2019年7月、FUJIFILMの「写ルンです」とコラボした写真展、「平成が終わルンです」が話題になりました。

写真展「平成が終わルンですFinal」特設ページ | 平成ゆとりTシャツ
http://talking-tshirts.com/heiseigaowarundesu/

仕掛け人は、「脳内アーティスト」という不思議な肩書で活動するドレッドヘアーの男性・稲沼竣さん。

デザイナーとして独立した当初の収入は月10万円だったのに、今ではさまざまなTシャツを企画し、月商が1200万円。

なぜそんなサクセスストーリーを実現できたのか?とお話をうかがったところ「なんでも捨てろ」「ランダムに決めろ」という不思議な答えが返ってきました…!

〈聞き手=ほしゆき〉


【稲沼竣(いなぬま・しゅん)】1991年生まれ。大学時代はバンドに打ち込む。22歳でデザインを始め、1年後にデザイナーとして独立。26歳で合同会社IMAGINALを設立。「平成ゆとりTシャツ」などを手掛け注目を集めている

コンセプトが立ったTシャツの売上で、月商1200万円

ほし:
稲沼さん。ちょっと小耳に挟んだんですが、現在は合同会社IMAGINALを運営するアーティストとして月商が1200万円以上になるとか?

稲沼さん:
最初から金のこと聞いてきますね

そうです。23歳で独立したときは年収100万円とかでスタートでしたけど、今は自分の作ったTシャツの売上が月商1200万円に達することもあります。



稲沼さん:
「喋るTシャツ」という、同級生と立ち上げたアパレルブランドがあるんです。

コミュニケーションが生まれるTシャツ」をコンセプトにしていて、今までいろんなTシャツを販売してきました。

〈稲沼さんが今までデザインしたTシャツの一部〉

平成ゆとりTシャツ
http://talking-tshirts.com/heiseiyutori/
平成が始まって終わるまでの年号を胸元に入れ、「ゆとり」を表現するためにサイズ展開はL〜XXXL。ヴィレッジ・ヴァンガードや写真展などでも販売された

396(ミクロ)Tシャツ | 喋るTシャツ第四弾
http://talking-tshirts.com/396/
プリントできる最小の文字で言葉が書かれているTシャツ。「それなんて書いてあるの?」と近づいてくれた人にだけ読める仕掛けになっている

ほし:
「喋るTシャツ」の新しいデザインが発表されると、Twitterだけでなくいろんなメディアでも話題になりますよね。ファンも相当ついているのだなと感じます。

なぜ稲沼さんが作るものは、人々の心に刺さるんでしょうか?

稲沼さん:
なんといっても「コンセプト」ですよね。

デザインが良くても、コンセプトに心を動かされなきゃ買わない。僕の場合は「アパレルブランドを作ること」が目的じゃなくて、コミュニケーションを作りたくて、手段にブランドの立ち上げを選んだ。こういう視点が大切だなと感じています。


なるほど

天才ではない「バカの戦略」は「捨てること」

ほし:
いろんな企画を成功させるコツなどあるんでしょうか?

稲沼さん:
僕、めちゃめちゃバカなんですよ。記憶力ないから知識のインプットとかできないし、時流をよんで行動するとか、リスクヘッジもできない。

なので、「バカの戦略」をとってるんです。

ホリエモンやキンコン西野さんみたいな、「天才たちの戦略やノウハウ」は、僕には真似できない。「天才の戦略」で戦うより、「バカの戦略」で戦ったほうが絶対に勝率が高いです。

ほし:
天才に勝る「バカの戦略」って何なんですか?

稲沼さん:
「自己破壊」です。


破壊…

稲沼さん:
必要なのは「捨てること」です。みんな、成功しようとすると「新しく何を始めようかな」って考えるでしょ?

でも、狭い視野のなかから選んで何かを始めたところで、人生そんなに変わんないですよ。なんとなくイメージのつく未来が待ってるだけ。

ほし:
ほぅ…たしかに、言いたいことはわかります。

稲沼さん:
だから、いま見えている世界の外に飛び出す必要があるんです。そうじゃなきゃ、想像をはるかに超えた未来なんて来ない。

その手法として、最速かつ最も簡単なのが「捨てること」だと僕は思っています。

ほし:
それって、どんなものを捨てればいいんですか?

