半で学ぶ内容は、小学校での学びの“再確認”という意味合いもありますが、単なる「学びなおし」ではなく、新たな「学び方」で‟再構成”されたものです。
小学校では「書く・読む」の練習はあまり行いませんし、中学校では文法的な理解を伴う新しい学び方になります。「2回目だから簡単だろう」という感覚ではなく、“新しい学び”として取り組んでもらいたいと考えています。中島先生が、小学校での学びと中学校での学びを『基礎1』でどう橋渡しするのか注目しています。
短い文章から積み上げる――『基礎1』で磨く「書く・読む」力
中島 工藤先生もおっしゃっていた通り、小学校の英語では「聞く・話す」が重視されているので、中学1年生にとって文字を読むことのハードルは非常に高いです。生徒たちを見ていると、リーディングの練習を行う際、モノローグ(一人語り)のような長い文章は途中で諦めてしまうことが多いです。
そうした経験から、今回の『基礎1』では、金曜日のレッスンでモノローグの文章を読むことにしました。短い文章から積み上げ、年度末には10~20文のまとまった英文を無理なく読めるレベルを目指します。学校で教科書を読んでいても、「次の文章、こんなに長いんだ!」と生徒がびっくりすることがあるので、一文レベルで小刻みに増やしていけば、だんだんと慣れて取り組めるかなと思っています。
「読む」練習なので、ぜひ放送を聴くだけではなくテキストを買って、文章を読んでほしいです。小学校と中学校の大きな違いは「書く・読む」だと思うので、その力をつけられるようにしたいです。
誤りを共有し、発音の多様性に触れる――『基礎英語 レベル2』のポイント
工藤先生は2年目に突入です。番組作りで意識したところを教えてください。
工藤 『基礎英語 レベル2(以下『基礎2』)』は、習った文法を使って、生徒の藤森慎吾さんがその場で英文を組み立てます。自然と誤りが出ますので、それを共有しながらどのような表現が使えるか学んでいくというスタイルです。藤森さんの誤りがあまりにも自然なので、リスナーから「台本に沿って間違えるようにしているのですか?」という質問が届くくらいです。そういった自然に出てくる誤りを共有できるのもいいと思っています。
「藤森さんが一緒に間違えてくれるのがいい」「まず自分の頭で考え、その後に正解が流れる設計がいい」といった声もありました。
工藤 会話パートでは藤森さんにたくさん話していただいていますが、主語と動詞がはっきりして、文の形がしっかりしていれば、細かな誤りや発音はおおらかに受け止めています。英語話者の発音にもバラエティがあります。相手によって通じる発音もちがうので、コミュニケーションをしながらその都度学んでいってほしいです。
中島 今の中学生には、いろいろな国の人が使う英語を聞いてほしいと思っています。教科書ではさまざまな国の人が登場しても、音声が「きれいな米語」になりがちですが、リスニング教材そのままのような英語が話されているわけではないということを知ってほしいです。英語を母語としない人同士が、英語を使ってコミュニケーションする機会が多くなってきていますよね。
工藤 「正しい英語」とは何なのかについては、さまざまな考えがあると思います。究極的には「通じればいい」ということになるのかもしれませんが、中学生は受験英語も学ぶ必要もありますし、「通じればいい」というわけにもいかない。これは難しいところで、絶対的な答えがあるわけではありません。
『基礎2』はモノローグとスピーチのコーナーを新設! その目的とは?
『基礎2』は2026年度にモノローグとスピーチのコーナーが新しくできますね。どんなねらいがあるのでしょうか?
