制作側が「橋本環奈」人気に期待しすぎた、という指摘も…

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 橋本環奈(26)が主演するNHK朝の連続テレビ小説「おむすび」の視聴率が苦戦を強いられている。昨年9月のスタート時の“ギャル編”が「朝ドラの視聴者層に合わない」(関係者)と言われ、2024年の世帯視聴率は12%台にまで落ち込んでいた。2025年に入ると、状況はさらに悪化。1月13日の放送は11・4%と、朝ドラとしてもはや危機的な状況となりつつある。

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「今年の1月までの平均視聴率は13・5%前後です。朝ドラのワースト視聴率を記録した倉科カナ主演の『ウェルかめ』(2009年度後期)の期間平均が13・5%ですから、これと並ぶ水域です。橋本は昨年の『紅白』で司会を担当し、主題歌を歌うB'zの初出場など話題が多かっただけに、NHK内の期待も高かったのですが……。

制作側が「橋本環奈」人気に期待しすぎた、という指摘も…

 たしかに“ギャル編”への批判はありました。それでも伝説のギャル役を演じた仲里依紗(35)の評判が高かったことを考えると、展開が雑過ぎるシナリオ構成に問題があったことは否めません。あとは(週刊文春が報じた)橋本のパワハラ疑惑も、少なからず影響を及ぼしたのではないか。『爽やかさ』が求められる朝ドラのヒロインにとっては致命的ともいえる報道でした。その報道の後に『プロフェショナル 仕事の流儀』が彼女を特集したものの、タイミングは悪かったかもしれません」

 と現状を語るのは放送担当記者だ。

 今後に関しても「視聴率の浮上は期待出来ない」「朝ドラのワースト記録更新は確実」と悲観的だ。

「結局、制作側が橋本環奈の人気に期待し過ぎた結果かもしれませんね」

「とと姉ちゃん」以降、パッとしない視聴率

 となれば、次回(2025年前期)の「あんぱん」、その次の「ばけばけ」に期待がかかる。

「あんぱん」は、「アンパンマン」を生み出した漫画家のやなせたかし氏(2013年10月没=享年94)と妻の小松暢(こまつ・のぶ)さん(1993年11月没=享年75)をモデルにした作品で、今田美桜(27)がヒロインを務める。漫画家の水木しげる氏(2015年没=享年93)の妻・武良布枝さん(93)を描いた「ゲゲゲの女房」(2010年上半期)の路線に近い。

 一方、2025年後期の「ばけばけ」では、現在、「御上先生」(TBS)に千木良遥役で出演中の高石あかり(22)が小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻・セツを演じる。 また2026年前期の「風、薫る」は、月9ドラマ「119エマージェンシーコール」(フジテレビ)で人気急上昇中の見上愛(24)の起用が発表された。

 近年の朝ドラを振り返ると、2016年前期の「とと姉ちゃん」の22・8%以降、視聴率は下降線を辿っている。一時、安藤サクラ(38)を起用した「まんぷく」(18年下半期=21・4%)が盛り返したものの、「おちょやん」(杉咲花主演=20年下半期)で、20%割れの17・4%となってしまった。もちろん、低迷の要因に「録画視聴や見逃し配信の普及」(放送関係者)などもあるだろう。

 一方で、“ヒロインの選び方”の限界を指摘する声もある。

変わる“朝ドラヒロイン”の位置づけ

 そもそも14年前期「マッサン」の玉山鉄二(44)などの例外はあるものの、朝ドラの場合は「女性を主人公にすることがほぼ伝統になっている」(NHK関係者)のはなぜか。

「まず、作中で描かれるさまざまな問題に対し、直感的に『おかしいものはおかしい、正しいものは正しい、間違っているものは間違っている』と純粋に言えるのは、若い人なのだと思います。そうした主張は制作側の言いたいことでもあるわけですが、若い女性の姿を借りて発信することで“中和”する狙いもあり、そういった点で朝ドラは若い女性を起用することが多いのでしょう。朝ドラのヒロインというのは“ひまわり娘”だと言われてきました。いつも、おてんとさまを向いている人 がヒロインにふさわしい、というわけです」(前出のNHK関係者)

