僕のヤバい時計:GACKTが芸能人格付けで着けている時計の会社社長が登場
「ダウンタウン芸能人格付けチェック!」で不敗神話を守り通してきたGACKT氏だが、彼が番組出演時に着用しているサングラスや時計が、どこのブランドのものか興味を持ったことのある読者も少なくないだろう。
我々は、GACKT氏がデザイン監修を務める、VARTIX, Inc.の中野猛社長に会うべく、グランド ハイアット 東京 マデュロに向かった。


VARTIX, Inc. 代表取締役兼CEO 中野猛
「時計とは、僕にとって奥さんみたいなもんでしょうか……無くては困るけど、扱いは難しい、みたいな(笑)」

ジュエリー会社の社長と聞くと、一般的には、お金の匂いがプンプンするようなイメージを勝手に想像してしまうが、グランドハイアット 東京 マデュロに現れた彼は、そんな我々の期待を裏切った。
営業の道、30年。経営者になって24年。最近、54歳の誕生日を迎えたばかりだ。
彼のキャリアは某大手自動車メーカーの整備士から始まった。しかし、間もなくして、不本意にも営業部隊へ異動。営業が自分の性に合っていたんでしょう、と話す彼は、その後、着物や宝飾品を扱う企業に転職し、若干24歳にして営業本部長の座を掴んだ。
「元々は技術者なので、宝石をカットして製造していくプロセスだとか、時計技師と機能的な部分を考えたりするのが好きなんです。カチカチっと針が進む音が好きなんです。しんと静まり返った部屋に時計を置いて、針が1秒1秒を刻む音を聞くと、このために仕事を頑張ってきたんだな、と生きているこの瞬間を感じられるんです」
これまで買った時計の中で、一番大きな買い物は、ヴァシュロン・コンスタンタンのマルタ・トゥールビヨン。某大物歌手から1700万円程で譲り受けた。GACKTがデザイン監修を務める、VARTIX(ヴァティックス)ブランド誕生のきっかけは何だったのだろうか。

左から、ALIVE G704(525,000円(税込))、DESIR GACKT LIMITED MODEL(約8,640,000円(税込))、今夏発売予定のクロノグラフ(試作品)
「元を辿れば、不動産事業をやらないかという話から始まったんです。GACKTは自宅のリノベーションに非常にこだわっているので、空間プロデュース事業であれば一緒にコラボしてもいいよ、と。そこから、時計の革ベルトへ派生しましてね。
時計は好きだし、日本の1級時計技師を雇ってMade In Japanの最高級時計を作ろうってなったんです。そこで、僕が彼にダイヤを入れた時計をプレゼントしたことで、本格的に動き始めたのです」
そして中野氏はこう続けた。

「GACKTのダメ出しは凄いですよ。何度直したものを持って行っても、更に修正が入る。そのうち段々イラッとしてきて(笑)、そこまでこだわったら、いつまでも商品なんか出来ひんやろって思うんですけどね。ただ、出来上がった物を見ると、その完成度にびっくりするんですよ」
完璧を究極まで極める男たちが集結すると、とんでもない作品が創造される。そこには、妥協を認めない徹底的なこだわりがあった。
中野氏が惚れ込んだ、GACKTの仕事への向き合い方
「僕の方が年上ですけど、彼から教わることは多いですね。僕が言うのもおかしいですけど、彼の仕事に完成ってないと思うんですよ。それは彼のライブでも同じで、1回目に観に行った時には既に完成されているけど、10回目のライブを観に行くと、1回目よりも更に磨きがかかっている」
「芸能人格付けチェック」の番組終了後、DESIRのVXシリーズ(1,500,000円〜(税別))の注文が国内外から殺到し、限定5本のGACKT LIMITED MODEL(8,640,000円(税込))は即座に完売。
日本発のトゥール・ビヨン(※)を作るという、男たちのロマンと努力の結晶とも言える時計を求める声が、国内外から集まっている。今夏には、VERTIXブランドのクロノグラフが、満を持して発売される予定だ。
※重力の影響を受け、微小なたわみが生じてしまう機械式腕時計の弱点を克服する為、1800年頃にアブラアム・ルイ・ブレゲ氏が発明した技術。この技術を再現出来る時計技師は、世界でも10人に満たないと言われており、VARTIX社はMEMORIGIN社と日本製トゥール・ビヨンを日本で初めて共同開発した。
そして、我々は中野氏の経営に対する考えを伺った。そこから見えてきたのは―――

