@AUTOCAR

写真拡大 (全5枚)

延期を乗り越えて 検知器「義務化」のいま

執筆:Hajime Aida(会田肇)

後を絶たぬ飲酒運転の撲滅へ向け、2022年(令和4年)4月より安全運転管理者による運転者に対する運転前後のアルコールチェックが「義務化」されている。

【画像】アルコール検知器 どうやって使う?【電気化学式ガスセンサー】 全22枚

これまでアルコール検査は、運送業など「緑ナンバー」車を使う事業所に義務づけられていたが、一定の台数があれば「白ナンバー」車を使う事業所にも対象が拡大されたのだ。


アルコール検知器(写真)の使用・保持は、緑ナンバー車を使う運送事業者ではすでに義務化。今後、約34万にのぼる一部の白ナンバー事業者も対象になる。    AUTOCAR JAPAN編集部

新たに対象となったのは、白ナンバーの社用車を5台以上、または11人以上の定員の自動車を1台以上持つ事業所で、運転指導などを行う「安全運転管理者」を選任しなければならなくなった。

警察庁によると、安全運転管理者を選任して警察に届け出ている白ナンバーの事業所は全国に約34万、対象ドライバーは約782万人にのぼるという。

運転管理者は運転前後のドライバーの状態を目視などで確認した上で、酒気帯びの有無を記録して1年間保存しなければならないのだ。

さらに今後は、アルコール検知器によるチェックも義務付けられる見込みとなっている。

本来なら今年10月から義務化されることになっていたが、昨今の半導体不足の影響を受け、検知器が事業者に行き渡らないことが判明。これに伴って警察庁は、当面の間、義務化の時期を延期すると発表した。

ただ、これは検知器の義務化が中止になったことを意味するのではなく、今後の状況を考慮しながらいずれ施行されることに変わりはない。

そんな背景の下、積極的にアルコール検知器を展開しているのがJVCケンウッドだ。同社は2020年11月に半導体式ガスセンサーを搭載した「CAX-AD100」を発売していたが、22年8月には電気化学式ガスセンサーを搭載したハイグレードモデル「CAX-AD300」を追加した。

この2台体制でアルコール検知器の幅広い普及を目指す。

2つのセンサー、違いは? 性能/寿命/価格

ここで気になるのは、「半導体式ガスセンサー」と「電気化学式ガスセンサー」の違いだろう。

前者は測定までの時間が短く、機材価格も安いというメリットがある一方で、センサーがアルコールに近い成分に反応してしまうこともあるなどアルコールを摂取していないのに反応してしまうケースがある。


大きい方が「電気化学式ガスセンサー」のアルコール探知器、CAX-AD300。検知性能・耐久性に優れ、記録・通信機能も有する。小さい方が「半導体式ガスセンサー」、CAX-AD100。いずれもケンウッド・ブランドの製品。    AUTOCAR JAPAN編集部

対して後者は、それに比べて検知性能が高く長寿命(1年または1万回・半導体式ガスセンサーの約2倍)というメリットがあり、検知器としての信頼性は高い。ただ、機材価格はどうしても高くなってしまう。

実際、カカクコムで販売価格を調べると、CAX-AD300は3万8200円で、CAX-AD100が1万1000円台〜と4倍近い価格差がある(12月21日調べ)。

この価格差がつく理由としては、一つは電気化学式ガスセンサーそのものが高価であるという事情もあるが、CAX-AD300ではスマートフォン連携を実現していることも大きい。

これは測定結果を管理者のPCに送信して検査結果を記録・管理できるもので、スマホとの連携はBluetoothによって行われる。具体的には、運転者のアルコール濃度を測定した後、その測定結果と測定者情報はスマホの通信機能を使用して管理者用PCへメール送信されるというものだ。

見逃せないのは、この対応が「なりすまし防止」を目的として役立つことだ。

体験レポート なりすまし根絶の仕組み

測定する際はスマホにインストールしたアプリが測定者を自動的に撮影し、この測定結果と測定者情報(写真データ、位置情報など)を同時に管理者へ送信する仕組みになっている。

これにより、仮に測定者が出張中で直接会えない状態であっても、管理者は測定状況を確実に把握できるのだ。


CAX-AD300の画面をスマホに向けながら呼気をストローに吹き込むと、測定中のドライバーの顔(!)と測定値が自動で撮影される。ただちに管理ソフトへ連携・保存されるので、なりすまし・改ざんは困難だ。    AUTOCAR JAPAN編集部

実際にこれを体験すると、測定中の表情はどうやっても送られてしまう。つまり、測定データと測定時の表情はセットで管理者に把握されるわけで、これなら測定をごまかすのは難しい。

一方、管理者に送信されたデータは、無料で使える「KENWOOD アルコール検知器管理ソフト」で管理される。

反映される項目は「測定日時」「ID」「測定回数」「寿命回数」「センサー寿命」「アルコール濃度」「設定単位」「GPS」「写真」と多岐にわたるが、これらが受信と同時に各項目はソフト上に自動的に反映されるのだ。また、データは測定者ごとに設定した8桁IDで管理されるため、後から記録を振り返るのも容易だ。

さらに、測定結果が0.01mg/L以上でアルコールを検知した場合のデータはこのソフト上で赤く表示され、測定回数が1万回を超えたデータも黄色で表示されるのでセンサー寿命も同時に把握できる。

この対応によって、管理者側の見落としも未然に防止でき、結果として管理者の負担軽減にもつながるのだ。

それとアルコール検知器を運用する上で忘れていけないのは、先にも触れたようにセンサーには一定の利用期限があるということだ。

使用期限を超えたら?

ケンウッドの場合、半導体式ガスセンサーを使うCAX-AD100では約5000回の使用期限が設けられている。しかも使用期限が来たら、CAX-AD100は機材そのものを買い換えなければいけない。

一方で電気化学式ガスセンサーを使うCAX-AD300ではその約2倍となる約1万回、あるいは約1年(いずれか早い方)にわたって使える。しかも寿命が来たらCAX-AD300はセンサー部だけを交換すれば機材はそのまま使い続けられるメリットもある(メンテナンスサービスプログラムをJVCケンウッドでは検討中)。


0.01mg/L以上のアルコールを検知すると、赤いランプと警告音で知らせる(測定結果は取材用のもの)。もちろん、この結果はただちに運行管理ソフトへ連携され記録に残る。    AUTOCAR JAPAN編集部

こうした機能的な違いを踏まえると、検査対象者が多くその管理業務の効率化を重視するならCAX-AD300がお勧めとなるだろう。

逆に検査対象者が少なく、大半が対面式で検査が可能というならCAX-AD100がいいかもしれない。特にCAX-AD100は、計測時にストロー方式だけでなく、機材に息を吹きかけるオープンブロー方式が使える手軽さもある。

また、CAX-AD100は手軽に買うことができることからプライベートでの利用にもお勧めとなるだろう。前日に深酒をしてしまうと、翌日クルマで出掛ける際はアルコールが残っているかどうかがとても気になるが、その際のチェックとして役立つからだ。

企業としても飲酒運転は絶対にさせてはならない。

そのためにもまずは、該当する事業所であれば運行管理者を選任し、その上でアルコール検知器による確実な検査体制を運用することが重要だ。

とはいえ、アルコールに依存する生活をしている人は一定数存在するのも事実。場合によってはそれをすり抜けようとする人がいるかもしれない。そうした際の企業としての責任を全うする意味でもアルコール検知器の導入をぜひお勧めしたいと思う。