小林製薬会長・大田嘉仁《経営再建に向けた道筋を問う!》
「利他の心」に照らして……
─ 紅麹問題で揺れる小林製薬という伝統ある会社の会長に就任するにあたり、どのような経緯があったのですか。
大田 去年の秋頃、小林製薬の関係者の方からお声がけをいただきました。「今後の経営に関して助けて欲しい」と頼まれたのです。
実は「リファ」や「シックスパッド」など、美容・健康機器メーカー・MTGの会長の依頼を受けたときも同じように助けて欲しいと頼まれ、会長に就いた経緯がありました。
もともと他の会社からお誘いを受けても、お断りしていたのですが、やはり困っている人に手を差し伸べるべきだと。それは京セラ創業者で私が長く仕えた稲盛和夫さんの後ろ姿から得たものでもあります。
稲盛さんは日本航空(JAL)の再建でも当初は断っていましたが、自分のことよりも他人の幸福を願う「利他の心」に照らして最終的には引き受けましたからね。
─ 稲盛さんの教えが大田さんの背中を押したと。
大田 ええ。稲盛さんからの教えをもう一度見つめ直してみると、助けて欲しいと頼まれているのに、断るのは少し違うかもしれないと。1週間ほど考え、引き受けることにしました。
もちろん、当社の取締役会のスキルマトリックスに照らした上で私を指名し、人事指名委員会の方々の面接を受けて正式に承認をいただきました。
─ 会長への就任は3月28日。それから5カ月弱が経ち、どんな手応えを感じていますか。
大田 とてもいい会社であることは間違いないと思っています。素晴らしい第二の創業者とも言える方がおられ、会社を大きくされました。ですから、立派な社風もあります。
ただ私が感じたのは、20~30年という長い年月の間、順調な経営が続いてきたために、少し緊張感がなくなってしまったんだろうなと。
そのため、会社として打たれ弱くもなってしまった。当然ですが、大きな問題を起こしたため、社会から厳しく批判されましたからね。また、誰かに依存してしまう体質だったため、自分たちで考えて、自分たちで結論を出すという視点が疎かになっていました。
紅麹問題をどう教訓にするか?
─ 現特別顧問の小林一雅さんは他にない商品づくりで小林製薬を大きく成長させました。
大田 そうです。その結果、ずっと右肩上がりの業績が続いていましたからね。一方でそのために緊張感も薄れてしまった。ただ、ここで落ち込んでいる場合ではありません。これからは経営幹部などを含めた社員全員が自分たちで考えて、自分たちで判断し、責任もとっていく。それが大事なことになります。
ただ、「『あったらいいな』をカタチにする」というブランドスローガンは素晴らしい。これは稲盛さんが言っていた「善きことを思うのがすべての始まり」の「善きこと」に当てはまります。善きことをしようという文化は根付いているんです。
─ 社員に向けた第一声はどのような内容でしたか。
