大山季之【米国株マーケット・ビュー】―「AI相場」陰の主役、エネルギー産業に注目せよ
まず、4月17日に発表されたASML 、翌日のTSMC の決算内容とガイダンス(業績予測)が、市場予測を大きく下振れて、S&P500やナスダック総合指数といった主要指数が急落した。だがその後、メタ・プラットフォームズ やマイクロソフト 、アルファベット 、アマゾン・ドット・コム など主要企業の決算が発表され、全体の株価も復調してきている。
これらの企業に対しては、業績もさることながら、各社のAI関連の巨額投資を市場が好感しているようだ。今後のアメリカの実体経済の動向については見方が分かれるが、クラウド大手3社の投資は、AIがいよいよ実体経済に入り込んでいくために不可欠なものだと認識されているようだ。
ただこの中ではメタだけは、業績が市場予測を下振れしたことに加え、AI向けの巨額投資がネガティブに受け止められ、発表後、株価が急落した。記者会見でマーク・ザッカーバーグCEOは「収益化は何年か先になるかもしれないが、AIはやり抜く」といった趣旨の発言をしたというが、これに対してマーケットでは、「メタバースで失敗したばかりじゃないか」といった心理が働いたようだ。
要するにROI(投資収益率)の点で、ザッカーバーグ氏の強気発言がマーケット心理を不安にさせたようだ。ザッカーバーグ氏はいまやビックテックの中で唯一の創業経営者だ。経営トップの大胆な判断を迅速に行動に移す体制ができているが、それが吉と出るか凶と出るかは、マーケット関係者の中でも見方が分かれている。
一方、決算数字はひどいものだったが、テスラ の株価は発表後、急騰した。CNBCの報道によると,同社の貸株料が他社と比べて高く、悪材料の出尽くしで買い戻しが入ったという噂もあるが、低価格EV(電気自動車)を当初の計画から前倒しして投入するというイーロン・マスクCEOの発言が総じて好感されたようだ。
こうして注目企業の決算が次々に発表されていく中で、いま、マーケット関係者の間では、「株式市場に変調をもたらしたのは誰だ」と"魔女狩り"さながらの"真犯人探し"が始まっている。今回の決算シーズンは、ASMLの想定外の不調による、"ASMLショック"から始まっているが、なぜ、AIの重要なプレーヤーであるはずの同社が想定を下回るような業績となったのか。
最初はテスラではないのか、と疑う声もあったのだが、業績悪化の水準はすでにマーケットが織り込み済みで、そうではなかった。そこで、この原稿を書いている現段階(日本時間5月1日)で真犯人の有力候補と言われているのが、あの会社。そう、5月2日(日本時間5月3日)に決算発表が行われるアップル だ。
本稿が配信される頃には、すでに同社の決算が発表されているが、現時点では、果たして同社の業績が、マーケットが織り込んでいる程度の低迷で済んでいるのか、そして悪いなりにもAIについて誰もが納得できるような方針を打ち出すことができるのか、が市場関係者の注目の的となっている。
このアップルの決算発表を通過したあとに、今後の米国株マーケットの大きな方向性が見えてくるかもしれない。決算結果が市場想定より上振れるにせよ下振れるにせよ、マーケットの不安心理がある程度、"アク抜き"されるだろうからだ。もちろんその後は5月22日に予定されている、エヌビディア の決算が次の焦点となるが、少なくとも4月以降の市場変調をもたらした3つのリスクの、最後のリスクの正体が明らかになるのではないか。