工藤 モノローグといっても、アナウンスの一部とか、会話の中で片方が長く話しているところを切り取ったものとか、大がかりなものではありませんが、今年度から扱うことにしました。
モノローグやスピーチのコーナーを作ったのは、中学校の言語活動では、質問と答えのやりとりだけでなく、まとまりのある話を「聞く・話す」力が求められるからです。ダイアローグ(会話)の形式以外にも多様なスピーキング・リスニングがあることを示したいと思っています。
中島 中学3年生になるまで、質問と答えを繰り返す対話形式だけで授業が進んでしまうことも少なくありません。自分の考えを整理し、一人である程度まとまった内容を話せるようになることは大事ですね。
リスニングでも長いダイアローグは聞き取れるのに、モノローグは聞き取りにくいという生徒が多いのが実情です。耳だけで要旨をつかむ訓練や、問いが与えられなくても連続したモノローグを聞き続ける力を養ってほしいと思っています。
工藤 会話では、片方が質問すると、次に質問の答えが返ってくると予想できるため、比較的聞き取りやすいのだと思います。一方、モノローグは、質問に答えるという形で始まるわけではないので、内容の流れをつかみにくくなりがちです。
ともすれば、リスニング練習は‟設問の答え探し”に偏りやすく、問いのない連続したモノローグを聞く機会が不足しています。『基礎2』でモノローグを導入したのは、こうした弱点を補うためでもあります。
毎日聴いて!――「基礎英語」の使い方のコツ
「基礎英語」を学ぶ際に、ぜひここを意識して学習してほしいというコツはありますか?
中島 とにかく‟毎日聴く”ことを意識してほしいです。勤務先の学校でも「基礎英語」を活用しています。「リスニングをどう伸ばせばいいか?」という悩みが生徒のなかでも一番多いのですが、「3年間、毎日聴き続けなさい」と言っています。
「基礎英語」は、良質なリスニング教材であると同時に、スピーキング教材としても効果的です。教科書にないフレーズが適度に含まれているのも魅力だと思います。
工藤 「基礎英語」を聴く際は、まず文字を見ずに聴くことにチャレンジしてほしいです。『基礎2』で、テキスト誌面を‟英文を見ずにリスニングする”右ページから始まる構成にしているのも、それがねらいです。リスニングはなかなか上達しにくいので、何度も聴いてほしいと思います。
工藤先生、中島先生ってどんな人?――英語学習のバックボーン
工藤 父親の仕事の都合で、10歳のときにアメリカに1年滞在しました。ちょうど学校の友だちの話す英語が少しずつ理解できるようになってきたころに、帰国することになりました。日本で、中学1年生として英語の勉強をスタートした当初は、アドバンテージがあったのですが、学ぶ内容が進むにつれて次第にわからない部分が増えていきました。
アメリカにいたときに自然に英語を習得していたのと違って、日本に戻ってきて中学生になってからは、文法中心に英語を学んでいました。その日本式の文法中心の英語学習になじめず、テストの点を取るためだけにひたすら暗記で乗り切っていた時期もありました。英文法のルールを腑に落ちて理解できるようになったのは、高校に入り、受験勉強を進めていくなかでのことだったと思います。
とはいえ、高校時代の英語学習は受験に特化したものだったので、大学に入ってからが大変でした。ネイティブの先生の講義についていくために、予習と復習をくり返す毎日。でも結果として、その積み重ねが英語力の下地となったのだと思います。
工藤先生でも大学で英語の勉強に苦労したのだと思うと、英語を学ぶ勇気が出る人もいる気がします。
工藤 大学は大変でしたね。外国語学部の英語専攻の学生だったので、当然ですが、英語の授業ばかりでしたし。
中島先生は子どものころから長年、「基礎英語」を聴いてくださっていると伺いました。
中島 朝起きると、ラジオからいつも「基礎英語」が流れている、そんな環境で育ちました。母親が朝6時にキッチンに入るタイミングでラジオをつけ、6時から6時45分まで英語講座を聴くのが日課でした。
やはり英語教員だった母に「なぜラジオの英語講座を流していたの?」と聞いたところ、「私が聴きたかったから」とのこと。子どもの私に聴かせるため、という意図ではなかったようです。テキストは父が定期購読していましたが、私自身は机に向かってきちんと聴いていたわけではありませんでした。今では、生徒にテキストを開きながら番組を聴くように指導しているのですが……。
