36試合出場で10得点の三笘。プレミアで日本人選手としては初となる二桁ゴールを達成した。(C)Getty Images

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 2024-25シーズン、プレミアリーグで日本人初となる10ゴールを達成したブライトンの三笘薫。守備と攻撃の両立、チェルシー戦での圧巻のパフォーマンス、サウジアラビアからの145億円超オファー...。充実の1年を、三笘本人の言葉とともに振り返る。

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 ブライトンに所属するMF三笘薫の2024−25シーズンが幕を下ろした。

 個人成績を振り返ると、プレミアリーグでは36試合に出場し(そのうち先発28試合)、10ゴール・4アシストを記録。日本人選手としてはプレミアリーグ史上初となる「二桁ゴール」の快挙を達成し、新たな記録を打ち立てた。

 なかでも圧巻だったのは、2月に行なわれたチェルシー戦だ。GKのロングボールを見事にトラップし、そのままネットを揺らした一撃は「衝撃的なゴール」として大絶賛された。英BBC放送、英衛星放送スカイスポーツ、スポーツサイト『ジ・アスレティック』などが年間最優秀ゴールに選出。クラブ内でも評価され、ブライトンの年間最優秀ゴールを受賞した。

 プレミアリーグ公式の年間最優秀ゴール賞には惜しくも届かなかったものの、世界最高峰のリーグで年間ベストゴールに輝いた意義は大きい。これはまさに、キャリアに刻まれる金字塔だ。

 また、1月の移籍市場では、サウジアラビアから7500万ポンド+出来高418万ポンド(約145億円+出来高8億円 )という巨額オファーが舞い込んだ。報道によれば、三笘には現在の契約の3倍にあたる報酬も提示されていたという。

 しかしクラブはこのオファーを断固拒否。本人も「何のためにサッカー選手をやっているかを考えないといけない」と語り、移籍に興味を示さなかった。それでも、この破格の移籍金はイングランド国内でも大きな話題となった。

 新記録、最優秀ゴール、そして中東からの巨額オファー。実に多くの話題をさらったシーズンになったと、そう振り返ることができよう。
 
 今一度、プレミアリーグのゴール数を確認すると、1年目の2022−23シーズンは7ゴールを記録した。

 このシーズン、9月にはイタリア人のロベルト・デ・ゼルビ監督が就任。それを機に三笘はスタメンに定着し、快進撃が始まった。最後尾からのビルドアップを軸に攻撃を組み立てる「デ・ゼルビ・ボール」の中で、三笘はドリブル突破とクロスで違いを生み出す存在となった。

 2年目は、欧州リーグ参戦に伴う過密日程に苦しみ、思うように得点数を伸ばせなかった。2月に腰の怪我を悪化させ、最終的に3ゴールにとどまった。

 そして迎えた3年目の今シーズン。三笘のブレイクを後押ししたデ・ゼルビ監督がオフに去り、新たにファビアン・ヒュルツェラー監督が就任した。プレミア史上最年少となる32歳の指揮官は、対戦相手に応じてカメレオンのようにアプローチを変えるのが特長。そのなかで、三笘は10ゴールを叩き出した。

 そこで、三笘に聞いてみた。

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「今シーズン、ヒュルツェラー監督が就任しました。まさに現代的な監督で、勝利から逆算してカメレオンのように毎回アプローチを少しずつ変えていたように思います。三笘選手としては、どの部分に一番学びがありましたか? 今までとはタイプがちょっと違う監督のように見えました」と。日本代表MFはこう答えた。

「監督の信念として、フィールドプレーヤーの全員が守備をしないといけない。そこを、より植え付けられました。攻撃の選手であっても“ファースト・ディフェンダー”であることが求められた。

 そこができるかできないかで、(評価の)判断をしてくれる監督です。もちろんゴールやアシストの結果も大事ですが、どれだけチームのために働けるかを見ている人です」

 たしかに今季の三笘は、自陣深くまで守備に走るシーンが目立った。サイドバックのカバーに奔走し、ボールを奪えば一気にスプリントしてゴール前へと駆け上がった。

 今シーズンの成長した部分と、課題になった部分について質問を受けると、サムライ戦士はこう話している。

「ゴール前への侵入回数が、昨シーズンより増えたのは間違いないです。もちろんそれは、チーム戦術として(ゴール前に入っていくかどうか)変わるところがある。そのなかで、今季はゴール前に入っていかないといけなかった。昨シーズンまでなら、入っていかなかったので。

