素敵な音楽をレコードで、空間全体に響かせながら聴ける場所は、流れる時間もなんだかとても豊か。昨今、そんなスポットに熱視線が集まっています。音楽好きも初めての人も、いま行くべきはレコード酒場です!

レコード酒場の初めの一歩はココ!本場の酒とご飯を、ブラジル音楽聴きながら『Bar Blen blen blen』@渋谷

そりゃ初来店はちょい緊張しますとも。雑居ビルの2階、音楽の振動が伝わってくる未知のドア。でも、えいやっと開けてよかった。

ぎゅっと凝縮した小体な店内には、クリアでやわらかいサウンドが満ちていた。強めのサウンドの中で楽しく交わされる会話には、日本語とポルトガル語が入り混じっている。隠れ家感のある居心地のいい空間だ。

店主の宿口豪さんは生粋の日本人。学生時代にブラジルのドラムンベースに傾倒し、いつしかブラジル音楽全般、ひいてはブラジル文化にハマったとか。

ブラジルの名物カクテル「カイピリーニャ」を飲み終える頃にはそんな会話もさらりとでき、見知らぬバーに入った時特有のドキドキは、もっと楽しみたいというワクワクに変わっていた。

お手製は珍しいという「コシーニャ」をハフハフと頬張り、よく冷えた「バヂーダ・ヂ・ココ」をゴクリ。ブラジリアンポップスの大御所、イヴァン・リンスの伸びやかな声が響いた頃には、「マスターのご飯、食べていこっかな」てな具合に、すっかり常連のような気分に。

ブラジル風チキンストロガノフ1400円、バヂーダ・ヂ・ココ900円

『Bar Blen blen blen』(手前)ブラジル風チキンストロガノフ 1400円 (奥)バヂーダ・ヂ・ココ 900円 ビーフストロガノフ同様に現地で親しまれる庶民の味。ココナッツ系カクテルのミルク感とよく合う

「チキンストロガノフ」もしみじみ旨い。実際、食事が目当ての客も多いとか。ひとりメシにも最高だよ、音楽もいいんだもん。

「選曲は内輪ウケにならないように。絶えず一見さんの来る新陳代謝があるのがいい音楽バーかなと」(宿口豪さん)

『Bar Blen blen blen』

[店名]『Bar Blen blen blen』

[住所]東京都渋谷区道玄坂1-17-12野々ビル2階

[電話]03-3461-6533

[営業時間]17時半〜24時

[休日]日・月

[交通]京王井の頭線渋谷駅アベニュー口から徒歩3分

※消費税込みチャージ500円

さりげなく奥深いふたつの音楽バー!さあ、音楽とアートのマジックワールドへ『MUSIC BAR道』@湯島

誰に対しても飾らず、やたらと面白いエピソードを繰り出すオトナ。それが『道』の店主・大久保裕文さんだ。中学時代から神保町やお茶の水のレコード店巡りを続けてきた彼の、ウン十年分の愛蔵レコードでバックバーはいっぱいだ。

初めて行った時、アメリカンロックの異端児、イギー・ポップのダミ声が店内に響いていた。イギーファンのうら若き女子のリクエストだ。イギーから連想されるミュージシャンからミュージシャンへと大久保裕文さんのDJはつながり、場は温まる。そして和む。

耳をスピーカーに預けつつ、目を奪われるのが壁を彩るポスター。ファッション誌などのアートディレクターを務めていた大久保裕文さんは、音楽のみならずアート全般に造詣が深い。ウォーホルのサイン入りオリジナルプリントのポスターや国内外のミュージシャンを撮ったオリジナルプリント作品が無造作に飾られている。宝の山。ここは大久保裕文さんのおもちゃ箱なのだ。

『MUSIC BAR道』大久保さんの思い入れの深いレコードは、ブリティッシュロックのストーン・ローゼズやNYファンクのESG、カナダの音楽家モッキー、坂本慎太郎などジャンルも年代も縦横無尽

「これもね、当時は安かったんですよ」と笑う彼に、そんなことないでしょと突っ込むと、実のところリーズナブルだった。彼の人柄が生んだ人脈と目利きの賜物なのだろう。控えめに掲げられた4人組の写真に目をとめた。