中学校の教員になってからは、クラス全員にテキストを購入してもらい、毎日番組を聴くことを推奨してきました。かつて赴任していた学校では、「基礎英語」を毎日聴き続けた生徒が、実力テストで100点を取ったこともあります。その生徒は、もちろん授業をしっかり受けてくれていましたが、塾などは一切行かず、学校の勉強以外は「基礎英語」のみでした。この経験から、毎日の積み重ねこそが力になるという確信を持ちました。現在勤務している学校でも、「とにかく毎日聴きなさい」と生徒に伝え続けています。
中学生リスナーへのメッセージ
中学生の「基礎英語」リスナーへのメッセージをお願いします。
中島 ワクワクするストーリー展開に日常で使われる表現をたくさん盛り込んでいるので、リスナーのみなさんには生きた英語をどんどん吸収してほしいです。耳から聞くだけでなく、文を読んだり、書いたりの積み重ねもできるようにしています。
また2026年度の『基礎1』には、生徒としてこの4月から現役中学生となる鈴木楽さんが出演します。目の前の生徒に語りかけるつもりで、楽さんの「わかった/わからない」に応じて、私も手を変え品を変え説明します! 放送を聴いているみなさんとも、「言えた!」という感覚を共有できるような15分間にしたいと思います。
工藤 2026年度の『基礎2』のストーリーでは、主人公の会話相手として海外からやってきた中高生が登場します。テキストを使う中学生にも親近感を持ってもらえる場面が増えるのではないでしょうか。主人公が、日本の学校のことを教えたりするので、リスナーのみなさんにも同じ気持ちで英語を話したり聞いたりしてほしいですね。
英語は「くり返し」です。最初の1回で全部理解する必要はありません。あまり身がまえず気楽に取り組んでください。私たちが英語で‟わちゃわちゃ”しているところを楽しむくらいの気持ちで大丈夫です。「あれ? なんか頭に残っているな」と感じることも、無意識のうちに積み重なった学習の成果です。2026年度も楽しい15分をお届けします。
大人の学びなおしリスナーへのメッセージ
中島 『基礎1』が良いのは、be動詞などの基礎的な文法からあらためて学ぶという大人の方でも、魅力的なストーリーに引き込まれ童心に帰って楽しめるところ。文法や文化的な背景についても、「そういうことだったんだ」という発見のある講座・テキストにしていきたいと思います。
工藤 語学は何度くり返してもくり返しすぎることはありません。いまのレベルをキープできていること自体が成果です。1日15分の継続で現状維持ができるとすれば、十分に価値があります。
さらに、同じ講座で同じ講師でも、ストーリーは毎年変わっています。同じ文法でも、新しい例文との出会いから新しい気づきが生まれます。推測しながら聴く、「自分ならこう言う」と先回りするなど、能動的に番組を聴いていただきたいです。
筑波大学附属中学校教諭。イギリス・バーミンガム大学大学院にて「教育開発」を専攻。群馬県の公立中学校で10年間勤務したのち、2017年より現職。文部科学省中学校検定教科書「NEW CROWN English Series」(三省堂)の著者の一人。英語授業研究学会理事、教員向けの研修講師も務めるなど、英語教育の現場で幅広く活躍。勤務校では「基礎英語」シリーズを副教材として指導に取り入れ、自身も20年来の「基礎英語」リスナー。
工藤洋路(くどう・ようじ) 東京外国語大学大学院総合国際学研究科教授。高校教諭、大学講師等を経て現職。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒業、同博士前期課程・後期課程修了(学術博士)。専門は英語教育学。特に、英語ライティング論や英語授業論を研究。主な著書に、『きほんの疑問文ときほんの動詞でこれだけ話せる 2コマ英会話』(NHK出版)、『英語教育のエビデンス』(研究社、共著)、『自由英作文はじめの1冊』(アルク)。文部科学省中学校検定教科書「NEW CROWN English Series」(三省堂)の著者の一人。NHK Eテレ英語番組「知りたガールと学ボーイ」講師(2019年4月~2022年3月放送)。