 こうしたタスクにより、フィジカル的に向上したところはあります。ゴール前に入るタイミングも成長したと思います。ただ、もっとゴールを決められたシーンもありました。自分が守備でついていかなくて喫した失点も何度かありましたし、課題はたくさんありますね」
 
 こうした三笘の説明は、今季を振り返るうえで大きなポイントになる。

 ヒュルツェラー監督がフィールドプレーヤーの全員に守備を課したことで、三笘を含む攻撃陣も自陣深くまで守備に戻った。そして一度ボールを奪えば、瞬時にしてカウンターアタックを発動──。速攻で相手守備が手薄になったところを突き、三笘も長い距離を走ってゴール前に侵入した。

 敵陣に押し込んだ状況から奪ったゴールもあったが、今季目立ったのは、やはり守備タスクを終えてから、長い距離のスプリントで攻撃に絡む三笘の姿だった。

 28歳MFが「守備をやりながら、攻撃に入っていかないといけなかった。これまで以上にフィジカル的なタスクは増えましたけど、そこを要求されて成長したところはある」と語るように、守備から攻撃に転じ、さらにゴール前まで走って得点に絡んだ。この点を、三笘は「今季の成長点」として挙げた。

 総じて、三笘にとって今季はプレーの幅を広げたシーズンだった。

 これまでの三笘は、ファイナルサードにおける「仕掛けの切り札」としてチャンスを演出してきた。自慢のドリブル突破や反発ステップで敵の守備網を切り裂き、クロスボールで決定機に絡んだ。

 ドリブルによるチャンスメイクは依然として持ち味ではあるが、「縦に速い攻撃」に磨きをかけたのが今季の三笘だった。ゴール前に侵入し、1タッチなど少ないタッチで挙げた得点が多かったのは、その証拠だろう。

 少し乱暴な言い方をすれば、ドリブラーから、よりオールラウンドなアタッカーに進化を遂げたシーズンであった。そしてその結果、日本人選手初の二桁ゴールという歴史的な数字に繋がった。

 興味深いのは、こうした変化を三笘自身が意図して生み出したというよりも、「監督交代による戦術の変化に、自身のスタイルを適応させた結果」という点である。

 本人はこう言う。

「ブライトンは常にボールを持てるようなチームではありません。相手次第で、ボール保持ができない試合もある。こうした状況で、相手に最も打撃を与えられるプレーをしないといけない。今のブライトンの戦術上そうなってるだけかと思いますが、(1タッチでのゴールが増えたことを含めて、自身のプレースタイルが変わったことにより)ゴール数が増えていると思ってます」

 進化を遂げた三笘はプレミア3年目を終え、これまで以上に移籍の可能性が高まっている。トッテナムとのリーグ最終節で、三笘本人は移籍に関する質問に「本当に何も言えない」と話すに留まった。

 ただ、こちらから「プレミアリーグで3年プレーしてみて、改めてどんなリーグですか?」とその印象を聞いてみると、三笘はこう話している。
 
「どのチームも高いレベルであるのは間違いないです。そのなかで、自分自身も1年目より成長している実感はあります。もちろん1年で評価が変わるのもそうですし、たった1試合で評価が変わるのも、このサッカーの世界なので。それをより感じてますね」

 思い返せば、今年1月、三笘はオールド・トラフォードで行なわれたマンチェスター・ユナイテッド戦で1ゴール・1アシストの大活躍を見せた。サウジアラビアのアル・ナスルから巨額オファーが飛び込んできたのは、その直後だ。

 2月のチェルシー戦で生まれたスーパーゴールは、冬の市場の閉幕後に生まれた。そう考えると、あの衝撃的なゴールを挙げた後、ビッグクラブからオファーが舞い込んでいたとしても不思議ではない。

 クラブ最多タイの10ゴールを叩き出した三笘薫。プレーの幅を広げて成長を遂げた日本代表MFはこの夏、さらなる飛躍を目ざして新たなステージへと向かう可能性は高そうだ。

取材・文●田嶋コウスケ