稲沼さん:
仕事である必要はないけど、「生活に支障が出るレベルのもの」を捨てたほうが、リターンも大きいですよ。

たとえば星さん、仕事しなきゃいけないのにベッドで寝ちゃうことってあります?



ほし:
毎日のように。

稲沼さん:
じゃあ、ベッド捨ててみたらどうなりますか?

ほし:
捨ててもソファーで寝るかと…

稲沼さん:
でしょ。ベッド捨てたところで、リターンは「ちょっと寝心地悪い場所でも寝られるスキル」くらいなんですよ。簡単に代用品が手に入るようなものを捨てても、あんまり意味ない。

自分が大事に築きあげてきたものや、今の生活に欠かせないものほど、捨てる価値がある。捨てることで、狭い視野をぶち壊すんです。

見えてる範囲で選択するんじゃなくて、「どうなるかわからない未来」に飛び込む。これが「バカの戦略」! 「自己破壊」です。



“ランダム”なゲームで、仕事を全部捨てた

ほし:
なるほど…稲沼さん自身は、何を捨てたんですか?

稲沼さん:
僕は、「仕事」を捨てました。

大学中退後、デザイナーになったんですが、ずっと続けてきたデザイン系の制作仕事を、去年全部やめました。それで、これらのTシャツをつくりはじめたんですよ。

ほし:
だいぶ思い切りましたね…

それまでの仕事はなぜやめてしまったんですか?

稲沼さん:
Tシャツのような、自分のやりたい表現を追求したかったんです。

それで、「タバコを下に落として、右に倒れたらやめる、左に倒れたらやめない」っていうゲームをしたら、右に倒れたんですよ。


稲沼さんはこのようなゲームを「ランダム」と呼んでいるらしいです

ほし:
そんなゲームで仕事やめたんですか?

稲沼さん:
そう。

ほし:
この人狂ってる

稲沼さん:
急に収入がゼロになったから、いろんな支払いができなくなってしまって。プラス家賃とか日々の生活費もある。

税金も積み重なって、あっという間に借金が300万円になってしまったんです。

ほし:
えええぇぇ!


仕事全部やめたらそりゃそうだ。考えなしすぎません…?

稲沼さん:
しかも、学生時代に金融系の詐欺に合った経験があって、そのとき聞いた「支払いの電話はシカトしつづけていい」ってアドバイスを鵜呑みにしたら、ブラックリストに載っちゃったんです。

だから、まともな機関からお金を借りることもできなくて…

ほし:
それ、どうしたんですか?

稲沼さん:
Twitterで、「1年後に必ず返すので僕に100万円貸してください!」って呼びかけをして、拡散してもらいました。今ほどじゃないですけど、自分のプロダクトや考え方を好きでいてくれるフォロワーさんたちがいたので。

そしたら2人から「貸してやるよ!」とお返事をいただいて! 助かりましたね。

ほし:
(仕事を復活させるという考えは1ミリもなかったのか…?)

「人の成長って“捨ててきたものの歴史”なんです」

ほし:
言ってることはわかるけど、「捨てる」ってめちゃめちゃリスキーじゃないですか…!

稲沼さん:
たしかにそう聞こえると思います。でも僕は、それまで1日の時間のうちほとんどを費やしていた仕事を捨てたからこそ、Tシャツのコンセプトを考え、成功することができたんですよ。

それに、誰しも人生の大きなターニングポイントで、ちゃんと「何か捨てて」きてませんか? 人の成長って、捨ててきたものの歴史なんですよ。



ほし:
捨ててきたものの歴史…

稲沼さん:
一生卒業したくないと思ってた高校、ケガでつづけられなくなった部活、愛してた恋人との破局。望まないルールや事故、飽き、裏切り、どんな捨て方だっていい。

でも結果的に、自分の人生の大半を占めていたようなものをちゃんと捨ててきてる

ほし:
それは、たしかにそうですね。

稲沼さん:
もし好きなだけ高校にいられる教育制度で、今でも卒業せず「高校が最高だ」と思って生きていたとしたら?