 かつては大竹しのぶ(67)、小林綾子(52)、沢口靖子(59)、藤田朋子(59)、さらには国仲涼子(45)や宮地真緒(41)、池脇千鶴(43)、比嘉愛未(38)と言った面々が、朝ドラ出演をきっかけに世間から注目されるようになった。近年では13年前期「あまちゃん」の能年玲奈(のん、31)が出世頭の代表格だろう。また15年後期「あさが来た!」ではオーディションでは落選も、制作側からの要望で出演、結果大化けしたという吉岡里帆(32)などもいる。

 出演すれば知名度が上がる朝ドラは、その後の映画や民放のドラマへの起用も見込まれることから「新人女優の登竜門」と位置付けられてきた。しかも基本的に「清純」な役どころだから、演じる女優の印象も良くなる。1年、半年のスパンで放送していることもあって、他の連続ドラマに比べて収録が長期間になる。経験を積ませる養成所的な側面もあった。

 だが近年の朝ドラについて「すでにある程度の人気がある女優を起用するケースが圧倒的に増えた」と悲観する声は少なくない。例を挙げれば「なつぞら」の広瀬すず(26)しかり、「スカーレット」の戸田恵梨香(36)しかり、22年前期「ちむどんどん」の黒島結菜(27)……。

 劇団を主宰する演出家は、

「毎年、オーディションの応募用紙が届きますが、基本的にヒロインには大手の芸能プロに所属していないと受けられないのが現実です。しかも、オーディションも形ばかりで、実は6〜7社の持ち回りで決めているとも噂されています」

 と打ち明ける。確かに、近年のヒロインの所属プロダクションを見ると、研音やアミューズ、ホリプロ、ソニーミュージック・アーティスト、エイベックス・マネジメントなど大手に集中してはいる。明らかに偏った人選と言い切るほどでもないが、各事務所のブレイク中の女優が選ばれ、かつてのような「登竜門」という色彩は薄まっていることも事実だ。逆に「人気女優のステップ・アップ」的な場として、朝ドラヒロインが使われていると言ってもいいのかもしれない。今後の朝ドラの「あんぱん」の今田美桜はいわずもがな、以降の高石あかり、見上愛も、すでに認知度のある女優たちだ。

やっぱりニューフェイスを求めたい?

 もっとも、こうした起用にも事情はあって、

「NHKとしては大手のプロダクションと組んで、ある程度の実績を持った人気女優を使った方が、スケジュール管理もしやすいし、何より視聴率も見込めます。それに、収録期間が長いため、万が一トラブルが発生しても、売れっ子の管理に慣れている大手事務所が迅速に対応し、スケジュールの調整や撮影の継続がしやすくなります」

 過去には調整がつかず、「いちばん星」(1977年上半期)で、高瀬春奈から五代路子に、さらに「春よ、来い」(1994年下半期〜95年上半期)では安田成美が中田喜子へ、主演が変更されたことがあった。共に体調不良が要因だった。

 しかし、それではなんだか味気ないとぼやくのは前出のドラマ・ウォッチャーだ。

「朝ドラは、何だかんだ言っても若手女優の登竜門であってほしいですね。“朝の連続テレビ小説”と銘打っているわけですから、単なる連続ドラマとは違った観点で、それこそ1日をこれから迎えようとする時、何かを見出せる様な作品であって欲しい。おそらく、朝ドラの視聴者というのは自分に出演者を重ね合わせて見ている人が多いはずです。ですから、すでにイメージの出来上がっている女優さんを起用するのではなく、ヒロインは爽やかで新鮮なニューフェイスを起用すべきだと思いますね。その点でも他の連続ドラマとは区別すべきだと思いますし、できていないから視聴者が離れていってしまうことにつながっているのでは。あえて期待をするなら、朝ドラから令和の能年玲奈が生まれて欲しいですよね」

 今こそ「朝ドラらしさ」が求められているタイミングなのかもしれない。

渡邉裕二(わたなべ・ゆうじ)
芸能ジャーナリスト

デイリー新潮編集部