女向けvs男向け「恋愛・セックス特集」どこが違うか

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■「自分でパンツ脱ぐ」は禁じ手である

昨今、男性向けの週刊誌では「セックス特集」がたびたび組まれています。大きな話題を呼んだのは「週刊現代」の「死ぬまでセックス」。その後、「週刊ポスト」が「死ぬほどセックス」と謳い、「週刊文春」や「週刊朝日」も高齢者の性をテーマにした特集記事を展開しています。興味深いのは、「妻ともう一度セックスを楽しみたい」という悩みが取り上げられている点です。たとえば「週刊現代」は「妻のセックスがうますぎて 夫のセックスがヘタすぎて」(2013年7月13日号)という記事で性生活を取り戻した熟年夫婦の事例を紹介していました。

一方、女性向けの雑誌でもセックス特集は人気です。「婦人公論」では04年から連載「快楽(けらく) 更年期からの性を生きる」をはじめ、06年からは毎年「快楽白書」という別冊を発売しています。私は1996年から女性向けにアダルトグッズやバイブを販売する「ラブピースクラブ」という店を運営していますが、年を追うごとに商品が紹介される機会が増え、徐々にセックスを主体的に楽しむ女性が増えているのを感じます。そのなかでも40代以上の女性向けに作られた「快楽白書」に載った商品はすぐ売り切れます。

しかし男女の方向はすれ違っています。年配の男性は「妻」に関心があるのに対して、女性は「夫以外」に関心があるようです。「快楽」を追求する「婦人公論」では「夫を捨てたい妻たちの本音」「夫はなぜ、私をイラつかせるのか」という特集が人気です。

セックスは昔から雑誌で定番の話題でした。ただし女性向けでは70年に創刊された「アンアン」が転換点になりました。まだ「初夜」「貞操」といった言葉が生きていた時代に、性の欲望をファッショナブルかつ堂々と語り始めたのです。その流れは89年の特集「セックスで、きれいになる。」に結実します。私はまだ10代でしたが、女性がセックスをオープンに語れるようになったことに感動を覚えました。

ところが最近の「アンアン」のセックス特集は「彼をいかに喜ばせるか」が主眼となり、女性の主体性は退いてしまいました。おそらく「かわいい」という価値基準がもて囃されることと無関係ではありません。自分の欲望を満たすのではなく、相手にどうみられるかが重要なのでしょう。09年の特集号にはセックスの手順を解説するDVDが付きました。なかでは「絶対に自分からパンツを脱いではいけない」と注意されます。それは「女性が積極的になりすぎると、男性のプライドを傷つける」から。恋人間のセックスが女性の無償労働になっているのです。

若年層の女性が「彼を繋ぎ止める」ために懸命な一方で、セックスに関心をもたない男性は増えています。日本家族計画協会が12年に行った調査によると、セックスに「関心がない」「嫌悪している」と答えた男性の割合は、20〜24歳で24.6%で、2年前の調査より3.1ポイント増えています。実際、かつてあれほどみられた男子向けのセックス特集は、あまり目立たなくなった印象があります。

他人のためのセックスはときに苦しいものになります。10代から20代の「ギャル」に支持される「小悪魔アゲハ」という雑誌はセックス特集を一切しません。創刊編集長の中條寿子さんは「セックスで傷ついている女の子が多いから」と説明していました。

年配の女性がセックスを楽しみ、若年の女性がセックスに悩むなか、男性は概して未熟で単純だと感じます。30〜40代の既婚男性が読む「SPA!」では「年下女子にいかにモテるか」が重要なテーマです。しかしその間に夫婦関係は冷え切ってしまう。定年後に「死ぬまでセックス」を目指しても、手遅れでしょうね。

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コラムニスト 北原みのり(きたはら・みのり)
1970年、神奈川県生まれ。女性向けセックストーイショップ「ラブピースクラブ」代表。著書に『毒婦。木嶋佳苗100日裁判傍聴記』『アンアンのセックスできれいになれた?』などがある。

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(コラムニスト 北原みのり 構成=中沢明子)