「あ、『はっぴいえんど』ですよね。これもオリジナル?」と聞くと、そうだと笑う。すると、シンガーソングライターとして活躍するスタッフの夜ヒル子さんがアルバム「風をあつめて」をかけてくれた。これまで何百回と聴いてきたはずだが、写真を前にレコードで聴くそれは、知らない音が詰まった分厚い曲のように思える。

珈琲焼酎をロックでもらう。大久保裕文さんはサッポロラガーの大瓶を酌む。音楽とアートに彩られた不思議な店に身を任せ、夜は更けていった。

『MUSIC BAR道』季節のポテサラなどのフードもとても丁寧な手作りで美味。人気のハーパーソーダーや珈琲焼酎と味わいたい

[店名]『MUSIC BAR道』

[住所]東京都文京区湯島3-35-6第1大久保ビル3階

[電話]03-3832-3740

[営業時間]18時〜23時半(23時LO)※昼は「ヒルマCafe道」として営業(詳細はinstagram参照→https://www.instagram.com/hirumacafemiti/)

[休日]日※イベントにより営業の場合もあり

[交通]地下鉄千代田線湯島駅4番出口出てすぐ隣のビル

ジャズの調べに、心ゆくまで浸る宵『ボロンテール』@赤坂

次に訪れたのは、無垢材があしらわれた木の空間。棚には、ジャズのレコードがぎっしり。素敵な笑顔を見せるのは店主の坂之上京子さん。流れるのはジャズヴォーカル、ビリー・ホリデイの「All Or Nothing At ALL」。どこか切なくゆらぎのある声が美しく響く。坂之上京子さん愛聴の一枚だ。

ジャズバーと聞いて正直、気後れした面もある。実際、マニア向けで私語禁止の店もあるが、ここではドアを開けて3秒で、それが杞憂とわかった。元々原宿にあったシャンソンの店を坂之上京子さんが引き継ぎ、ジャズバーにしたのが1977年。

作家の色川武大さんやイラストレーターの和田誠さん達も大常連だったという。コースターには和田さんが描き下ろしたミュージシャンの絵が使われている。

『ボロンテール』セロニアス・モンク、カウント・ベイシーらが参加した「The Sound of Jazz」などがお気に入り

赤坂に移転して14年。白木だった内装は、ジャズの音色が似合う赤褐色になってきた。

なぜジャズなんですか?

「寄り添ってくれる音楽だからかしら。どんな感情も包んでくれて、日々を豊かにしてくれる。そこが好きです」

曲は軽くソフトな歌声に変わった。マキシン・サリバンだ。来日時には私的な公演にも挑戦したという、坂之上京子さんの思い出深いシンガーだ。

伸びやかな声に浸っていると、「今日は土曜だから押しがいいわね」とひと言。他店の休みが多い日は電圧が強く、音圧も厚いのだとか。……深い。

遥かなる世界を知るために、必ずや裏を返そう(再来店しよう)。そ、レコードだけに!

『ボロンテール』店主 坂之上京子さん ジャズの音色と柔和なマダムに癒される

[店名]『ボロンテール』

[住所]東京都港区赤坂5-1-2赤坂エンゼルビル2階

[電話]03-3505-0188

[営業時間]コーヒータイム12時〜18時半、バータイム19時〜翌1時※バータイムはチャージ2000円別(おつまみ2品付き)

[休日]日

[交通]地下鉄千代田線赤坂駅1番出口から徒歩1分、地下鉄銀座線ほか赤坂見附駅エレベーター口から徒歩5分

撮影/赤澤昴宥、取材/渡辺高

『おとなの週末』2025年6月号

■おとなの週末2025年7月号は「夏の麺

『おとなの週末』2025年7月号

※月刊情報誌『おとなの週末』2025年6月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

…つづく「奈良はバーの街だった」でも、この街の魅力をレポートしています。

【画像】壁一面がレコード!音楽好きも初めての人も入りやすいレコード酒場(24枚)