その世界の狭さって、今思えば地獄ですよね。

後ろ髪引かれながらでも、新しいステージに突入する。捨てることで、そういう自己改革を起こしつづけるんです。

Twitterのおかげで成功につながった。だからこそSNSを捨てる。

稲沼さん:
成功にはラッキーもありましたね。たとえば、Twitterをやってたおかげで、いろんな人に応援してもらえたこと。

こんな、祭りで焼きそば売ってそうなドレッドヘアーの男を、ここまで食えるようにしてくれたのは本当にTwitterのおかげなんですよ。


祭りで焼きそば…ちょっとわかる…

ほし:
200万円とブランド成功のほかには、今までどんなTwitterドリームがあったんですか?

稲沼さん:
ざっと思いつくだけでも…

・クラウドファンディング3回成功
・大手出版社から写真集の出版
・TV・ラジオ・新聞・雑誌などの露出
・写真展3回開催
・初めて開発したアプリが2万DL
・初めてのアート作品が30万円で落札

…まだまだありますね。

ほし:
想像以上でした。すごい…

稲沼さん:
いろんな野望を叶えさせてもらいました。

そして先日フォロワーがようやく1万人を突破したので、これを祝してSNSやめます。8月31日で。

ほし:
やめるんですか!?

稲沼さん:
はい。Twitter、Facebook、Instagram全部やめます。またタバコで“ランダム”したら、SNSをやめるに「YES」が出たので



ほし:
また…!?!? なんでも捨てちゃうんですね…

稲沼さん:
今までTwitterで稼げるようになってきた。やめたらどうなるかまったく見当がつかない。

だからこそ、このせっまい世界を突き破るために、自分にでっかい穴をあけるんです。



決断すること自体には意味がない。だから「ランダム」で決める

ほし:
どうしてそんな大事なことをランダムで決めるんですか?

稲沼さん:
「ランダムこそ自由」だからですよ!

ほし:
そうですか…?自分で好きなことを選択できるほうが、自由じゃないですか。

稲沼さん:
本当に?


えっ…

稲沼さん:
みんな「自分の人生自分で決める」って言うけど、自分で決めるだけの人生なんて、そのときの自分が想像できる範囲の変化しか起こさないし、起こせないってことじゃないですか。

ほし:
それは…たしかに一理あるかも。

稲沼さん:
ランダムをするってことは、「YESでもNOでもやってやんぞ!」って覚悟の現れなんですよ。結果とか決断になんて、もともと意味がない。

馬鹿げてるリスクに身を投じられるくらいマインドセットできてるヤツは、どっちに転んでも頑張れます。「どんな道でもやれる自分」以上の自由なんて、ないと思ってるんです。



稲沼さん:
僕、自分の足に「YES」「NO」ってタトゥー入れてるんですよ。いつでもランダムで決断できるように。

ほし:
え! 見たいです…!


ニヤリ

稲沼さん:
いいですよ。その代わり、俺の足を使ってなにか決めてください。

ほし:
えぇ!?

稲沼さん:
髪切るとか、彼氏と別れるとか、引っ越すとか、海外に行くとか。なんでもいいですよ。生活に支障が出るほうがいいですけど。

ほし:
じゃ…じゃあ…

ずっと家賃が高すぎて敬遠してたけど、もし「YES」が出たら10月までに渋谷区に引っ越します

稲沼さん:
おぉ〜! いいですね! やりましょう。

右左、どっちがYESだと思いますか?

ほし:
…左で…!!

稲沼さん:
じゃーん


「!!!!!!!!!!!」

結果を言ってしまうと、稲沼さんのどちらの足に「YES」があるかバレてしまうので、記事での公開は「秘密で」ということでした。

いつか皆さんが稲沼さんと出会って、「ランダム」をする可能性もありますしね!

「今ここで覚悟を決めなきゃいけない」という予期せぬ瞬間を、彼は自分だけじゃなく、人の日常にも生み出しつづけているのだと感じました。

SNSから消える彼が今後どうなるかはわかりませんが、アカウントが消えても、どこかで改革を起こしつづけていくのだと思います。

〈取材・文=星ゆき(@yknk_st)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉

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