「本社ビルをホテルにして、毎月家賃収入で食べていけるんじゃないか、なんて経営から心が離れそうになった時期もありました。ただ、そっちに流れたら、自分らしくないと思ったんです。常に挑戦を続けていたいですからね。よく聞かれるんです、一番闘いたくない相手は誰なのか、と。
それは、最後まで諦めない奴です。何かに挑戦し続けるのに、才能があるかないかは問題じゃない。どんなに才能がなくても、やり続けることで、行くところまで行ける。若い世代に教えられることがあるならば、才能なんてなくても、挫折せずに継続することで、何かを成し遂げられるってことです」
継続は力なり。続けることが、始めることよりも遥かに難しいものだ。GACKT氏同様、彼が追求するものに、完成形はない。
「24歳の時の自分から見たら、今の自分なんて想像も出来なかったし、自分を褒めてあげたいです。37歳くらいの頃に、売上100億円、経常利益を16億円出したんです。でも、その時の自分から見た今の自分は、全然駄目。
年を取って来たんですかね。当時は売上至上主義で規模を追っかけていたけれど、今はいかに優れた作品を生み出せるかが、良い仕事の定義になってきたのかもしれないです」
そんな想いを実現する為には、健康が全ての資本になると、10年近く怠ることなく身体のトレーニングを続けている。54歳にして、懸垂は悠に30回はこなす。また、GACKT氏のアドバイスを受けながら、野菜やタンパク質を中心とした食生活を心がけてきた。
「この歳になるとね、糖尿病になっただの、腹回りに脂肪がつくだの、色々と問題が出てくるんです。でも、自分の娘にかっこ悪いって言われたくないし、イケてるやんって言われる60代になりたいんですよ」

『想像出来ることは、全て現実』の言葉に隠された、想い
還暦まで、あと6年。経営者人生、これまで業績が一時期低迷したことも、自分自身の中に驕りがあったこともあったと振り返る。
2年前には会社名を「ReBoot(再起動)」に変更し、還暦を迎えるまで、死ぬ気で頑張り抜きます、と意気込みを語った。
「『Evertything you can imagine is real(想像出来ることは、全て現実)』というピカソの言葉がありますが、これまで本社ビルを建てて、全国展開して、って思い描いてきたことは現実になってきたと思います。ただ、過信をした時にダメになる。謙虚な気持ちで、毎日自分の仕事に向き合い、継続していくことが大事です。
「ReBoot」という会社名に変えたのも、心機一転して、50代は原点に立ち返ろうという自分自身を奮い立たせる意味もあります。会社自体が、僕の人生そのものかもしれないですね。会社も作品の1つだと思っているので、いつまでも自分自分、では駄目だと。ただ、引退してもずっと時計作りには携わっていたいと思っています」
―本当に時計がお好きなんですね。中野さんにとって、時計の魅力って何でしょうか。

そう尋ねると、左手首に着けられた時計に右手を添え、暫く時計を眺めると、こう答えた。
「時間は、金持ちの家に生まれようが、僕のように貧乏な家に生まれようが、唯一皆に平等に与えられたものじゃないですか。皆同じ1日24時間という時間を過ごしていて、今、この瞬間ってもう過去になっていく。その時間が過ぎていけば、僕たちはいつかは死にますよね。
その過ぎていく時を、こんなに正確に測れるのは人間だけだし、偉大な発明だと思うんです。その刻一刻と流れていく時間と自分自身を繋げてくれるものが、時計だと思っています。そういう風に想いを巡らすのが好きなんです」
引退後は、訪れていない国々を回り、まだ見ぬ世界をこの目で見たい。心まで引退出来るかどうかは、自分でも分からない。ただ、これまでずっと仕事に全力投球だったからこそ、自分の今いる世界とは違うものを見たい……短い人生ですからね、と微笑みながらそう教えてくれた。

<取材協力>
マデュロ
営業時間:19:00-01:00(金・土 -02:00)
電話番号:03-4333-8783
席数:108席
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